11月5日にホンダが発表した新型「オデッセイ」が、7年後のビッグマイナーモデルチェンジにとどまったのはどうしてなのか。今尾直樹がよしなしごとをそこはかとなく書く。
ライバル不在のオデッセイ
ホンダがこの秋の登場を予告していた新型オデッセイを11月5日に正式発表し、翌6日金曜日から発売する。以下は、都内某所でホンダが開いた事前説明会からの報告です。
新型は2013年10月発表の現行5代目オデッセイのマイナーモデルチェンジ(MMC)版ながら、7年目のデザインの「鮮度アップ」ということで、フロント・マスクはドンッと迫力が増し、威風堂々、大きく立派になった。
201008_2NJ_cata-P19-20「あ、どこが変わったの?」というレベルではなく、新しくなったとすぐにわかってもらえるデザインを心がけた成果だ。3年前の1回目のMMCの際、「変わっていない」という営業マンから上がった声に対する回答でもある。
具体的には、フロントのフードの高さを70mm上げ、ワイド&シャープなメッキのグリルを貼り付けている。ウィンカーは内側から外側に光が流れるタイプを採用して、モダンさと華やかさをプラス。フードとライト、バンパー、それにフロント両サイドのフェンダーを新調している。
スクウェアになったフロントに合わせて、リアも水平基調にし、テールライトをフルLED化し、フロント同様、流れるウィンカーを装着している。
これらのリデザインはしかし、ミニバン界のスーパースター、9月に1万436台を販売し、前年比160%! ブランド通称名別順位でトヨタの「ヤリス」、「カローラ」、「ライズ」に次いで第4位、ミニバンに限ってはホンダ「フリード」、トヨタ「ヴォクシー」、日産「セレナ」を差し置き、ダントツの第1位というトヨタ「アルファード」に対抗したわけではない。
アルファードは、ホンダの分類だとラージ・ミニバンでひとつ上のクラス、ヴォクシー、セレナはミドル級でひとつ下。オデッセイは両者の中間のアッパーミドルで、トヨタ「エスティマ」なきいま、ライバル不在であると考えている。
201008_2NJ_cata-P27-28201008_2NJ_cata-P27-28内外装の変更ポイント
では、なにゆえのデカ顔、もしくはドヤ顔、明らかに空力悪化顔なのかといえば、カギは中国にあるといえそうだ。かの国では、東風汽車との合弁の東風ホンダが「エリシオン」という、オデッセイのグリルの面積だけ増やした上級モデルをつくっている。新型オデッセイの新しい顔は、このエリシオン似に仕立て直したもので、これにより広州汽車との合弁の広汽ホンダのオデッセイを、エリシオンの「弟分」から「双子分」に引き上げたのである。中国人は体面を重んじるので(日本人も重んじるひとはそうですね)、広汽ホンダにとってはよいニュースであるにちがいない。
201005_2NJ_cata-P33-34201008_2NJ_cata-H01-04インテリアでは、インストゥルメント・パネルを一新。目線が集中するポイントを変えることで、「変わった感」を出そうとした。シフター、エアコンのパネルの位置は同じながら、手が触れる部分にソフトパッドを使って上質さの演出を試みている。
ドライバーの眼前のメーターのTFT(液晶ディスプレイ)は3.5インチから7インチに拡大。センターコンソールの、主にナビゲーション用のTFTはオプションながら、7インチから10インチに大型化している。
インパネまわりの収納能力が足りない。カップホルダーの位置が使いにくい。というオーナーの声に応えて、助手席の前側に小物入れを、運転席から手に届きやすい位置にカップホルダーを、新たに設けた。
新型はダッシュボードが水平基調でシンプルな形状となり、どっちかというと重厚な雰囲気だったMMC前に較べて、開放感とすっきり感を醸し出している。シートに大きな変更がないのは、不満がなかったからだろう。これは5代目オデッセイのよいところ。よいところは残し、よからぬところがあれば直す、という選択と集中が心がけられている。
201005_2NJ_cata-P37-38このほか電装系の強化として、「ジェスチャーコントロール・パワースライドドア」なる新装備を、日本初採用している。ドアノブに手を触れることなく、スライド・ドアの発光部分にて絵をかざすだけで、開閉できるという、コロナ時代にピッタリともいえるこれは、中国市場で先行発売していた世界初の新発明だ。その作動具合は少々まどろっこしいけれど、「使い勝手をよくするものではなく、ファン(fun)の領域。驚いてもらうための装備」であることをホンダも認めている。オモシロイので他社も追随必至だろう。
さらに予約ロックというのもある。これはスライド・ドアが電動で閉まるのが待ちきれないイラチなかたにピッタンコの仕掛けで、フロント・ドアのノブのボタンを押しておくと、その場を離れても、スライド・ドアが閉まった後にちゃんとロックしてくれる。
「欲しい」という強い要望の声に応え、ハンズフリーのパワーテールゲートを、普通のMMCでは手をつけないものだそうだけれど、「CR-V」の部品をもってきて新採用してもいる。リア・バンパーの下で足先をキックするようにするとセンサーが認識し、リアのゲートが開閉できる。両手がふさがっているときに便利なデバイスである。
201008_2NJ_cata-P23-24201008_2NJ_cata-P23-24201008_2NJ_cata-P27-28201008_2NJ_cata-P23-24燃費のマジック?
動力性能、ダイナミック性能については、「お客さんからの不満はない」ということだけれど、それでもチューニング・レベルでの細かな改良は施されている。
ひとつは、乗り心地に影響を及ぼすタイヤだ。2016年に追加されたハイブリッドは、発表時、グレードによって215/60R16、もしくは215/55R17だった。それが新型では、215/60R17、もしくは225/50R18に、それぞれ1インチ大きくなっている。通常、インチアップすると乗り心地は悪化するけれど、その出来具合は試乗しての話になる。
「加速」と「減速」については、車重増加にもかかわらず、現行モデルの水準をキープ。「曲がる」については、「操作が重い」という声に応え、電動パワーアシストのソフトをやり直している。
燃費についてはふれられなかったので、2016年に追加されたハイブリッド・モデルのスペック表にあるJC08モードで比較すると、ビフォーの最良は26.0km/リッター、最悪は24.4km/リッターとある。新型はそれぞれ25.2km/リッターと24.4km/リッターで、悪いほうのラインが下がることは防いでいる。
不思議なことに、新型のハイブリッドのいちばん豪華装備のモデル、e:HEVアブソリュートEXの7人乗りは、1930kgに達していて、タイヤは18インチの225/50を履くところのいちばん重いモデルが、諸元表では最良の25.2km/リッターとなっている。筆者の見間違いでしょうか……。ちなみに、MMC前で最重量のハイブリッドは1880kgで、それが最悪の24.4km/リッターだった。それはそうでしょう。うーむ。いかなるマジックが隠されているのか。機会があれば知りたいものである。
プラットフォームは変更なく、パワートレインも従来通りだ。スポーツハイブリッドi-MMDからe:HEVに改名したハイブリッドは2.0リッターの145psのガソリン・エンジンと184psの電気モーターを組み合わせる。ガソリンは175psの2.4リッターのみで、これにはFWD(前輪駆動)に加えて4WDがあるのも変わっていない。
ただし、ラインナップは整理され、すべてアブソリュートとなり、ハイブリッドの上級グレードは7人乗りのみとなっている。
201005_2NJ_cata-P15-16201005_2NJ_cata-P15-16筆者の記憶によれば、315Nmの大トルクを発揮する電気モーター主体のオデッセイ・ハイブリッドは、ホンダの国内モデルのなかでもっとも上質で高級感があった。ホンダ独自の超低床プラットフォームと低重心設計により、全高が1700mm近くもあるミニバンであることを感じさせなかった。サルーンのようなハンドリングと乗り心地を持っていた。あえてリア・サスペンションを独立ではなく、トーションビームとしていたのは、低床を優先してのことで、よいリジッドはよくない独立式より優れていることを実証していたのである。
しかしながら、全長4855mm、ホイールベース2900mmに成長した、ホンダでいうところのアッパーミドル・ミニバンで、ホンダ自身、「家族のためのクルマ」と位置づけるクルマで、超低床設計が必要なのかどうか。いや、筆者は個人的に好きですけれど、実際買ってないし……、本来はこの基本設計こそ問われるべきだったのかもしれない。
フルモデルチェンジしない理由とは
と書いておいてなんですけれど、発表以来7年も経過したモデルがなぜフルモデルチェンジ(FMC)しなかったのかといえば、超低床プラットフォームが直接の原因ではない。5代目オデッセイが販売不振だったわけでもない。1995年に登場した初代オデッセイのような場外ホームラン級の大ヒット作とはいえないけれど、国内では2019年に月1000台、中国市場では月4000台の販売をキープしており、一定の結果は出していたのだ。
なので、2010年から5代目オデッセイの開発に携わっていて、2019年にLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー=開発担当者)に就任した長毅(ちょう・つよし)さんも、3年前にFMC凍結を聞いたときはショックだったに違いない。
2020年10月2日、ホンダの八郷隆弘社長がF1撤退の理由として述べた方針「2050年カーボンニュートラルの実現」が3年前には固められていた。そのために、燃料電池車、バッテリーEVなど、将来のパワーユニットやエネルギー領域での研究開発に経営資源を重点的に投入していく、と。
「え、ホンダ・オデッセイのハイブリッドなんて、進んでいるほうじゃないですか?」
と、長毅(ちょう・つよし)LPLに筆者がたずねると、「その次をやらないと(自動車を)売れなくなりますから」という意味のことをさっぱりした素直な口調でお答えになった。ちなみに長LPLによれば、F1撤退は3年前に決まっていたわけではなくて、パンデミックによる業績悪化により急遽決定したものだという。
ともかく、オデッセイのFMCはもうちょっと落ち着いてから、と、長さんは説得された。これはホンダだけのことではない。すでに日産、三菱で起きていることである。いや、もしかして世界中の自動車メーカーで起きている。今後しばらく、クルマのモデル寿命は延びる、と覚悟したほうがよい。
クルマ好きからすれば、つまらない事態ではあるけれど、本当にいいものを直しながら使い続けるというのは、本来よいことである。今回の新型オデッセイは、ま、新しいカタチに好き嫌いはもちろんあるでしょうけれど、乗ると、(ペトロール・ヘッドは別にして)納得されるのではないか。とMMC前のモデルに試乗した記憶から筆者はそう思う。
誤発進抑制機能とか、運転支援システムのホンダ・センシングはもちろん全車標準。経済成長の時代は終わった。あるいは、しばしおやすみです。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹、ホンダ
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