現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 速いだけがターボじゃない 乗り味も燃費も大改善? 令和のターボ大解剖

ここから本文です

速いだけがターボじゃない 乗り味も燃費も大改善? 令和のターボ大解剖

掲載 58
速いだけがターボじゃない 乗り味も燃費も大改善? 令和のターボ大解剖

 かつてターボといえばハイパフォーマンスのためのシステムであった。特に日本では2リッターのエンジンにターボを装着してどこまでパワーを発揮できるかが話題になったものだ。その中でランエボやインプレッサが300psを超える高出力を得るようになった。

 しかしカーボンニュートラルの時代となり、ターボは必ずしもスポーツモデルの専売特許ではなくなっている。ダウンサイジングターボが登場し、少ない排気量のエンジンで燃費を稼ぎつつ、ターボで足りないパフォーマンスを補うようになった。

速いだけがターボじゃない 乗り味も燃費も大改善? 令和のターボ大解剖

 そしてシリーズハイブリッドを採用するエクストレイルでは、発電用のエンジンにターボが装着されるまでになったのである。今回はそんなターボエンジンの最新技術を斎藤聡氏に解説してもらった。

文/斎藤 聡、写真/ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=evannovostro@AdobeStock)

■日本と海外のターボの歴史

ホンダ ステップワゴンはダウンサイジングターボ/ミドルサイジングターボの代表だ

 1990年代は、日本車のターボ百花繚乱時代と言えるもので、ターボを積極的に使ってパワーアップが図られていました。

 2000年代初頭、日本では排ガス規制が強化され、国産メーカーはターボをやめNAエンジンやハイブリッドに力を入れ始めます。ちょうど時期を同じくして欧州では直噴ターボが脚光を浴び、耐ノッキング性能の高さ、ターボレスポンスの良さなどが注目され、積極的にターボが開発されるようになりました。

 さらに、環境問題が顕在化してくると、大きな排気量のパフォーマンスを小さなエンジンで実現するダウンサイジングターボが注目を集め開発に取り掛かります。

 この背景には高速道路を使い欧州域内を移動するのに適した大排気量エンジンに代わるエンジンが求められていたことが理由に挙げられます。

 開発がさらに進むと、ターボを必要最小限までコンパクトにしてターボレスポンスをよくすることで、まるでNAエンジンのような運転感覚のターボも登場するようになります。

 ダウンサイジングの概念がひと通り浸透すると、ダウンサイジングのデメリットも取りざたされるようになりました。

 ミドルサイジング……つまりそこそこの重さのあるクルマを効率よく走らせるには、そのクルマに見合ったある程度の排気量が必要だ、という考え方を主張するエンジニアも出てきて、現在は2つの考え方が拮抗した状態です。

 直噴ターボ→ダウンサイジングに出遅れた日本では、ダウンサイジングとミドルサイジングがちょうどいい感じで混ざり合った状態です。

■現在の日本のターボ車の味付け

日産 エクストレイルは「スポーツターボ」、「ダウンサイジング/ミドルサイジングターボ」以外の第3のターボ「発電用ターボ」を採用

 現在日本で売られているターボ車(軽自動車を除く)はどんなふうに味付けされているのか解説してみたいと思います。

 うんと大雑把かつ強引に分類すると、現在国産車のターボはパワー重視の「スポーツターボ」、そして現在主流の「ダウンサイジング及びミドルサイジングターボ」に大別できると思います。さらに、もしかしたら今後増えてくる可能性がある「発電用ターボ」というのも登場しました。

 この発電用ターボは日産エクストレイルe-Powerに採用されている発電用エンジンで、VCターボと呼ばれるターボエンジンです。VCターボの詳しいシステムは省きますが、圧縮比を8:1~14:1まで任意に変化させることができます。

 エンジンは圧縮比の高いほうが熱効率がいいので、負荷の少ない状況では圧縮比を高くして発電しながら燃費を稼ぎ、パワーが必要な時≒たくさん発電したいときには圧縮比を下げて過給圧を上げてパワーを発揮し発電します。

 このVCターボを使うことで、従来2Lかそれ以上の排気量が必要だったエンジンを1.5Lにサイズダウンし、質量自体もコンパクト化を可能にしたのです。いかに燃費を良くし、かつ効率的に発電するかという点にフォーカスしたターボエンジンの使い方というわけです。

■細々と生き残っているスポーツターボ

新型日産 フェアレディZはスカイライン400Rと同じ3Lツインターボを採用

 スポーツターボで現在生き残っているのはGT-R、NSXタイプS、フェアレディZ/スカイライン400R、スープラ、シビックタイプR、GRヤリス、スイフトスポーツです。

 GT-Rのターボはターボのインペラーとハウジングの隙間をゼロクリアランスにするアブレダブルシール採用のIHI製で、過給圧は約1.26kg/平方cm。排気量3.8LのV6ツインターボで最高出力570ps/6800rpm、最大トルク637Nm/3300-5800rpmを発揮します。

 大排気量エンジンにさらに強烈なターボパワーを上乗せした豪快な加速性能を誇ります。

 NSXタイプSは過給圧を従来の105kPaから5.6%過給圧をアップ。1.13kgf/平方cmにアップ。最高出力はエンジンのみで529ps/6500-6850rpm、最大トルク600Nm/2300-6000rpm。

 システム出力は610ps/667Nmを発揮します。これだけの出力を発揮するエンジンだけにターボパワーが炸裂する豪快なエンジンかと思いきや、NAエンジンのようにと言ったら多少大げさですが、右足とエンジン+モーターパワーがシンクロしている超絶に速いけれど扱いやすいパワーユニットです。

 フェアレディZに新しく搭載された3Lツインターボはスカイライン400Rに搭載されているものと基本的に同じものです。ターボ回転センサーによってターボの回転数と過給圧を制御。405ps/475Nmのパワーとトルクを発揮し、レスポンスの良さと迫力あるパワーを両立しています。

 このエンジンとキャラクターがよく似ているのがGRスープラRZの3Lツインターボエンジンで、387ps/500Nmを発揮します。それからSZ-Rの2Lターボもスポーツターボに分類できると思います。258ps/400Nmを発揮して、鋭く伸びのいい加速を見せてくれます。

 シビックタイプRは、国産ターボでもっとも攻撃的なエンジンと言えるかもしれません。端的に言ってしまえば、FF車で世界一ニュルブルクリンク北コースを速く走るために作られた……と言っても過言ではないクルマだからです。

 2Lターボで330ps/420Nmを発揮しますが、パワーをひねり出しているわけではなく、エンジンやターボの応答、フラットなトルク特性まで設計値どおりに作り込まれている、そんな印象のターボです。

 トラクション性能に限界のあるFFスポーツカーをいかに速く走らせるかに心血を注いで作られている過激なエンジンなのです。

ホンダ シビックタイプR。FFスポーツカーを速く走らせるために作られた2Lターボを搭載

 過激という意味ではGRヤリスの1.6Lターボも攻撃的なスポーツエンジンと言えます。出力こそ272馬力ですが、これを1.6Lのエンジンから絞り出しているのですから、チューニング度としてはかなり高めです。セラミックボールベアリングターボを採用し、ターボラグを最小限に抑えています。

 それでもエンジンに比べて大きめのタービンを回している感覚がありパワー重視のターボの匂いがプンプンしています。

 スイフトスポーツは例外的にスポーツターボに組み入れたいエンジンです。1.4L、140馬力はL当たり100馬力で、ターボのチューニング度としてはそれほど高くはありません。

 しかし、ターボの過給圧制御を、常時ウエストゲートを閉じてレスポンスの向上を狙い、過給圧が設定を越える飛ぶエストゲートが開く、昔ながらのノーマルクローズド制御(最近のターボはポンピングロスを少なくするためウエストゲートを開いているノーマルオープン制御が多いのだそうです)を採用して、昔ながらのレスポンスよくかつ刺激的なパワーを発揮しているのです。

 このほか、レクサス ISやRCの2Lターボもスポーツターボに分類できると思います。

 スイフトスポーツは例外と書きましたが、スポーツターボとダウンサイジング(ミドルサイジング)ターボの区別の目安はリッター当たり120馬力を超えているかどうか、というところに置きました。

 そこに明確な線引きがあるわけではありませんが、実際のところ仕分けてみても、加速の刺激度や迫力、鋭さ、伸びの良さなど、スポーツ性を感じるターボチューンは、このあたりが境界線になっているように感じます。

■スポーツターボ以外のターボ

スポーツエンジン並みの性能を誇るがクルマのキャラクターを加味するとダウンサイジングターボにカテゴライズされそうなレクサス LS

 上記スポーツターボ以外のターボモデルを便宜的にダウンサイジングターボ、ミドルサイジングターボに分類したのですが、境界線にあるのがクラウン・ハイブリッドターボとレクサス LSの3.5Lターボ(422ps/600Nm)です。

 クラウンはエンジンだけをとったら2.4L 272ps/460Nmでリッター当たり113馬力。トルクは巨大ですがエンジンのチューニング度は高くありません。

 ただ、デュアルブーストを謳うターボ+モーターのシステム出力は349馬力にも上ります。今回はエンジンに重点を置いてダウンサイジングに入れましたが、今後ハイブリッドスポーツカテゴリーは確実に登場することになると思います。

 また、レクサスLSは3.5Lターボで422馬力/600Nmで、リッター当たり120馬力となりスポーツエンジン並みの性能を誇ります。

 しかしこのクルマに限っては、欧州ハイパフォーマンスセダン(サルーン)をライバルに置いてレクサスのフラッグシップモデルとしてパフォーマンスを与えるのが狙いなのでしょう。クルマのキャラクターを勘案してダウンサイジングにカテゴライズしました。

 近年のターボの使い方は、排気量に対して小型化し、レスポンスをよくするのがトレンドで、それで十分に速さやスポーツ性を感じさせるパフォーマンスを発揮しているので、単純にダウンサイジングとかミドルサイジングという言葉でくくりにくいのです。

 スバルのターボエンジンはその好例で、速さ、伸びの良さを備えながら、ひとクラス大きなエンジンを感じさせる走りの余裕を作り出しています。

 典型的なダウンサイジングエンジンとして挙げられるのはステップワゴンでしょう。ステップワゴンは1.5Lで150ps/203Nmのパワーとトルクを発生しています。

 同じ1.5Lでクラス分けは明らかにダウンサイジングターボなのですが、同時にスポーツエンジンとしての成立しているのがシビックです。1.5Lで182ps/240Nmを発揮。リッター当たり121馬力になります。

 もはやダウンサイジングだからおとなしいエンジンとは限りません。ターボの性能や、制御の進化、さらにはハイブリッドモーターとの組み合わせによって、刺激的な速さを持ちながら好燃費性能も両立するエンジンがまだまだ登場してきそうです。

こんな記事も読まれています

装備はバッチリで程よくオシャレ 街乗りでも快適なトヨタ タウンエースがベースのキャンパー
装備はバッチリで程よくオシャレ 街乗りでも快適なトヨタ タウンエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
走りのグレード[グランツーリスモ]が熱かった! なぜY31セドリック/グロリアは輝いていたのか?
走りのグレード[グランツーリスモ]が熱かった! なぜY31セドリック/グロリアは輝いていたのか?
ベストカーWeb
もはや熟成の域だよレガシィアウトバック!! さすが4駆のスバル!! やっぱアウトドアにピッタリだった 
もはや熟成の域だよレガシィアウトバック!! さすが4駆のスバル!! やっぱアウトドアにピッタリだった 
ベストカーWeb
[ハイラックスサーフ]の後ろに注目!! 巨大リアウィングの機能がスゴかった
[ハイラックスサーフ]の後ろに注目!! 巨大リアウィングの機能がスゴかった
ベストカーWeb
トヨタ小林可夢偉が見据えるテール・トゥ・ウイン。「優勝以外リベンジとは言えない」と平川亮/ル・マン24時間
トヨタ小林可夢偉が見据えるテール・トゥ・ウイン。「優勝以外リベンジとは言えない」と平川亮/ル・マン24時間
AUTOSPORT web
LMP2新レギュレーション、3度目の導入延期。2027年末まで現行規定を維持へ
LMP2新レギュレーション、3度目の導入延期。2027年末まで現行規定を維持へ
AUTOSPORT web
2025年からのハイパーカー『最低2台義務』が正式発表。イモラはガレージ数を拡張へ
2025年からのハイパーカー『最低2台義務』が正式発表。イモラはガレージ数を拡張へ
AUTOSPORT web
マフラーを横から出しちゃダメだろ! クルマの「サイド排気」って車検に通るの?
マフラーを横から出しちゃダメだろ! クルマの「サイド排気」って車検に通るの?
ベストカーWeb
ル・マン24時間グランドマーシャルとTGR-E副会長で多忙な中嶋一貴。「しっかり役をこなしたい」
ル・マン24時間グランドマーシャルとTGR-E副会長で多忙な中嶋一貴。「しっかり役をこなしたい」
AUTOSPORT web
一体どこが抜け出すんだ!? 2024年ル・マン24時間は開始1時間を過ぎても依然接近戦……11番手発進トヨタ8号車もトップ争いに加わる
一体どこが抜け出すんだ!? 2024年ル・マン24時間は開始1時間を過ぎても依然接近戦……11番手発進トヨタ8号車もトップ争いに加わる
motorsport.com 日本版
ハイパーカーのホモロゲーションサイクルが2029年まで延長。水素クラス導入は2028年へ4度目の延期
ハイパーカーのホモロゲーションサイクルが2029年まで延長。水素クラス導入は2028年へ4度目の延期
AUTOSPORT web
アストンマーティン、2025年WECハイパーカー参戦を確認。2台のヴァルキリーAMR-LMHが登場へ
アストンマーティン、2025年WECハイパーカー参戦を確認。2台のヴァルキリーAMR-LMHが登場へ
AUTOSPORT web
築110年の駅舎には2つのミュージアム! バーストーの街はクルマ好きも鉄道好きも立ち寄る価値ありです【ルート66旅_56】
築110年の駅舎には2つのミュージアム! バーストーの街はクルマ好きも鉄道好きも立ち寄る価値ありです【ルート66旅_56】
Auto Messe Web
[セレナミニ]爆誕!? シエンタにフリードバカ売れなのに日産なぜ出さない!?
[セレナミニ]爆誕!? シエンタにフリードバカ売れなのに日産なぜ出さない!?
ベストカーWeb
2024年のル・マン24時間がスタート! フェラーリがすかさずワンツー奪取……トヨタ8号車6番手
2024年のル・マン24時間がスタート! フェラーリがすかさずワンツー奪取……トヨタ8号車6番手
motorsport.com 日本版
いよいよステーションワゴン登場! BMW i5 ツーリングへ試乗 万能道具感は先代を超えず?
いよいよステーションワゴン登場! BMW i5 ツーリングへ試乗 万能道具感は先代を超えず?
AUTOCAR JAPAN
富士6時間レースは9月に開催。WEC、ル・マンで全8戦の2025年レースカレンダーを発表
富士6時間レースは9月に開催。WEC、ル・マンで全8戦の2025年レースカレンダーを発表
AUTOSPORT web
ランボルギーニ史上初、ル・マン24時間レースのハイパーカークラスに参戦! SC63の2台体制で歴史的なデビューを飾ります
ランボルギーニ史上初、ル・マン24時間レースのハイパーカークラスに参戦! SC63の2台体制で歴史的なデビューを飾ります
Auto Messe Web

みんなのコメント

58件
  • しかし「ダウンサイジングターボに出遅れた」って、軽自動車の事(欧州車より遥かに高性能なダウンサイジングターボ)は全く頭にないこの記事は逝かれてる。
  • 燃費の為に付いてるターボだから
    適正回転数で使わないと何も意味が無い
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2550.02800.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
ターボの車買取相場を調べる

ベントレー ターボの中古車

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2550.02800.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村