車を運転していればブレーキを踏むということは、誰もが何百回、何千回と日常的に行っている行為だろう。しかし、ブレーキを目一杯「強く踏み込む」機会は、そう訪れるわけではない。
昨今、高齢ドライバーが関わる事故が多発しているが、「ブレーキを強く踏んだ」と思っていても、実際には急ブレーキをできていない場合が多く、一般ドライバーにとって車を最短距離で止めることは思っている以上に難しい。
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急ブレーキを掛けるには、どれくらいの「踏力」が必要で、どのような「踏み方」が正しいのか。“車を止めるプロ”でもあるレーシングドライバーで自動車評論家の松田秀士氏が解説する。
文:松田秀士
写真:Adobe Stock、HONDA、RedBull Content Pool
多くのドライバーはブレーキを「使いきれていない」
日本車で初めて4輪すべてにABSを搭載した2代目プレリュード(1982年登場)。現代ではABSの普及でブレーキロックの恐れなく、技術的には最短距離でブレーキング可能だが……
高齢ドライバーによる昨今の悲惨な事故。そのどれもがブレーキさえきちんと踏めていたら回避できたはず、と筆者は考える。
自動車は1トン以上の物体が移動する。もし1トンもの岩が転がってきたらどうするだろうか? ブレーキを持たない岩が転がってきたら誰もが逃げるはず。
車には速度を落とし止めることのできるブレーキが付いているから安全に走れ、周りも安心していられる。そして、それをコントロールするのがドライバーだ。
しかし、そのドライバーの誰もがちゃんとブレーキを踏めるわけではない。というか、ブレーキを使い切れてはいないのだ。
現在販売されているほぼ全ての乗用車にはABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が装備されている。
ABSは、タイヤがロックした瞬間にブレーキ圧を緩めてロックを解除し、またロックするまで圧力を上げる、という動作を自動で繰り替えすシステム。
ABSが作動すれば、コツコツといった振動が足に伝わってくるのですぐにわかる。これによって減速時のタイヤ性能を使い切ることができる。つまり最短距離で止まれる。
また、その状態でステアリングを切っても、切った方向に移動することができる。
例えば、走行中前方に人が急に飛び出してきた場合、まず急ブレーキを踏み減速。
それでも間に合わないと判断し、どちらかにステアリングを切って避けようとした場合、ABSが付いていない車だとタイヤがロックしてしまい、ステアリングを切っても車の向きは変わらず人を跳ねてしまう。
しかし、ABSがあればタイヤはロック⇔回転を繰り返すので、ステアリングを切った方向に向きを変えることができるのだ。
踏む力は100kg!? 本来ブレーキに求められた「力と技術」
F1ではABSが規則で禁止されているため、ブレーキをロックさせながら急制動するマシンがしばしば見られる。必要な踏力も市販車とは桁違いだ
つまり、ABSがなかった時代では、このABSの操作をドライバーがする必要があった。これは神業ともいえるハードルの高い技術。
最近ではABS付きのレーシングカーも多くなったが、筆者が過去にドライブしたレーシングカーにはABSが装備されていないものが多かった。
例えば現在のスーパーフォーミュラーに匹敵するF3000マシン。
筆者は1991年までF3000マシンをドライブしていたが、鈴鹿サーキットのシケインコーナーなど50km/h近くまで減速する時は、ブレーキペダルを100kg以上の踏力で踏み込む必要があった。
市販車のように踏力を補助するブレーキサーボ(マスターバッグなど)が付いていないので、それはそれは重いブレーキだった。
現在のF1マシンにもブレーキサーボは付いていないので、タイヤをロックさせてバトルするシーンでは相当な力で踏んでいるのだ。
ただし、F1マシンはカーボンファイバーのブレーキなので、スチール製のブレーキほど踏力は必要ない。これはカーボンがスチールより、より高温に耐えられるので、ブレーキ内の摩擦係数を上げられるためだ。
なぜ強く踏めない? 急ブレーキに必要な力と正しい掛け方
ブレーキを「踏む」ことは日常的に経験していても、写真のようにノーズダイブするほどブレーキを「強く踏む」機会はなかなかない。緊急時にはその「踏み方」が安全を大きく左右する
さて、話を戻そう。我々が普段運転する車にはブレーキサーボが付いている。ほんとうは力強く踏まなくてもABSが作動する限界点までブレーキを使い切ることができるはず。おそらく40kgレベルだろう。
だが、そこまで踏み込める人は稀だ。ほとんどのドライバーがABSが作動する限界点まで踏み込むことができない。
原因として考えられるのは、まずドライビングポジション。ブレーキを踏み込んだ時に右足(左足ブレーキの人は左足)が伸び切ってしまい力が伝わらないのだ。
踏み込む力も大切だが、踏み込みストロークも考慮しなくてはならない。現在のブレーキにはストロークがあるからだ。これらはシートポジションを前に移動することで解決する。
特に高齢者は体幹筋が衰えているにも関わらず、若い頃のイメージのままのドラポジの場合が多く、しっかりと踏み込めない人が多い。
また、お尻をシートの奥にまでしっかりと固定して骨盤を立て股関節をサポートしないと、素早くアクセルからブレーキに踏み替えることができず、また踏み込んでも力が逃げてしまう。
正しい急ブレーキのかけ方とは、アクセルから素早くブレーキペダルに足を乗せ替え、力いっぱいブレーキペダルを蹴飛ばすように踏み込むことだ。
経験なくして急ブレーキは掛けられない
多くの場合、自動車教習所ではこのような教習を行っていないので、ほとんどのドライバーがABS作動まで踏み込めないのも無理はない。
自動車を運転することはスポーツである、と筆者は考えているから、練習なしでABSが作動するほどの急ブレーキを踏めるはずがない。
だから、普段から急ブレーキの練習をしてほしい。といっても走っているときに練習しては追突され事故になる。止まっているときに行うのだ。
出来ればエンジンを掛けてブレーキサーボが効く状態で、安全な場所に車を止めて(自宅駐車場など)前述したアクセルからブレーキペダルに素早く乗せ替え力いっぱい踏み込むのだ。この動作を身体に覚え込ませる。
経験なくして急ブレーキが踏めるはずもなく、練習なくして上手くはならない。自身と他人を傷つけないためにも、1トン以上もの物体を転がしている責任を自覚しよう。
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