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クラスを超越した完成度──フォルクスワーゲンの新型コンパクトSUV、T-クロスに試乗

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クラスを超越した完成度──フォルクスワーゲンの新型コンパクトSUV、T-クロスに試乗

基本骨格はポロと共通。そんな先入観があったから、スペインはマヨルカ島にて新型車、フォルクスワーゲンT-クロスと初めて対面した時には、想像以上に立派な見た目に驚いてしまった。

サイズは全長4108mm×全幅1782mm×全高1584mmと、確かにポロと較べると全方位に大きいとは言え競合車、たとえば日本車で言えばホンダ ヴェゼルやマツダCX-3などに較べればコンパクトに収められている。しかしながら見た目にそう感じさせないのは、デザインの力だろう。

スタイル良し! 走り良し! 実用性良し! 期待大なSUV登場だ──フォルクスワーゲン T-CROSS試乗記

ヘッドライトユニットと一体になったラジエターグリルは分不相応なほどに立派で、厚みのあるバンパーと相まってフロントマスクは非常に堂々としているし、サイドビューを見ればフェンダーアーチやサイドシルが樹脂製のクラッディングパネルで覆われていて、ワイルドな印象だ。左右が連結したテールランプ、アンダーガード風のデザインとされた下回りによってリアビューも骨太感は上々。まず外観からしてこのT-クロス、サイズ以上の存在感を発揮しているのである。

実用性も走りも想像以上

室内に乗り込むと、今度はサイズ以上の広さで驚かせる。着座位置を高く取ったフロントシートは背筋を伸ばした気持ち良い姿勢が取れる上に見晴らしが良いし、リアシートはそれより15cmも高い位置にあり、また14cmの前後スライドも備えるから、更にリラックスできる。

おまけに荷室もポロより広い385~455リットルを確保している。リアシートの背もたれを倒せば容量は1281リットルにまで広がり、28インチまでのロードバイクなら前後輪を外さずに搭載できるというから大したもの。オプションの前倒し可能な助手席シートバックを選べば長尺物も余裕で飲み込むといった具合で、まさにサイズからは想像できない広さ、ユーティリティ性が実現されているのである。

嬉しいことに、その走りも質高く、そして寛げるものに仕上がっている。日本仕様として上陸する可能性の高い、最高出力115psの直列3気筒1リッターターボエンジン搭載車で走り出すと、低回転域から厚いトルクと7速DSGの歯切れの良いレスポンスのおかげで、実に小気味良く速度を高めていくのに、まず心躍った。3名乗車でもまったく不満、不足を感じさせなかったのだから、動力性能は期待以上と言っていい。

しかも室内へのエンジン音の侵入が非常に小さく、高回転域まで引っ張っても騒々しくならないのは嬉しいところ。開発陣によれば、フォルクスワーゲンでは今後、ライバルに対する独自のバリューの追求として、静粛性の向上に大いに力を入れていくということで、T-クロスでも騒音対策は相当入念に行われたということだ。

静かなだけではない。ライドコンフォートも抜群だ。サスペンションはポロよりも地上高がある分、ストローク感が豊かで、路面のうねりや凸凹をしなやかにいなしていく。けれど決して腰砕けなわけではなく、四輪の接地感は常に失われることはないし、ステアリングフィールも正確さを保ち続けるから、ワインディングロードだって存分に愉しめてしまうのだ。実力は、相当に高い。

正直に言うと、事前にはこのT-クロス、少し背の高い、室内容積の増えたポロくらいなものかなと勝手に思い込んでいた。しかしながら実際に試してみると、デザインもユーテリティ性も、そして走りのフィーリングも、それとはまったく異なるものに仕上がっていて、嬉しい驚きを得ることとなった。

しかも、歩行者検知機能付きの衝突回避・支援システムや、車線逸脱警告などを全車に標準装備として、アダプティブ・クルーズ・コントロールや駐車アシスト機能もオプションで選べるなど、最新の運転支援システムも充実している。唯一、ヨーロッパに於けるこのセグメントの他ブランド車と同じく、4WDの設定がないのが惜しいところである。

このT-クロス、もちろん価格次第ではあるが、その充実した内容は、ポロの市場を喰ってしまう可能性も十分に感じさせる。いや、300万円を切る値付けとなれば、冒頭に挙げた日本のライバル達だって射程圏内に入ってくるだろう。2019年末から2020年初頭辺りを目指しているという日本導入が、とても楽しみな1台の登場だ。

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