賛否を呼んだ前衛的なスタイリング
グレートブリテン島の南東部、エセックス州の中央にコルチェスターという町がある。近年は、コンテンポラリー・アートが盛んなことで英国では知られた場所だ。
【画像】フルビア・スポルトとジュニア Z ザガートのSZとDB4 ベータ・クーペとジュリアGTAも 全99枚
ファーストサイトという名のアートギャラリーは鉄骨造の半円形の建物で、外壁が銅とアルミニウムの合金で覆われている。歴史ある市街地に姿を表した斬新なファサードは物議を醸したものの、魅惑的な佇まいだと思う。
今回ご紹介する、ランチア・フルビア・スポルト 1600とアルファ・ロメオ・ジュニア 1600 ザガートというスポーツカーを並べるのに、ピッタリな場所でもある。この2台も、そのスタイリングが賛否を呼んだ。現在でも、受け止め方には差があるはず。
モダンアートの作品ではないものの、実際、町ゆく人々は多様な表情を浮かべる。ボンネットのエンブレムを確認しても、すぐには飲み込めない様子。「今まで見たことがないですね」。ボソリとつぶやく人もいる。
前衛的な見た目を好きだという人は、半分くらいのようだ。食パンに塗るマーマイトを好む人と、同程度の割合かもしれない。
撮影する手を止めて、フォトグラファーのジェームズ・マンが自身の印象を整理する。「美しいけれど、醜い」。イタリアで最も奇抜なスタイリングを生み出すカロッツエリア、ザガート社が約60年前に仕上げたボディは、今も見る人へ強い印象を与える。
航空機の軽さや強さを自動車のボディへ
1919年、航空機の軽さや強さを自動車のボディへ応用しようと考えた、ウーゴ・ザガート氏が創業したザガート社は、当初からデザインの最前線にあった。高い独自性で他とは一線を画してきた。
アヴァンギャルドな同社を、世界的な自動車メーカーが頼ってきた。ランチアもその1社。1960年代にはヴィットリオ・ヤーノ氏が手掛けた小型車、アッピアの後継モデルとして誕生したフルビアの、上級モデル展開が託された。
四角いボディで前輪駆動の4ドアサルーン、フルビア・ベルリーナは、1963年の発売。4灯の丸目ヘッドライトとシャープなラインのボディは、自社でスタイリングが描かれた。兄弟モデルとして、ホイールベースが約150mm短いクーペも追加された。
ベルリーナとクーペは、基本的なメカニズムを共有。1.2L狭角V型4気筒エンジンと、変速しやすいオールシンクロの4速MTという魅力的なドライブトレインを、サブフレームに載せていた。
サスペンションは、フロントが横向きリーフスプリングの独立懸架式。ディスクブレーキも奢られ、ランチアらしい巧妙な設計だったといっていい。
当時のイタリアでは、大排気量モデルに著しく高額な税金が掛けられていた。富裕層向けに、小排気量モデルへ特別なコーチビルド・ボディを架装する例も少なくなかった。
ランチアも市場の要望へ応えるべく、ザガート社による個性的なボディを採用。フルビア・クーペへ大幅に手を加えた、フルビア・スポルトが1965年にリリースされた。
スタイリングはエルコーレ・スパーダ氏
裕福なイタリア人が市街地で目立つことを考えたら、デザイナーのエルコーレ・スパーダ氏が手掛けたアルミニウム製ボディは、間違いなく効果的に機能した。現在でも、これに似たスタイリングは存在しないといっていい。
フルビア・クーペよりボディは僅かに広く、全長は少し伸ばされている。印象的な雰囲気を漂わせるが、フルビアのトップグレードとしてプライスタグも強気だった。前輪駆動のドライブトレインは、クーペと基本的に変わらない。
2年後の1969年にフィアットはランチアを買収。アップデートを加えたシリーズ2が、1970年に発表される。ボディはスチール製へ置き換わるが、エンジンはシリーズ1のスポルト 1.3Sが搭載した1.3L V4と変わらず、最高出力は90psを発揮した。
トランスミッションは5速へ1段増えていた。ところが、ランチア・ファンの間では4速を支持する人の方が多い。
1971年には、フルビア・スポルト 1600が登場。シリーズ2のボディシェルに、フルビア・ラリー1.6 HF用としてチューニングされた116psの1.6Lエンジンが搭載され、大胆なボディに見合った動力性能を発揮した。
このスポルト 1600は、英国では1972年から1973年にかけて正規販売されている。右ハンドル車で、僅か80台がグレートブリテン島へ上陸した。
スパイダーのシャシー+ジュリアの動力系
一方のアルファ・ロメオも、上級グランドツアラーの可能性を理解していた。ジュリア・スーパーやスパイダー、GTジュニアの上位に据えるモデルを、同社CEOを務めていたジョバンニ・ルラーギ氏は求めた。
1967年のイタリア・トリノ・モーターショーで、ジョバンニはカロッツエリア創業者の息子、カーデザイナーのエリオ・ザガート氏と対面。新しいクーペモデルに対する方向性が決められた。
走行性能を可能な限り高めるべく、軽量・高剛性のボディには流線型のスタイリングが与えられることになった。さらに、ピニンファリーナ社によるスパイダーや、ベルトーネ社によるGTジュニアとの充分な差別化が必要とされた。
実際にペンを取ったのはエルコーレ・スパーダ氏。提案されたデザインは、ジュニアという名が不自然なほどアバンギャルドなものだった。
ジュニア・ザガート(Z)はリアが短く切り落とされ、フロントは大胆なウェッジシェイプ。発表された1969年としては、相当にドラマチックな容姿だった。製造工程も複雑で、価格は釣り上がった。
メカニズムは、スパイダーからシャシーを、ジュリアから後輪駆動のドライブトレインを流用している。エンジンはツインカムの1.3L直列4気筒で、ウェーバー・キャブレターが2基載り、最高出力は104psを発揮した。
トランスミッションは5速マニュアル。前後にディスクブレーキが奢られた。
1972年には、フルビア・スポルト 1600へ対抗するように、1.6Lエンジンの1600 ジュニア Zが登場。最高出力は115psへ向上している。
この続きは後編にて。
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