日産の電気自動車、アリアの予約受注が開始した。2020年7月に概要が公表され、2021年6月4日には予約注文限定車の「アリア・リミテッド」を発表して受注を始めている。一番安いグレードの「B6 limited」でも車両本体価格は税込660万円。
販売店では「予約受注に際しては5万円の申し込み金を預かるが、正式な受注は2021年の秋から冬に行う。この時にキャンセルされた時は申し込み金を返金する。半導体不足の影響もあり、納車は2022年の春頃だろう」という。
登場から一年 超激戦区でライバルが続々刷新 苦戦!! 日産キックスに打開策はあるのか
アリアは新規投入車種だから、セレナやエクストレイルと違って、どのようなクルマなのか想像しにくい。試乗したうえで納得してから購入すると、契約できるのは年末から年明けになり、納車はさらに遅れそうだ。アリアの補助金に関しては以下の記事を参考に。
補助金は最大100万円超!? 新型アリアは実際いくらで買えるのか
さて、新型アリアはぶっちゃけ、売れそうなのか? お薦めグレードは? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/日産自動車 ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】2021年6月4日予約開始! ついに明かされた新型アリアの全貌
■満を持して投入された電動SUV、日産アリアはどこが凄い?
2021年6月4日、日産アリアの予約注文限定車「アリア・リミテッド」が発表された。ラインナップは66kWhバッテリーを搭載するB6 limitedと91kWhのB9 limited。駆動方式は前輪駆動とe-4ORCE(4WD)
アリア・リミテッド完売後に発売されるカタログモデルは補助金込みで約500万円からのスタートになるという(写真はリミテッド)
物理的なスイッチは装着されず、大型のモニターが2つ並んだ先進的なインテリア
アリアはSUVスタイルの電気自動車になる。ボディサイズは、全長4595mm、全幅1850mm、全高1655mmとされ、エクストレイルに比べると100mmほど短く、30mmワイドになる。ホイールベースは2775mmだから、アリアが70mm上まわる。
つまりアリアのボディは、全長はエクストレイルよりも短いのにホイールベースは長い。4輪をボディの四隅に配置したボディ形状だ。電気自動車だから、前後のオーバーハング(ボディがホイールよりも張り出した部分)を短く抑えられた。フロントマスクもグリルレスのデザインだ。
内装にも特徴があり、物理的なスイッチはほとんど装着されない。エアコンなどは、木目調パネルをタッチして操作する。内装は日本語の「間/ま」をキーワードにデザインされ、時間や空間のゆとりを感じさせる。
アリアのパワートレーンには、4種類の組み合わせがある。駆動用リチウムイオン電池の容量は、B6の66kWhと、B9の91kWhを用意した。リーフは40kWhと62kWhだから、アリアはリチウムイオン電池容量が全般的に大きい。
そしてB6とB9の両方に、前輪駆動の2WDと、前後にモーターを搭載する4WDのe-4ORCE(イー・フォース)を設定した。2WDの最高出力と最大トルクは、B6が160kW(218馬力)・300Nm(30.5kgm)、B9は178kW(242馬力)・300Nm(30.5kgm)になる。リチウムイオン電池の容量が大きいと、最高出力も上まわる。
4WDのe-4ORCEは、B6が250kW(340馬力)・560Nm(57.1kgm)、B9は290kW(394馬力)・600Nm(61.2kgm)だ。特にe-4ORCEは相当にパワフルなことが分かる。
そのために停車状態から時速100kmに達するまでの加速タイムは、2WDのB6は7.5秒、B9は7.6秒だ(B9が若干遅い)。e-4ORCEでは、B6が5.4秒、B9は5.1秒になる。5秒台となれば、フェアレディZのようなスポーツカーと同等だから、迫力の伴う加速を満喫できるだろう。
前後輪の重量配分にも気を使った。2WDのB6は前輪:54%・後輪:46%になり、4WDのB6e-4ORCEは51%・49%だから、重量バランスがかなり優れている
■1回の満充電で450km~610km!
アリア・リミテッド専用色 バーガンディー/ミッドナイトブラック
1回の充電で走行可能な距離(WLTCモード)は、2WDのB6が450km、2WDのB9はリチウムイオン電池に91kWhの余裕があるから610kmと長い。e-4ORCEはB6が430km、B9は580kmだ。リチウムイオン電池容量が同じであれば、2WDは4WDよりも長い距離を走行できる。
予約注文限定車になるアリア・リミテッドシリーズの価格は以下の通りだ。
■2WD
・B6リミテッド(66kWh) 660万円
・B9リミテッド(91kWh) 740万800円
■4WD
・B6e-4ORCEリミテッド(66kWh)720万600円
・B9e-4ORCEリミテッド(91kWh)790万200円
リミテッドは限定車だから装備も充実している。カタロググレードでは、ハンズオフによる高度な運転支援機能のプロパイロット2.0を標準装着するのは最上級のB6e-4ORCEのみだが、リミテッドでは全車に標準装着した。
同様にプロパイロットリモートパーキング、ヘッドアップディスプレイ、前席ベンチレーション機能を備えたナッパ・レザーシートなども、リミテッドシリーズでは全車に標準装着されている。
それでも装備の違いはあり、車速感応式オート集中ドアロック/衝撃感知式ドアロック解除システムは、B6リミテッドだけが装着していない。安全装備なので、ほかの3グレードと同様、B6リミテッドにも標準装着すべきだ。
リミテッド専用のナッパレザーシート(ブルーグレー)
電動パノラミックガラスルーフや運転支援システム「プロパイロット2.0」などの先進装備をアリア・リミテッド全車に標準装備
アリアリミテッド 価格表
アルミホイールとタイヤのサイズは、B9e-4ORCEリミテッドのみが20インチ(255/45R20)で、ほかの3グレードは19インチ(235/55R19)になる。
このように装備が異なるため、2WDとe-4ORCEの価格差は、B6同士で比べると60万600円だが、B9同士なら49万9400円に縮まる。B6の2WDには車速感応式オート集中ドアロック/衝撃感知式ドアロック解除システムが装着されないから価格が下がり、B9同士の比較に比べて価格差が広がった。
それにしても2WDと4WDの価格差が約50万円に達するのは、一般的には開きが大きい。アリアのe-4ORCEは、後輪に強力なモーターを搭載して加速性能を向上させ、2WDが採用しないアクティブサウンドコントロールなども装着したから、価格がさらに高くなった。
またB6(66kWh)とB9(91kWh)の価格差は、2WDが80万800円、 e-4ORCEは69万9600円だ。これも前述の車速感応式オート集中ドアロック/衝撃感知式ドアロック解除システムを2WD・B6が装着しないので、2WDの価格差が広がった。
それでも66kWhと91kWhの差(25kWh)の価格差は、少なくとも約70万円に達する。ちなみにリーフでは、40kWhと62kWhの価格を同等の装備を採用したアーバンクロム同士で比べると、22kWの違いで62kWhは約59万円高い。アクアの場合は若干価格差が大きい。
■アリアは売れそうか? お薦めグレードは?
12.3インチ大型モニターを2つ並べた統合型インターフェースディスプレイ。空調等の操作アイコンはシステム始動時に浮かび上がる
日産アリアのグレード展開
このように見ると、機能と価格のバランスで最も割安なのは、2WDで66kWhのB6リミテッド(660万円)だ。これを4WD化して、リチウムイオン電池も91kWhに拡大すると、価格が約130万円上乗せされてB9e-4ORCEリミテッド(790万200円)になる。
それでもアリアのハイパワーな電気自動車の魅力を重視するユーザーは、価格差が約130万円であれば、B9e-4ORCEリミテッドがむしろ買い得と受け取るだろう。
既存の電気自動車の登録台数を見ると、堅調に売れているのは実質的にリーフのみだ。2020年度(2020年4月から2021年3月)には、コロナ禍の中でも1か月平均で約800台を登録した。マツダMX-30・EVモデルは、2021年1月に発売され、その後の登録台数は今のところ1か月平均で50台程度に留まる。
日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住み、電気自動車の充電設備を設置しにくい。販売店や高速道路のサービスエリアにおける充電は、基本的に急速充電器を使うから、電池の寿命や耐久性を考えると自宅の普通充電も併用したい。そうなると集合住宅では電気自動車が敬遠される。
一方、自宅に充電設備を設置しやすい一戸建ての多い地域では、公共交通機関を利用しにくい事情がある。1世帯で複数の車両を所有するから、税額や車両価格の安い軽自動車が普及している。
そうなるとアリアのような高価格車は、マンションに住んで1世帯に1台の割合でクルマを所有するユーザーに人気が高く、電気自動車とは親和性が低い。したがって普及も進まない。
ところがアリアの開発者は次のように述べた。「アリアでは、従来の電気自動車に比べると、リチウムイオン電池の温度管理を入念に行う。そのために都市部のお客様が販売店の急速充電器を頻繁に利用されても、従来の電気自動車に比べて劣化が生じにくい」とコメント。
■「EVは売れない」というジンクスを打ち破ることができるか?
アリアB6(2WD)は66kWhのリチウムイオン電池を採用。最高出力は160kW/30.5kgm、WLTCモード航続距離は最大で約450km
駆動用電池が進化して、急速充電器の使用に向けた耐久性も向上してきた。このような性能の向上とそのアピールも、アリアの売れ行きを左右する。
ほかの電気自動車の動向を見ると、レクサスUX300eバージョンLの価格が635万円だ。アリアB6リミテッドに価格が近く、動力性能も最高出力が150kW(203馬力)、最大トルクは300Nm(30.5kgm)だから同程度になる。
しかしリチウムイオン電池の容量は、レクサスUX300eは54.4kWhに留まり、1回の充電で走行可能な距離もWLTCモードで367kmだ。アリアB6リミテッドは66kWhで450kmを走れるから、レクサスUX300eの性能を上まわる。さらにアリアでは、プロパイロット2.0も標準装着され、装備も充実するから一層割安だ。
今後はトヨタから電気自動車のbZ4X、スバルブランドではソルテラが登場する。いずれもリチウムイオン電池を搭載しやすく、流行にも沿ったSUVスタイルだから、アリアのライバル車になるだろう。
この厳しさを増す電気自動車の競争も視野に入れ、アリアは機能を充実させて価格は割安に抑え、多彩なグレードをそろえた。高価格車だからリーフのような売れ行きは望めないが、ほかの電気自動車に比べれば堅調に売れるのではないだろうか。 前述の急速充電器への対応も可能になれば、「電気自動車は売れない」というジンクスに終止符を打てるかもしれない。
日産アリア 主要諸元
【画像ギャラリー】2021年6月4日予約開始! ついに明かされた新型アリアの全貌
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
10トン超えのバッテリーを搭載して航続距離500km……ってホントにエコ? 大型トラックはBEVよりもFCVのほうが最適解
高速道路を「トラック横並び完全封鎖」で渋滞…むかつく風景が日常茶飯事な「意外な理由」とは? 逆に嫌がらせしたら「免許返納」レベル! 思わぬ「うっかり交通違反」にも注意
「これが売れなかったら四輪撤退…」→超ロングセラーに! 世界の「シビック」を生んだ“妙な納得感のある理論”とは
日産復活のカギはやっぱり[新型マーチ]!? ヤリスやフィットを超えるコンパクトカー誕生なるか!? 2025年度に発売確定!
インテグラなのにおっさんセダン! マークXなのにFF!! 名前は「名車」中身は「迷車」なクルマ4選
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
新型アリアは売れそうか?
答え:大して売れないでしょう。