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実際のところETC2.0は必要か? トラックの普及率は約7割なのに 普通車はなんと約2割

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実際のところETC2.0は必要か? トラックの普及率は約7割なのに 普通車はなんと約2割

 2023年1月の段階で約889万台まで普及台数を伸ばしたETC2.0だが、実際の所、現在も使われている最初のETCと比較してメリットはどの位あるのだろうか。将来性も含めて、これからクルマを購入する人にとってのどちらの方がいいのかを考えてみた。

文/高山正寛 写真/池之平昌信、奥隅圭之、ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:ふわしん@Adobe Stock)

実際のところETC2.0は必要か? トラックの普及率は約7割なのに 普通車はなんと約2割

■ETC2.0の利用率は圧倒的に商用利用が上

ETCの利用者は94.2%とほとんどのクルマに搭載されている。だが、ETC2.0の利用率は普通車以下で19.9%となっている。ところが中型車以上は66.7%と利用率が高く、ビジネスでは需要が高い(metamorworks@Adobe Stock)

 1997年の試験導入時を除くとETCの一般利用が開始されたのが2001年4月。普及のための数々の施策により、全国の高速・有料道路に配備され、高速道路6社の累計でも94.2%(2022年11月現在)まで利用率は高まっている。

 車両区分で見ると普通車以下(軽・普通車)が93.4%に対し、中型車以上は98.3%と物流などのビジネス利用が多い。ただ2016年6月に90%を超えてからは伸び自体は鈍化傾向にあり、上限に近づきつつある。

 その中で2011年3月からサービスを開始したのが「ETC2.0」だ。簡単に言えばETCの上位互換規格で、最大の特徴はETCに対し「双方向、大容量」で高速通信ができる点にある。

 規格名がコロコロ変わるのでわかりづらい部分もあるが、通信アンテナ(ITSスポット)から得られる情報自体は確かに多く、車両とスポットが双方向で通信することで、渋滞回避ルートの提案やSAの混雑情報なども取得できる。

 ただ、このETC2.0、2023年1月の段階で普及(セットアップ)台数が約889万台まで広まってはいるが「利用率」で見ると普通車以下は19.9%に対し、中型車以上は66.7%(いずれも2022年11月現在、高速道路6社合計)と大きく差が開いているのがわかる。

 ここで言う「中型車以上」という区分は「中型・大型・特大」を意味するが、中型は道路交通法の区分では車両総重量7500kg以上、11000kg未満(最大積載量は割愛)なので基本はビジネス利用と考えていいだろう。

 では見方によってはまだまだ“伸びしろ”がある普通車なのになぜここまで差が付いているのか、また普及が進まないのだろう。

■ETC2.0の機能がまだ限定的

ETC 2.0ならば高速道路の途中下車にも対応している。ただし2時間以内に同じ出入り口に戻る必要がある(U4@Adobe Stock)

 ETC2.0がこれまでのETCと大きく異なるのは前述したように双方向通信を活用することで、新たなサービスを提供できる点にある。

 まず最初にあるのが「一時退出・再進入」だ。

 これは高速道路において一度高速道路を降りて、再度進入しても料金自体はそのまま利用していた場合と同じという社会実験だ。

 目的としては昨今問題となっている高速道路の休憩施設の不足解消と同時に地方(地場)産業をサポートすることにある。

 具体的にはSAやPAなどの休憩施設同士が約25km以上離れており、ICの2km以内にある道の駅を対象とすることで、メリットが受けられるのだが、実際これをどれだけ使っているのかは肌感覚とはいえ、それほど感じていない。

 例えば、高速道路を降りた先にある道の駅に急速充電設備がSA/PAより多く配置されていたり、優先利用か可能(これ自体は難しい)などのメリットがあれば立ち寄ろうと思うだろうが、わざわざ高速を降りるという行為自体が面倒臭い。

 またこの料金システムを活用するにはETC2.0車載器&ETCカードはもちろん、対象となるICまたはスマートICから退出後、2時間以内に同一ICから再進入しなければならない。ルールとしては正しいのだが、昨今の道の駅は買い物だけではなく、食事スペースなども充実している場所があり、2時間という制約は人によっては短いと感じるケースもある。

■1000km先の渋滞、本当に必要なのか?

ETC2.0は、進行方向の道路情報の提供距離が1000kmまで拡大している

 何度もくどい話で恐縮だがETC2.0のメリットは大容量かつ高速でデータをやりとりできる点にある。

 これまで高速道路などでの渋滞情報と言えば、VICSの電波ビーコンが主流だった。ただこのシステムは前方200kmを主とした進行方向の道路情報が取得できたのに対し、ETC2.0はこの距離(提供範囲)が1000kmまで拡大している。ちなみに電波ビーコンは2022年3月末でサービスを終了している。

 これにより、より広範囲の渋滞情報を取得し対応するカーナビにデータを送ることで最速ルートを検索し案内してくれるというもので「ダイナミックルートガイダンス支援」と呼ばれている。

 いわゆるITS領域のサービスだが、これのメリットがあまり感じることができないのだ。よほどのクルマ好きならば1000km走行なんて朝飯前かもしれないが、普通のドライバーが帰省以外などでこの距離を走るケースは少ない。

 実はここで冒頭に触れた中型車以上の装着率が高い理由と連携する。物流をメインとした商用ドライバーの場合、長距離走行は当たり前の世界である。我々が寝ている間にも物流に携わるドライバーは常に荷物を運んでいることは誰もがわかっているはずだ。

 こういうプロドライバーであれば、このサービスのメリットも享受しやすし、経費節減のために「圏央道割引」や「東海環状自動車道割引」との連携も積極的に活用するだろうが、一般ドライバーの場合にはシステムと実際の使用感が乖離(かいり)している。

 渋滞回避であれば、もう少し狭い範囲にはなるが、装着が進んでいる「VICS-WIDE」や各自動車メーカーが展開しているテレマティクス機能の方がリアルなメリットを感じることができる。

■車載器がまだまだ高額

ETC車載器はかなり値段がこなれているがETC 2.0対応の車載器はこれに比べると高額な印象である(irise8@Adobe Stock)

 過去から言われていることだが、ETC2.0の機能を使うためには専用の車載器が必要だ。

 冒頭に書いたように料金収受に関してはETCでも問題はない。昨今、首都高速の料金所では有人の料金所を廃止しETC専用入口が拡大しているが、これも普通に使うことができる。

 そもそもETCが普及したのはキャッシュレス決済や料金所での渋滞が軽減できることでスムーズ&スマートな交通環境を構築できることだった。つまり普段の利用に関しても「あくまでも基本は」ETCで十分なのだ。

 特にサービス開始時の頃はETCとETC2.0車載の価格差があまりにも違いすぎた。

 国が2008年頃に無料で車載器のセットアップサービスを行ったことでETCの認知と普及は加速した。当時多くのユーザーが飛びついたわけだが、概ねセットアップも含めるとETC車載器は1万円強で取り付けられることも意識の中に植え付けられているのではないだろうか。

 しかしETC2.0は価格が高かった。ヘタをすれば車載器の価格は数倍以上のものもあり、いくら多機能でもそこまでお金を出すことに抵抗があったのは想像できる(当時は筆者もそうだった)。

■価格は大分下がってきて買い得感も上がる

新型トヨタプリウスは各種ETC車載器を選択できる

 ただ昨今はこの価格差もかなり縮まっていることも理解しておく必要もあるだろう。

 一例だが、話題沸騰のトヨタ新型プリウスだと下記の通りとなっている(いずれも税込み)。
・メーカーオプションのETC2.0車載器(ナビ連動型)→2万7500円
・ディーラーオプションのETC2.0車載器(ビルトインタイプ)→2万5850円
・ディーラーオプションのETC車載器(ボイスタイプ)→1万4300円
・ディーラーオプションのETC車載器(ベーシックタイプ)→1万1000円

 確かに価格だけ見るとETC2.0車載器はETC車載器の約2倍なのでパッと見の高さは否めない。

 それでも他社で5万円近くするメーカー系のETC2.0車載器が普通に販売されていることから考えるとトヨタは企業努力もしているし、実際ディーラーでセールスマンに話を聞いても納得のできる勧め方をしてくる。多分、機能云々を語る前に車載器自体が普及価格帯に落ち着くことが重要であると感じている。

■では今ETC2.0はどうなるのか?

アネスト岩田 ターンパイク箱根では、登録することでETCが利用できる「ETCX」を導入している

 こればかりは筆者は政府でも監督官庁の人間でもないので偉そうなことは言えないのだが、現在載っているクルマにもETC2.0は装着されている(ナビ連動型)。前述したように渋滞回避などはほとんど体感したことがないが、逆に重要かつありがたいと感じているのが「安全運転・災害時支援」機能だ。

 関東圏に住んでいるドライバーであれば多くの人が体験したことがある首都高速4号線上りの新宿→代々木の急カーブ箇所。ここは新宿出入口手前で85Rの右カーブ、そして連続して代々木出入口付近に88Rの左カーブが連続する。

 いわゆる見通しの悪いコーナーだが、ここを高速走っていて、もし渋滞末尾などに遭遇したら追突事故に繋がる(実際多い)。ゆえにここにETC2.0車載器に連携する「ITSスポット機器」を設置(2箇所)することで事前に速度低下を促し、事故低減に繋げている。

 実際、首都高の発表によれば、これによる事故発生件数は実証実験前に比べ約6割減少しているという。

 またVICS-WIDEでも近い機能はあるが、地震などの災害発生による緊急の規制情報などの提供などはさらに強化していくべきだろう。

 何よりも高速道路は「逃げ場が無い」。だからこそETC2.0を普及させるためには安心・安全をサポートする独自機能の実装が求められるのだ。

 この他にも高速道路会社とは管轄の異なる一般道や施設などでの利用を考慮した「ETC-X」との連携なども今後は考えていかなければならない。

 今やスマホのバーコードで簡単決済ができる時代、ETCもスピーディかつ誰もが簡単に使える有益なサービスが求められている。

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みんなのコメント

26件
  • まだ使えるから買い替えないだけでしょ
    ほとんどは
  • ここ3年程で2回新車を買ったけどディーラーも2.0を勧めて来ない。
    「1.0で問題ありませんよ」って言うし、実際必要性を全く感じない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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