「ジムニスト」とよばれる熱狂的なファンを生み出すほど、世界的に有名な軽本格クロカン、スズキ「ジムニー」。堅牢で耐久性の高いラダーフレームやリジッドサス、トランスファー付きパートタイム式4WDといった本格オフローダーとしてのメカニズムが与えられているほか、現代的な安全機能もきちんと装備されており、乗用車としての不満も少なく、税込165万4000円からと価格も安い。こんなクルマ、世界中どこを探してもないのではないだろうか。
ただ、かつては、三菱「パジェロミニ」というライバルも存在した。ジムニーがこれだけ人気であることを考えれば、パジェロミニも復活すれば人気モデルとなる可能性はあるはずだ。ぜひとも日産+三菱の力で「新型パジェロミニ」を実現してほしいと思うが、はたして可能性はあるのか、考えてみよう。
ぜひ日産+三菱の力で「新型パジェロミニ」を実現してほしいのだが
文:吉川賢一、立花義人/写真:MITSUBISHI、SUZUKI
パジェロの世界観を受け継ぎつつ、サイズを活かした独特の個性が魅力
「乗用車感覚あふれる本格4WD」というコンセプトで大ヒットした本家「パジェロ」の魅力を、軽自動車サイズに凝縮するという分かりやすいコンセプトで1994年に登場した、初代パジェロミニ。そのコンセプト通り、パジェロミニには、パジェロのデザインテイストや技術が、小さなボディにギュっと凝縮されていた。
そのメカニズムは本格的で、大型フレームをビルトインしたモノコック構造の高剛性ボディを採用したことで、40km/h前面衝突時の乗員障害値規制をクリアし、乗用車としての基本的な性能もきちんと達成。エンジンは排気量660ccながら、1気筒あたり5バルブを採用する4気筒DOHC20バルブインタークーラーターボを搭載(NAは1気筒あたり4バルブのSOHC)し、4WDモデルには、走行中に2WD/4WDの切り替えが可能なイージーセレクト4WDを採用。サスペンションはフロントにマクファーソン・ストラット、リアは5リンク式コイルスプリングを採用し、オフロードでの高い走破性もしっかりと確保していた。
インテリアでも、コックピット周辺に、電子方位計や高度計、外気温計、時計を組み合わせたマルチメーターが鎮座しており、パジェロの雰囲気をしっかりと取り入れていた。内装のクリーンなイメージや乗用車感覚が強いところもジムニーとは異なるテイストで、インテリアの質感を大切にしたい人にとって魅力的なモデルだった。
1998年10月に登場した2代目は、軽自動車規格が変更されたことでさらにパジェロに近づき、パジェロミニとしての可能性を示してくれていた。2012年6月に生産終了となった後も根強いファンが多く、現在に至るまで、長年復活が期待されてきた、三菱の伝説的なモデルだ。
本家のクロカンSUV「パジェロ」も2021年7月に生産終了となってしまっているが、3年が経ったいまも、中古車市場では高値で販売されていることを考えれば、「パジェロ」という名称を使うチャンスはまだある。名車デリカの名を継いだデリカミニがひと山当たったように、パジェロミニも現代技術で蘇らせたら、人気モデルとなる可能性は十分にあると思われる。
1994年発売の初代パジェロミニ。デザインは、1991年に登場した2代目パジェロのデザインを取り入れ、丸目のヘッドライトやグリルガード風の意匠、大きなフォグランプなどRVテイストが満載
2021年7月に生産終了となった4代目パジェロ。最後の特別仕様車となった「ファイナルエディション」は、いまも400万円超えの価格で中古車が販売されている
トライトンを凝縮したデザインに丸目を採用した新型BEV「パジェロミニ」はどうか?
デリカミニは、2023年5月にマイチェンを受けたeKスペースの派生モデルだ。特徴的なエクステリアデザインを採用し、4WDモデルでは、車高を上げてチューニングしたダンパーを組み合わせた専用の足回りを採用することで、名車「デリカ」の名に恥じないモデルに仕上げた。新パジェロミニも、このお作法に乗って新型車となりたいところだが、クロカン走行に耐えうる強い車体と、ストロークのあるサスペンションを備えた軽自動車用のシャシーは軽自動車用の現時点ない。
そのため、新パジェロミニは、いっそのこと、サクラ/eKクロスEVをベースとしたバッテリーEVにするのがいいのではないかと筆者は思う。バッテリーEVは、万が一の事故の際にバッテリーを守るため、一般的なガソリン軽とは比べ物にならないほどにボディが強靭だ。この強靭なボディに、長いストロークがとれるサスペンションと大径タイヤを装着した、新型の軽EVプラットフォームを用意するのがてっとり早い。
バッテリーEVはまた、動き始めに強いトルクを発生できる電気モーターのおかげで、低ミュー路での発進や、クロカン走行にも適している。三菱得意の緻密な4輪駆動制御も活かせるはずだ。強いて課題を挙げるならば、150km程度になるであろう航続距離だが、趣味色が濃いクロカン系バッテリーEVとしてならば、受け入れられるのではないだろうか。
もちろんエクステリアデザインも重要だ。1990年代に大活躍をしたパジェロを知っているオジサン世代にとっては、パジェロエボリューション(1997年~)のようなオールドスタイルだと嬉しいところだが、もはや時代遅れだろう。ここは三菱自動車の現行モデルとの「絆」をもたせるため、2024年2月に誕生した新型ピックアップのトライトンぎゅっと凝縮したようなデザインがいいかもしれない。ただしヘッドライトは、デリカミニと同じく「まん丸タイプ」にして欲しい。これでデリカミニとも「絆」をもたせることができる。
トライトンはスタイリッシュで厳つさもあり、なかなかカッコいい。海外では、トライトンの荷台付き仕様を「パジェロスポーツ」と名乗ってきた経緯もあるし、パジェロとの「絆」もどうにか説明がつく。
新型パジェロミニのデザインは、1990年代を知っているオジサン世代にとっては、パジェロエボリューション(1997年~)のようなオールドスタイルだと嬉しい
2024年2月に誕生した新型ピックアップのトライトン。スタイリッシュで厳ついデザインをそのままに、ギュッと凝縮した姿を「新パジェロミニ」とするのはどうだろうか
ぜひ日産三菱の力で実現を!!
この「クロカン軽バッテリーEV」というジャンルは、強敵ジムニーがまだ手を付けていないジャンルであり、実現すれば日産三菱ならではのモデルとなることができる。日産としても、かつて「KIX」としてパジェロミニをOEM供給受けていたように、今回も(いまは「KICKS」があることから、名前は変えなければややこしくなるが)OEM供給を受けることができれば、メリットがある。
「パジェロあってのパジェロミニ」という意義は少なからずあったであろうから、本家パジェロがいないいまは、そのあたりを説得するストーリーは必要だが、そのパジェロにも復活のウワサはある。ぜひ「親子」で復活してくれることを期待したい!!
【画像ギャラリー】唯一無二の軽本格クロカン スズキ「ジムニー」(12枚)
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