ホンダとしては初となる量産電気自動車であるホンダeが2020年8月27日に発表され、注目を集めている。発売開始は発表から約2カ月遅れの10月30日からとなる。
2020年9月下旬の時点では、事前予約の段階で第1期の販売予定台数に達したため早々とオーダーストップとなっているほど人気なのだ。
えっ!? 一般ユーザーには届かない? ホンダe予約受注の裏側
ホンダのホームページには赤字で記載され、オーダーの再開についての目処はまだ明らかになっていない。
ホンダeの直接的なライバルとなる日本車の電気自動車はないが、ホンダeの購入を考える際に比較対象として浮かぶのはやはり日産リーフだろう。
当記事では車格は違うものの電気自動車というジャンルは同じこの2台をいろいろな角度から比べてみた。
文:永田恵一/写真:HONDA、NISSAN、平野学
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ホンダeとリーフそれぞれの概要
ホンダe
ホンダeは全長3895×全幅1750×全高1510mmというボディサイズからわかるとおり、コンパクトクラスの電気自動車である。
モーターはリアに置かれるRRで、コンパクトクラスという車格もあり主にシティコミューターとして使われることを想定している。
バッテリー容量は35.5kWhと現代の電気自動車としては大きくない点もホンダeの特徴、焦点となっている。
ホンダeの日本での年間販売目標は1000台と決して多くないが、正式発表後すぐに第1期販売予定台数に達したためオーダーストップ中
今や世界の電気自動車のスタンダードと言えるリーフに対しニューモデルのホンダeがスペック的に厳しいなか、どう対抗するのか?
リーフ
リーフは初代モデルが2010年に登場し、日本の電気自動車業界を牽引してきたミドルクラスの電気自動車である。
リーフは2017年に2代目モデルに移行し、オーソドックスなFFレイアウトとなる点などクルマの土台となるプラットホームは初代モデルと共通だが、バッテリー容量の拡大など全体的に正常進化を遂げている。
ボディサイズは全長4480×全幅1790×全高1560mmとなっている。
進化を遂げているバッテリーの容量は標準車の40kWhはホンダeとそれほど変わらないが、大容量のe+は62kWhと大きい。
初代リーフは2010年にデビュー。いい悪いは別として、個性的で好き嫌いが分かれるデザインだったが、中古車は安くなっている!!
2017年に現行の2代目にフルモデルチェンジ。使い勝手に優れる5ドアハッチバックスタイルは踏襲しているが、デザインが格段に洗練された
価格
ホンダeは日本での年間販売計画台数が1000台と少ないことや電気自動車である点をプレミアム性として使っているところもある。
そのため価格は標準/451万円(補助金23万6000円、WLTCモード航続距離283km)、パワフルなアドバンス/495万円(同16万8000円、259km)と車格や航続距離を考えると高い。
ホンダeは標準とADVANCE(アドバンス)の2グレードをラインナップ。両グレードの価格差は44万円と小さくはない
いっぽうリーフはバッテリー容量40kWhの標準車/332万6400円(補助金42万円、WLTCモード航続距離/322km)からとなっているが、購入するなら運転支援システムプロパイロットが付き405万6800円のX Vセレクション以上だろう。
62kWhのe+(同42万円、458km)は441万1000円からと、こちらも安くはないが、車格や航続距離を考えれば納得はしやすい。
さらに現行リーフはお買い得感のある高年式低走行の中古車も流通しており、この点も含め価格を考えるとリーフの圧勝だ。
ホンダeが2グレードなのに対しリーフは豊富なラインナップを誇る
動力性能、走り
ホンダeは1500kg代前半の車重に標準車は136馬力、アドバンスは154馬力のモーターを搭載する。
対するリーフは標準車が約1500kgの車重に150馬力のモーター、e+は車重が1700kg近くとなる代わりにモーターも218馬力にパワーアップするので、絶対的な動力性能はリーフの圧勝だ。
ホンダeはリアエンジン・リア駆動のRRを採用。スペース効率はもちろんのこと、開発陣の走りへのこだわりの産物と言われている
しかしホンダeはRRレイアウトを生かしたトラクションの強さや軽快感あるハンドリング、前輪がフリーとなるゆえのスムースなステアリングフィールといった個性や特徴を持つ。
対するリーフはホンダeに比べれば普通の乗用車という印象が強いうえに、バッテリー容量の拡大により車重の重いe+になると乗り心地などに荒さを感じる。
ただリーフのポテンシャル自体は高く、特にe+のタイヤ、サスペンションなどに手を加えると動力性能が高いだけにサーキットも楽しく走れるスポーツモデルになり、40kWhの標準車にはメーカーが仕上げたスポーツモデルのNISMOも設定される。
動力性能、走りは両車一長一短なところもあるため、引き分けとする。
リーフの走りのポテンシャルはノーマル状態でも高いが、電気自動車ながら走りにこだわりたい人にはNISMOも用意されている
航続距離
航続距離は前述した数値とホンダe/街乗り中心、リーフ/エンジンの代替というコンセプトの違いもありリーフの圧勝だ。
なおホンダeの実際の航続距離は確認できていないが、現行リーフでの経験を踏まえると両車カタログに載るWLTCモードの八割程度が目安だろうか。
だが実際の使用を考えると、家庭での200V充電に掛かる時間は40kWhのリーフとホンダeは同等だが、リーフe+はバッテリー容量が大きいだけに1時間あたり6kWhで行っても12時間半(メーカー公表値)、通常の1時間あたり3kWhだと20時間は掛かると思われる。
2019年1月にバッテリー容量を62kWhに大幅アップさせたリーフe+を追加。ロングドライブする際に心強い。同時にパワフルな走りが魅力
さらに長距離ドライブや出先での急速充電で充電できる電力量はリーフが30分で18~20kWh(130~150km分)なのに対し、ホンダeは30分でバッテリー容量の80%分充電可能とのことなので、25~28kWhの電気(180~200km分?)が1回の急速充電で充電できると思われる。
そのためホンダeは長距離ドライブでも結果的に意外に少ない急速充電の回数で目的地に到着できるかもしれない。
なお外部での充電環境は両車メーカーが発行する充電カードを契約すれば日産ディーラーの利用など同じだが、料金はホンダeのほうが安い傾向だ。
ホンダeはシティコミューターとしてバッテリー容量は割り切っている。しかし、充電スピードが速いので、充電ポイントさえ確保できれば苦にならないかも
使い勝手
ホンダeはサイドミラーがカメラになってのをはじめ、液晶パネルが並ぶなど先進性を感じさせるインパネを採用している
リーフのインパネ周りも新しいと部類と思っていたが、ホンダeと比べるとオーソドックスなデザインに感じられる
絶対的なキャビンとラゲッジスペースの広さはボディサイズ相応にリーフの圧勝だ。しかしリーフのインテリアを見るとそれほど新しさを感じず、価格や車格を考えると安っぽさが否めない。
対するホンダeはズラリとならぶ液晶画面や「OK、ホンダ」の合言葉でいろいろなことができるインフォテインメント、木目パネルを多用したダッシュボードやリアの100Vを含めた豊富な電源など、初代シビックを彷彿とさせるエクステリアを含め、とても新鮮だ。
またホンダeはRRレイアウトなのでタイヤの切れ角が大きく、最小回転半径は軽乗用車並みの4.3mと非常に小さいという強みもある。
そのため使い勝手は車格とコンセプトの違いも含め、引き分けとする。
まとめ
それぞれにアドバンテージがあるこの2台だが、電気自動車として客観的、総合的に見ればリーフの圧勝なのは明らかだ。
しかしホンダeは価格の高さという決定的な弱点があるにせよ、ミニやフィアット500のような独自のプレミアムなキャラクターを持つ点は大きな魅力だ。
それだけにホンダeには価格の見直し(もう100万円は値下げしてほしい)を含め、今後の成長や展開を大いに期待したいところだ。
パンダのような動物にも見えるし、かつての名車ホンダN360をオマージュしているようにも見えるホンダeが目指すはプレミアムコンパクトEV
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