1980年代には日本メーカーから数多くのコンパクト・セダンが登場した。小川フミオが気になる5台をピックアップする。
クルマって大きくなりすぎたと感じているひと、いませんか。フツウに使うクルマでも、たとえば、ステップ跳ね上げ式のコインパーキングではホイールこすらないかヒヤヒヤ。狭い道では対向車とすれ違うときに、気をつかう。1980年代を振り返ってみると、クルマがちょうどいいぐらいにコンパクトだった。これこそ、いま私たちに必要なのかもしれない。
たとえば、トヨタが1987年に発売した6代目「カローラ」。全長は4.2m以下で、全幅は1.7m以下。当時は、車幅が1701mm以上になると「3ナンバー」となって税金も高かった。1989年に自動車税の内容が変更されて、外寸でなく、エンジン排気量と車重が課税の対象となったことと、いわゆるバブル経済期で大きなクルマが売れる傾向を示したため、そこからクルマの車体は大型化していったのである。
いまレクサス「LS」の車体全幅は1900mm。それに対して、1979年に出た6代目トヨタ「クラウン」は、1715mmの車体幅を採用して話題になった。それでも、フォルクスワーゲンの現行「ゴルフ」の1800mmより、当時のクラウンの上級車種のほうがほっそりしていたのである。いっぽうで、クラウンには1690mmサイズのボディも残されていた。1987年の8代目になってもクラウンには1695mmのボディがあったのは、喜ばしい事実だ。
ボディの大型化が進んだ結果、最近ではとくに欧米メーカーのSUVが住宅の駐車場に収まらないというひとが増えている。せっかく金銭的余裕はあるのに、車庫証明がとれないので、購入をあきらめる。そういうひとたちが、少しコンパクトな車体を持つモデルに流れている。ひょっとしたら、日本のマーケット全体が、コンパクト化志向へと向かうかもしれない。
1980年代のセダンの使い勝手などを思い起こすと、私には、コンパクト化に向かってくれたら、好ましい傾向だ。運転支援システムが”進化”していけば、ボディサイズに気をつかわず車載AIが狭い道での取り扱いなど手助けしてくれるかもしれない(BMWに装備されている「リバースコントロール」のように)。でもやっぱり、ここで掲げたクルマを見ていると、これで充分、と思わないだろうか。
(1)トヨタ・カローラ(6代目)
1987年に発表されたトヨタ「カローラ」6代目を見た当時、”大きくなったなあ”と驚いたものだ。スタイリングが「カムリ」(1986年)や、6代目「マークII」(1988年)と共通のテーマでまとめられていたこともあり、カローラはもはや大衆車ではない、と思った。いや、大衆車の概念がこのとき変わっていたのかもしれない。
それでもボディは、全長4195mm、全幅1655mmで、いまのカローラが全幅1745mmなので、10cmちかくほっそりしていたのだ。当時このカローラに乗って、広々としているなあと思ったので、前輪駆動方式を活かした車内寸法のとりかたも上手だっただろうし、サイズ的には充分だったといえる。
1.6リッターエンジンは120psを発生。足まわりもしっかりしていて、走行安定性も高い。バブル経済下、フォルクスワーゲンやプジョーなど欧州車も奮闘する日本のマーケットで、トヨタのクルマづくりの底力を感じさせてくれるクルマだった。
ひとつだけ大型化の背景に触れておくと、衝突安全基準の厳格化の影響が大きい。どんどん厳しくなる基準値をクリアするには、車体の構造変更が不可欠で、シャシーやボディに補強を入れたり、エアバッグを収めたり、歩行者保護のためにフロントノーズの形状を変えたりする必要があるのだ。
小さなクルマには分が悪い。乗員だけでなく歩行者の立場からもば歓迎すべきことなのだが。
(2)日産・オースター(3代目)
「オースター」は「サニー」と「ブルーバード」のあいだに位置し、日産セダンのラインナップを構成すべく、1977年に「バイオレット」の姉妹車として初代が誕生した。
1981年に前輪駆動化するとともに「バイオレット・オースター」からたんなるオースターへと車名を変更。このときは、さまざまな車型を展開することで、保守層だけでなく、マツダ「ファミリア」(1980年)や三菱「ミラージュ」(1978年)に興味をもつ層も取り込もうとした。
スタイリングの方向性がはっきり決まったのが、1985年の3代目だ。前輪駆動の7代目「ブルーバード」(U11型)とプラットフォームを共用していることもあってか、太いセンターピラーが強調され、剛性感を感じさせるスタイルが特徴だ。
英国でも生産され、欧州大陸で販売されたこともあり、欧州的な雰囲気をもっていた。
全長4515mmで全幅1690mmという外寸の車体に、160psの1.8リッターターボ。バケットシートもそなわり、走りのよさが強調されていた。ボディスタイルは当初4ドアのノッチバックセダン(ふつうの独立したトランクをもつ車型)のみで、1986年にハッチゲートを持つファストバックが追加された。英国やフランスやドイツなどで好まれるボディタイプである。個人的には、エアロパーツを装着した「セダンユーロフォルマ」(85年)にいまも惹かれる。
(3)ホンダ・バラード(初代)
2代目ホンダ「シビック」(1979年)のノッチバックセダン版として1980年に発表されたのが「バラード」。1.3リッターおよび1.5リッターエンジンを載せた前輪駆動車で、ボディの外寸は全長4095mm、全幅1600mmとかなりコンパクト。ホイールベースも2320mmと、いまの軽自動車(ホンダN-ONEが2520mm)より短かった。
昨今のセダンは、クーペライクと呼ばれるように、トランクの存在感を消したスタイルがトレンドでありつつも、やはり後席も使いたいひとを重視している。初代バラードは、当時の日本で”おとな”が好んだノッチバックセダンのスタイルを踏襲しているものの、さすがに後席は狭すぎた。いまのようにクーペライクなスタイルだったら、このサイズで4ドアというのも、おもしろいコンセプトになりえたかもしれない。
ホンダは英国の企業ブリティッシュレイランド(ミニやローバーなどを傘下にもつ)と、1979年に業務提携契約を結んでいた。バラードはその一環として、ホンダが開発してBLに提供したモデルである。英国人にとって、さすがに後席は窮屈だったろうと思ったものだ。でもミニに乗っていた国民である。イタリア人はチンクエチェントに5人で乗っていた。当時は小さいクルマが庶民の足だったのだ。
バラードは発表翌年の1981年にさっそくフェイスリフトを受けている。クロームの使用が大きく減らされ、フロントグリルとヘッドランプとバンパーの形状が変わり、シビックぽさが払拭された。このときから、グリル中央にホンダのロゴであるHマークがつくように。でも個人的には、初期のグリルのほうが品があって好みである。
(4)マツダ・ファミリアセダン(7代目)
ファミリアが前輪駆動化されたのが1980年。1989年に登場したのは、前輪駆動ファミリアの3代目だ。最大の特徴は車型のバリエーションが増えたこと。
その前の型(1985年)にもカブリオレという魅力的なモデルがあったものの、ここでは、2ドアハッチバック、セダン、それに4ドアハッチのボディに格納式ヘッドランプをそなえたアスティナの3車型となった。
セダンは4250mmの全長と1675mmの全幅を持つボディを、2500mmのホイールベースをもつシャシーに載せていた。サイズはコンパクトながら、サイドウィンドウ下のボディパネルを外側にふくらませる、いわゆるショルダー部分をもうけることで力強さを強調したボディで、けっこうな存在感を持っていた。
トランクはハイデッキといって、当時の欧州車に見られた厚みを強調したスタイルで、真横からみると、くさび型。エンジンは1.6リッターDOHCもあったうえ、1989年にはフルタイム4WDモデルも追加。欧州的な高速性能が強調されたのも印象的だ。
当時からマツダ車は内装のクオリティ感にこだわっていた。このファミリアでも、ブラックを基調にした合成樹脂を用い、ドイツ車と競合するぐらいの質感を作り出していたのも、おおきな特徴といえる。
(5)スバル・レオーネ(3代目)
もし、かりに自動車メーカーにも人間とおなじように成長の段階があるとしたら、富士重工業(現SUBARU)がおとなになる直前に発表したモデルが、1984年の3代目「レオーネ」といえるのではないだろうか。
水平対向エンジンのバリエーションを増やしたことをはじめ、フルタイム4WDシステムの採用、電子制御エアサスペンションの搭載、GTモデルの設定。さらに、4ドアセダンやスポーティなルックスの2ドアクーペに加えて、先代で登場したステーションワゴンが(さらに質感を上げて)ラインナップされた。これらは、1989年の「レガシィ」へとつながったのだ。
ボディの厚みを強調してグラマラスだったレガシィと対照的に、レオーネはいいかんじで、スマートだ。全長4370mmで全幅1660mmのボディは、雪道をはじめ悪路での取りまわし性も重要視していた(はずの)スバルのクルマづくりのコンセプトに忠実、という印象で、そこも好感の持てるモデルである。
セダンとしてみたばあい、粗削りなところもあり、いわゆる快適性ではトヨタ車や日産車におよばなかった。とはいえ、こだわりが詰まったセダンとして、ファンには、BMW、ボルボ、サーブといった、独自のクルマづくりを追究してきたメーカーとの共通点を感じさせて、好ましかった。いまもスバルは、そこをないがしろにしていないのが立派だ。
文・小川フミオ
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
一般車両侵入でSS12中止のラリージャパン、主催者に約800万円の罰金! 執行猶予付き1600万円の追加罰金も
緊急避難なら駐車違反が罰せられないなら「腹痛で路駐してトイレに駆け込んだ」ってあり? 違反が免除されるケースとは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント