「モータースポーツって、なんだか縁遠い存在」そう思っている人も多いのではないでしょうか? たとえ興味があっても、「レースに参加する」となると、さらにハードルが上がりますよね。
そんな方でも、より気軽に楽しく参加できるワンメイクレースがスタートしました。その名も「ヤリスカップ」。レースの間口の広さも手伝って、2021年6月5日、初戦の富士スピードウェイラウンドでは、なんと91台もの車両がエントリーしました。
今回は、そのなかでも注目の選手を追いかけることにしました。その選手の名前は、織戸茉彩(おりどまあや)さん。実は、茉彩さんは、レーシングドライバーである織戸学選手の娘さんです。
「織戸選手の娘さんなら、もしかして小さい頃からカートとかをやっていたとか?」と思う方もいるかもしれませんが、茉彩さんは海外の高校へ通っていたので、免許を取ったのもつい最近。レースに至っては「ヤリスカップ」がゼロからのスタートです。
織戸さんがヤリスカップを知り、茉彩さんに「こんなレースあるけど、出てみる?」と聞いてみたところ、茉彩さんは「やってみたい!」とふたつ返事で答えたところから、このチャレンジは始まりました。
文&イラスト/伊藤梓
写真/佐藤正勝
【画像ギャラリー】全41枚! モータースポーツデビューを果たした織戸茉彩さんのヤリスカップカーを見る
まずはヤリスカップを知る
ヤリスカップ専用のヤリスカップカー、織戸茉彩さんのマシンだ
ヤリスカップカーのコクピット。茉彩さんのマシンは6速MT
BRIDEのフルバケットシート、ロールケージや6点式シートベルトが装着されている
本題に入る前にヤリスカップとは何か説明していきましょう。ヤリスカップとは、ヤリスカップ専用の「ヤリスカップカー」を使用したワンメイクレース。出場するのに必要なのは、ヤリスカップカーと国内A級ライセンス、そしてレーシングギアだけ。大きなワンメイクレースのなかでも、気軽に始められるレースです。
特に、ヤリスカップカーの価格が思いのほか安い! ロールケージ、専用サスペンション、6点式シートベルトなど、レースに必要な装備が最初から付いている関わらず、6MTモデルが217万1100円、CVTモデルが238万100円。
そして、追加で揃えるのは、シートとタイヤ、ホイールだけです。さらに、ナンバーも付いているので、日々の移動や買い物でも使えるところも◎。
個人的にいいなと思ったのは、CVTモデルも用意されていること。レース初心者で「ヒール&トゥが苦手」「シフトチェンジに気を取られて、ハンドルやペダル操作がおろそかになる」「AT免許しか持っていない」という人でも、CVTなら安心。
「CVTって遅いんじゃないの?」と思われがちですが、カップカーのCVT制御は、サーキット走行に合わせた専用セッティングになっています。シフト操作が苦手な方はもちろん、自分のドライビングを見直すためにも、あえてCVTを選ぶのも面白いかもしれませんね。(ちなみに茉彩さんは6MT)
ヤリスカップに参戦するきっかけは?
予選前、ピットにて織戸さんファミリーを撮影
そして、いよいよレース当日。富士スピードウェイに到着すると、たくさんのヤリスカップカーが集まっていました。91台という物凄い台数のため、ひとつのピットに約5台のヤリスがぎゅうぎゅうに押し込まれています。
そのなかでも、織戸茉彩さんの559号車のまわりには、たくさんの取材陣や関係者が詰めかけていました。茉彩さんのお父さんであり、コーチでもある織戸学さんも、にこやかにみなさんと会話しています。
さっそく、織戸さんにお話を伺ってみると、普段のレーシングドライバーとしての厳しい表情から一転、柔らかい口調で受け答えしてくれました。
親父である織戸学選手はどんなことを茉彩さんに教えているのだろうか?
「ヤリスカップが始まると聞いた時、茉彩が出るのはどうだろうと思ったんです。本人も含めて家族会議をしたんですが、茉彩が『やりたい!』と積極的だったので、チャレンジしてみることになりました。
僕の経営している『130R YOKOHAMA』のシミュレーターで練習はしたのですが、ヤリスカップカーでの本格的な練習は、ヤリスカップ参加者向けの合同練習会が初めてでしたね。実は、その時に茉彩がクラッシュしてしまったんです。それまでは、タイムもぐんぐん良くなって、調子が良かったんですけどね。そのクラッシュがネックになっているようなので、今回はそれを克服してしっかり走り切って欲しいです」。
予選開始10分前になると、これまで和気藹々としていた雰囲気から、途端にピリッとした空気に。茉彩さんは、応援に来ていたお母さんから飲み物を受け取って、緊張も一緒に飲み込むように、ごくりと一口。女性の筆者から見ても、茉彩さんは小柄な女性です。しかし、ヘルメットからは、お父さん譲りの意思の強そうな目が覗いています。
予選結果はいかに?
予選前、緊張する茉彩さんに話しかける織戸学さん
ヤリスカップカーに乗り込んだ茉彩さんに、織戸さんは「タイムは気にするな」と声をかけて、軽く肩をポンと叩きました。
いよいよ予選スタートです! 予選前に軽く雨が降ったため、サーキットはところどころ濡れている様子。織戸さんも「このコンディションはプロでも難しいな……」と呟くほど、タイムを出すには厳しい路面のようです。練習会で茉彩さんがクラッシュしたというコカ・コーラコーナー付近で予選の行方を見守ることにしました。
予選A組、B組ともに1レースに40台を超えるほどの混雑ぶり
予選はA組、B組で分かれているものの、どちらも40台超えの混雑ぶり。茉彩さんのまわりにも他のドライバーが走っているのが見えます。
そのなかの何台かが、コカ・コーラコーナーの濡れた縁石を踏んでスピン! 茉彩さんはそれに巻き込まれることなく、自分のラインを守って周回を重ねます。滑らないように慎重に走っていることもあってか、タイムはなかなか上がらなかったものの、予選は無事に走り終えることができました。
なんとかスピンやクラッシュせずに帰還した茉彩さんのヤリス
この写真からも緊張感が伝わってくる……
予選結果は、A組では44人中43番手。91台がエントリーしているため、決勝に進出できるのは、約半数のドライバーのみ。今回は、残念ながら決勝には上がれませんでしたが、ピットへと帰ってきた茉彩さんは晴れやかな表情をしていました。
予選を終えてほっとひと安心の茉彩さん
「緊張した~!」
話を聞いてみると、「まわりでいろんなクルマがスピンしていて、それを見て少し怖くなっちゃいました。でも、まずは走り切れて良かったです。決勝には進めませんでしたが、これから模擬レースがあるので、しっかり頑張りたいです」とのこと。
有名なドライバーの息子さんや娘さんとなると、レースの英才教育を受けていて、自信たっぷりで……という印象がありますが、茉彩さんは本当にレースを始めたての普通の女の子なんだと感じました。緊張している時、ホッとした時、家族と話している時、どんなシーンでも自分を飾ることなく自然な表情を見せています。
予選落ちしたクルマでも模擬レース=コンソレーションレースが行われる
コンソレーションレース前にて応援してくれているみなさんと記念撮影
ヤリスカップでは、予選落ちをしたドライバーにも「コンソレーションレース」が用意されています。コンソレーションレースとは、予選落ちのドライバーが4周のスプリントレースを行う、いわゆる模擬レース。この富士ラウンドでは、32台の車両がコンソレーションレースに参加しました。これだけ台数となると、普通のレースと変わらない雰囲気です。
グリッドに並んだクルマのなかで、茉彩さんの車両の前にはたくさんの人だかりが。今回、織戸さんの関係者だけではなく、お母さんやご兄弟、そして茉彩さんのお友達も応援に来ていました。お友達もサーキット自体が初めてだそうで、「私たちの方が緊張しているかも……」と心配そうに、そしてあたたかく見守っています。
闘志をみせる鋭い目つきはお父さん譲り!?
コンソレーションレースは、決勝と同じくスタンディングスタート。茉彩さんは、31番グリッドからのスタートですが、どうやら最後尾のほうからシグナルが上手く見えなかった様子。
最初は出遅れたものの、必死に前のドライバーについて行きます。4周のレースはあっという間でしたが、上位陣は激しいバトルをするなど、見応えのある順位争いも繰り広げられていました。茉彩さんは、最後尾でフィニッシュし、無事に初戦を終えることができました。
最高速度173.355km/h、ベストラップは2分27秒255。ちなみに同組コンソレーションレーストップのベストラップは2分19秒884だった
レース後、織戸学選手からは「もうちょっと2~4周目を攻めても良かったんじゃないかな」
ヤリスカップ初戦を終えて
茉彩さんがピットへ帰ってくると、みんなが拍手で迎え入れました。織戸さんもホッとした様子。
「無事に終われたことが何よりです。想像以上よりも遅かったけどね(笑)。茉彩もレースを経験できたので、これから楽しみながらもっとレースの新しい景色を見て欲しいですね。僕たちも一緒にそれを楽しみたいと思います」。
結果は最後尾でしたが、これからの伸びしろはMAXということで期待してます!
そんな話をしていると、茉彩さんも登場。予選と違ってレースになるとまた雰囲気は違ったのでは? と聞いてみると、「後方からのスタートだったので、誰も後ろから追ってこないし、自分としては気持ちよく走れました(笑)。次戦ではもっとレースできたらいいなと思います」。
すると織戸さんが、「今回のレースの反省点としては、もうちょっと2~4周目を攻めても良かったんじゃないかな」「だね、もうちょっと行けた」「前のクルマ抜いてやる!とか思わなかったの?」「抜きたいって気持ちはもってやってたんだけど……どんどん離れちゃった(笑)」。しばらく微笑ましいやりとりは続いていました。
「次戦では悔しい気持ちが湧いてくるレースがしたいです!」
茉彩さんに、今回のレースでの気づきを聞いてみると「レースに向けての準備が一番大変なんだなと思いました。練習したり、クルマに合った走りをもっと勉強してくればよかったなって。勉強不足でしたね。今日はレースを楽しんだだけで終わってしまったので、次戦では悔しい気持ちが湧いてくるようなレースがしたいです!」と前向きに答えてくれました。
駆けつけてくれた友達と茉彩さん
コンソレーションレース前のグリッドにて織戸さんファミリー
織戸さんも「これからも家族みんなで茉彩のことをサポートしたいと思っています。まずはエンジョイしてもらうことが一番かな。僕も30年以上レースをやらせてもらっているので、次のステップとして、レースを楽しむ場を作ることが大切だと思っています。こういった取り組みを率先してやることで『自分も参戦してみようかな』とか『家族で参加して楽しみたい』と思ってくれる人たちが増えたら嬉しいですね」。
織戸さんも、今回のヤリスカップのように家族全員で週末を楽しむことが少なくなっていたのだそう。「家族旅行やキャンプのような感覚でレースを楽しむのもありかなぁ」と笑う織戸さん。
初心者ドライバーにも、ベテランドライバーにも、そしてそれを応援に来る人たちにも、新しいレースの世界を見せてくれる「ヤリスカップ」。興味のある方は、ぜひこの一員になってみてはいかがでしょうか?
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みんなのコメント
転んで終わりにしました…
でも、楽しかったな。