2030年にはバッテリーEVのフルラインアップを実現し、2035年にはグローバルで全車バッテリーEVとする戦略を表明しているレクサス。レクサスのバッテリーEVといえば、これまでも「UX」をベースとした「UX300e」が存在したが、今回のRZは、レクサス初となるバッテリーEV専用プラットフォームを採用したモデル。RZは、バッテリーEVとしてレクサスが本腰を入れてつくった最初のモデルであり、その実力は誰もが気になるところであろう。
RZのプロトタイプ試乗会で体感させてもらったレクサスRZの実力の片鱗をご紹介するとともに、このRZの開発からうかがえる、レクサスが見据える未来についてもご紹介しよう。
「レクサス」を超えるレクサスに!! RZ試乗で見えたトヨタが見据える「走りの高級SUV」の未来
文:吉川賢一
写真:ベストカー編集部/撮影:奥隅圭之
走り心地はウルトラスムーズ、ヨーク型ステアリングホイールも慣れれば問題ない
1625mmしかない全高と、スピンドルボディが特徴のレクサスRZ。実物はいかにも「走りそう」な雰囲気をもっていた。電池容量は71.4kWhで、航続距離は494km(WLTCモード)。0.8掛けとしても、実走行可能距離は400km弱確保される。20インチの大径タイヤを装着し、吸入口を閉じたスピンドルボディやセダン並みの傾斜をつけたリアガラス、左右分割タイプのリアスポイラーなど、フロントからリアまで流れるようなボディデザインのデザインがRZの最大の特徴だ。
インテリアは(プラットフォームを共有する)bZ4Xと比べるまでもなく、圧倒的に質感が高い。メッキやイルミネーションといった装飾は少ないものの清楚にまとめられており、大型タッチディスプレイや、ダイヤル式のシフトノブなどの操作感も、最新のレクサス車と並んで扱いやすいレイアウトだった。またロングホイールベースのおかげで後席の足元スペースは広大だ。
走りに関するRZのホットポイントは、「DIRECT4」とよぶ4輪駆動力システムや、持ち替えいらずのヨーク型ステアリングホイールなど。特にヨーク型ステアリングホイールは、低速域ではクイックすぎる応答性で、曖昧さが微塵もないため、当初は操舵修正に気を遣うこともあったが(不感帯があるほうが安定感は高まる)、5分もすれば慣れ、イージードライブさに拍子抜けしたほど。速度を上げると適切にスローなギア比へと可変してくれるので(それでも普通のステアリング仕様よりは機敏だが)、機敏すぎて気を遣う必要はなくなる。ロックトゥロック300度(片側150度)の範囲でバリアブルにギア比が可変するハンドリングは、駐車場での小回りから高速走行まで、幅広く使える最高のツールとなると感じた。
0-100km加速5.3秒というRZの速さは、暴力的な加速を誇るバッテリーEVのレベルではないが(他にもっと速いバッテリーEVは沢山いる)、電子音でつくられた加速サウンドも手伝い、なかなかの迫力。走り心地はウルトラスムーズで、加速フィーリングやコーナリングといった動的性能は、非常に好感触だった。
レクサスのガソリン/ハイブリッド車のスピンドルグリルで開いていた部分は閉じ、その下部分にモーター冷却のための空気流入口を設けている
運転中に持ち替えいらずのヨーク型ステアリングホイール。ロックトゥロック300度(片側150度)の幅で、全速度域で的確なギア比に可変する
RZのシステム出力230kW(前150kW、後80kW)は、bZ4XのAWD(前80kW+後80kW)よりも高く、トヨタ圏内では、現時点で最も高い
「レクサスらしさ」を意識しながらも、今後必須になる装備を早い段階で取り込む
バッテリーEVとしての完成度の高さは、まさに期待値通りの水準だったRZ。バッテリーEVでヨーク型ステアリングホイールを採用するなど、新しいものが好きなユーザーに向けてつくられたモデルかと思ったら、そうではなかった。
RZの開発主査である渡辺剛氏(ちなみにUX300eの開発主査でもある)によると、「バッテリーEVは、いまはまだ流行に敏感な方々に求められる傾向にありますが、RZはそうした層にターゲットを絞ったというよりも、レクサスが(専用モデルとして)初めて出すバッテリーEVモデルとして、レクサスのファンのことを考えて開発し、レクサスの未来を象徴する「羅針盤」となるために、(幅広いカテゴリをカバーできるよう)ミッドサイズでつくりました。SUVというよりも、レクサスらしいカッコ良いデザインを狙ったのも、RZの魅力のひとつとして考えています。」という。
ベンチマークとしては、テスラモデルYやメルセデスEQCなどをみたそうだが、直接のライバルとしたのは、NXやRXなどのレクサスの既存のラインアップだというのは、興味深かった。そのため「レクサスらしさ」には、特に意識して開発したそうだ。
この「レクサスらしさ」について、渡辺氏は、「デザインのカッコ良さ」と「クルマの走り始め」にあるという。スピンドルボディをはじめとした雰囲気と、タイヤが転がり始めた瞬間に感じられる質の良さは、レクサスがこだわってきた領域だそうで、レクサスは常に「ドライバーが気持ちよく走ること」を研究してきたという。
ヨーク型ステアリングホイール(を可能とするステアバイワイヤの技術は)、今後訪れるはずの自動運転社会では必須の技術であり、今後さらなる進化を求められる技術だ。ヨーク型ステアリングホイールを早い段階で実用化した背景には、市場反響からの価値検証に加え、未知の課題を浮き彫りすることで、次世代型ステアバイワイヤの開発にも多く反映したい、という意図があったのだろう。
こうした今後必須となる技術もうまく取り込みながら、レクサス車に乗り込んだ瞬間の安堵感、落ち着き、走り出した瞬間の満足感、優越感、楽しさ、こうした感性に訴える部分を共通化させて、次作以降のレクサスの新型バッテリーEVにも盛り込んでいき、そこからレクサスファンを惹きつける。これが、レクサスがRZでやりたかったことであり、レクサスが見据える未来なのだろうと筆者は感じた。
今後必須となる技術もうまく取り込みながら、レクサスらしさを共通化させ、次作以降にも続けていくことが、レクサスが見据えている未来
インテリアの艶やかさは、もうちょっと欲しかった!!
バッテリーEVというパワートレインの恩恵(静粛性と滑らかな発進時の加速感)もあり、レクサスラインアップのなかでも、ひと際走り出しの味付けは決まっていたと感じた、RZ。ドライブする面白みは十二分にあると感じたが、「中身」が素晴らしいだけに、残念に感じたのがインテリアだ。
もちろん、機能面は文句ない(広さも十分、車内は明るく解放感も高い)のだが、他のラグジュアリーメーカーが実践しているようなダッシュボード素材やイルミネーション加飾といった、(無駄ではあるのだが)雰囲気つくりには抜群の効果が得られるものがRZには見当たらず、色気や艶やかさという面で、若干物足りなさを感じる。レクサスとしても、こうした部分においても研究を続けているそうで、ユーザーの反応を見ながら、今後も検討を続けていくという。
レクサスが狙う未来を象徴するモデルであるRZ。世界の強豪メーカーを相手に、善戦する姿を今後も応援していきたい。
インテリアに関しては、機能面は文句ないものの、「色気や艶やかさ」があと一歩欲しい
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みんなのコメント
充電制限もあり、電費は更に悪くなり航続距離も減りました
その事は絶対に記事にならないよ忖度されるから
このRZも同じでしょ?
レクサスを超えるレクサスって?
自傷トヨタファン教えてくれw