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「スポーツカー=悪」が理由だった! かつて存在した280馬力規制と「突破した」スポーツカーじゃないモデルとは

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「スポーツカー=悪」が理由だった! かつて存在した280馬力規制と「突破した」スポーツカーじゃないモデルとは

スポーツカー叩きが280馬力自主規制の発端

 昭和の時代、排ガスによる公害や交通事故の急増が社会問題になるなか、クルマは外貨を稼ぐ重要な基幹産業となり、便利な道具として普及していった。1970年代から’80年代にかけて日本の経済成長が高水準に達しクルマも進化するにつれて、「クルマが速いから事故が起きる」とか「スポーツカーがあるから珍走団(暴走行為をする集団)が生まれる」だのという風潮もあり、高性能車やスポーツカーが「悪」という時代になってしまった。

実力はスペック以上!280馬力自主規制でパワーダウンを余儀なくされた国産車5選

規制は国内販売される日本車のみが対象

 少し乱暴にまとめたが、こうして生まれたのが国産車は最高出力を280馬力までに抑えるという自主規制だ。日本車ではなく国産車と記したのは、日本メーカーのクルマであっても海外で販売されるモデルなら規制値を超えていても問題なし。また、外国メーカーのクルマなら日本で販売するクルマであっても規制の対象にはならなかった。

 この280馬力自主規制の発端は、前述の社会問題を理由に運輸省(現在の国土交通省)が日本自動車工業会に規制を働きかけ、20世紀末期の280馬力規制が始まった。

 ちなみに280馬力という数字は、Z32型フェアレディZの最高出力から決められたと言われているが、真意のほどは定かではない。しかしターボやマフラー、ECUの交換などで280馬力を超えるチューニングはできたわけだから、この自主規制がどこまで効力を発揮したのかは疑問符が付くのだが……。

規制値を打ち破った初モデルは4代目レジェンド

 2000年代に入ると、衝突安全ボディなどの普及をはじめとしたクルマの安全性が向上したことで、交通事故による死者数の減少もあり、日本自動車工業会が280馬力自主規制の撤廃を国土交通省に申し入れたことで2004年に撤回。同年10月には280馬力を打ち破るモデルが登場した。

 それが2004年10月発売の4代目ホンダ・レジェンドだ。300ps/36.0kg-mを発揮する3.5L V6 VTECエンジンによる自主規制の突破は、ホンダ自慢のスポーツハイブリッドシステム「SH-AWD(スーパー・ハンドリング・オール・ホイール・ドライブ)」と相まって「ようやく日本にも快速セダンが生まれた!」と注目を集めた。

 しかし残念だったのは、このころになると海外のプレミアムサルーンでは300馬力オーバーは珍しいことではなくて、予想に反して新鮮味は薄かった。そしてレジェンドはサルーンでありスポーツカーではなく、自主規制を破ったモデルがスポーツカーであったならもう少し話題になったと思う。

 だが、逆にレジェンドだからできたのかもしれない。というのも、いくら自主規制とはいえ国がからむ案件ゆえに、スポーツカーで規制が終わるのは難しかったのではないだろうか。

SH-AWD搭載などの画期的な商品力は魅力だったが……

 そんな4代目レジェンドはホンダの意欲作であった。エンジンは自然吸気で300馬力を発揮していながらも、マグネシウム製ヘッドカバーやアルミ合金製の吸気マニホールドを採用。軽量かつコンパクトに仕上げられたこともあって、平成17年排出ガス基準75%レベルの星4つを獲得。環境性能も優れていた。

 AWD(4WD)システムは、前後と後輪左右の駆動力を自在に可変できるSH-AWDを採用。前後トルク配分を30:70~70:30に、後輪左右を0:100~100:0まで変化できる無段階制御として、運動性能を向上させている。これが4ドアサルーンに必要か? と問われると難しいが、世界でメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズと戦うことを考えれば、ホンダ独自の先進的な技術が必要であり、SH-AWDはのちにハイブリッド化された2代目NSXにもその思想は受け継がれるなど、走りも魅力のサルーンとして訴求力が必要だったのだ。

世界初の先進技術「ナイトビジョン」も採用

 サスペンションもフロントは自慢のダブルウィッシュボーン式、リヤにはアッパーアームと2本のロアアーム、そしてコントロールアームを備えたマルチリンク式を用いて運動性能を高めた。高性能の必需品であるブレーキも、キャリパーはアルミ合金製としてフロントには4ポット式、リヤはドラムインディスク式となり、ディスクローターは前後ともにベンチレーテッドディスクを採用。高出力に応える制動性能も確保した。

 そして軽量化も重要だとして、ボディ骨格の主要部品の50%に高張力鋼板を採用。曲げ剛性やねじり剛性を30%以上も向上させながらも軽量化を図っており、プロペラシャフトはカーボン製としたことで、高い剛性と軽量化の両立を達成していた。

 ほかにも、当時最先端のプリクラッシュセーフティも装備され、追突軽減ブレーキや車線維持機能などが備わる。さらに、世界初となるふたつの遠赤外線カメラからの歩行者認知支援システム「インテリジェント・ナイトビジョンシステム」もあって、ホンダのフラッグシップにふさわしい安全性能を誇っていた。

残念ながら280馬力規制を打破したインパクトは残せず

 惜しいのは、これほどの高性能でありながら、それを感じさせない大人しいデザインであったこと。つまり、日本や欧州、北米のプレミアムカーに長年慣れ親しんだ人には、プレミアム性を感じさせないスタイリングであったことは否定できない。

 走らせても、先進の安全装備や高性能AWDが、普通に運転しているだけなのに介入してくることがあり、現在ほどに制御のうまさや曖昧さが少なかったことが残念。そして個人的な記憶だが、ホンダが高性能さをPRする活動を積極的に行ってこなかったことも残念だ。4代目レジェンドのTVコマーシャルは流されていたのだろうが、その映像や音楽がなかなか思い出せないのは、いまに思えば凡庸なCMだったのかもしれない。

 現在では280馬力オーバーのクルマは珍しくない。ところが軽自動車には、いまも64馬力の自主規制が存在する。軽自動車も安全性能が比較的に高まり、車両重量も重くなっていくなかでそろそろ撤廃されてもよいのではないだろうか? 軽自動車は日本独自のものだから64馬力でもよいでしょうという声もあるだろうが、燃費や環境性能を重視するユーザーが多い時代だけに、軽自動車も自主規制を撤廃して、逆に環境性能面での新しい敷居を設定したほうが良いのではないかと思う。

■4代目ホンダ・レジェンド(KB1型/2004年10月発売モデル)○全長×全幅×全高:4930mm×1845mm×1455mm○ホイールベース:2800mm○トレッド 前/後:1575mm/1585mm○車両重量:1760kg○乗車定員:5名○最小回転半径:5.8m○室内長×室内幅×室内高:2025mm×1515mm×1180mm(サンルーフ装着車1160mm)○エンジン:J35A型SOHC V列6気筒24バルブ○総排気量:3471cc○最高出力:300ps(221kW)/5800rpm○最大トルク 36.0kg-m(353N・m)/4800rpm○サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン式/マルチリンク式○ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク○タイヤサイズ 前後:235/50R17○車両本体価格:525万円(税込)

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みんなのコメント

82件
  • 高速道路ではスポーツカーでない車の暴走が多い。例えばみなさんご存知の、、、
  • 280馬力自主規制と軽の64馬力自主規制は別問題。
    軽自動車の優遇措置撤廃にもつながりかねないから、メーカーもおいそれと自主規制撤廃に動けない。
    この記者は軽の優遇措置がなくなることを望んでいるのか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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