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クルマの顔に横長ライトなぜ増えない? リアは続々採用もフロントデザインに採用されない理由

掲載 更新 15
クルマの顔に横長ライトなぜ増えない? リアは続々採用もフロントデザインに採用されない理由

■クルマのライトデザインは「LED」で自由増した?

 トヨタ「ハリアー」やレクサス「IS」などに見られる横一文字のデザインをテールランプに採用するクルマが近年増えています。
 
 一方、ヘッドライトの横一文字化はほとんど事例がありません。なぜ、ヘッドライトは横一文字のデザインを採用しないのでしょうか。

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 われわれの日常生活を明るく照らしてくれるLEDは意外にも歴史が古く、1960年代前半にアメリカの科学者によって発明されました。

 しかし、当初は赤色しか発光できなかったため用途が限定されていましたが、その後1972年に緑色(正確には黄緑色)が、そして1989年に青色LEDが発明されたことで、「光の三原色」がそろい、理論上はどんな色でも作れるようになりました。

 これにより、LEDはその可能性が無限大に広がり、さまざまな照明用途へと使われていくことになり、青色LEDの発明に大きく貢献した中村修二氏は、2014年にノーベル化学賞を受賞しています。

 クルマの世界では、2000年代よりテールランプなどでLEDランプが使用されはじめ、2006年に登場したレクサス「LS600h」で、世界で初めてLEDヘッドライトが採用されました。

 従来のHIDランプなどに比べて省電力なLEDランプは、ハイブリッド(HV)や電気自動車(EV)などの登場とともに一気に普及し、それにともないコストも低下したことで、現代では多くの車種がLEDヘッドライトやLEDテールランプを採用しています。

 LEDヘッドライトやLEDテールランプを採用する最大の目的のひとつとして、省電力性を活かした燃費向上が挙げられますが、それ以外にもデザイン性の向上といったメリットもあります。

 HIDランプやハロゲンランプに比べて、光源の小さく、また配線も比較的容易なLEDランプは、より柔軟なデザインを可能にします。

 そうしたLEDランプの恩恵を受けて登場したのが、近年トレンドとなりつつある横一文字型のテールランプです。

 これまではほとんどの車種がテールランプを左右独立に配置していたのに対し、2019年に登場した8代目ポルシェ「911」では、横一文字に横断するテールランプを採用。その後登場したポルシェの各車種や、2020年に発売されたトヨタ「ハリアー」、レクサス「IS」でも同様の横一文字型テールランプが採用されています。

 横一文字型のテールランプが採用されるようになった大きな理由のひとつは、クルマをワイド&ローに見せられる点です。

 一般的に、クルマは横幅を広くし、全高を低くするほうが美しく見えるとされています。

 しかし、実際に市販する場合には、居住性や使い勝手、コストなど、デザイン上の制約を多く受けることになります。

 そこで、横一文字型のテールランプを採用することにより、見る人の視線を横方向へ意識させ、ワイド&ローを強調させています。

 国産メーカーの担当者は次のように説明しています。

「最近のデザインの特徴として、水平基調を意識していることが挙げられます。とくに、外観のデザインではLEDが採用されたことでデザインの自由度が増しました。

 外観を水平基調のデザインにすることで、スタイリッシュかつワイドな印象を与えられます」

※ ※ ※

 また、フロントのデザインに比べて、リアのデザインは各ブランドのアイデンティティを伝える余地が多く残されており、ひと目でそのブランドであることを認識させることにも、横一文字型のテールランプは一役買っているようです。

■後ろは採用増加も前に横一文字デザインを見かけない訳とは

 横一文字型、もしくはリアエンドを横断するようなデザインのLEDテールランプは、今後も増えていくことが予想されます。

 一方、フロント部分には横一文字型のヘッドライトを採用している車種はほとんど見当たりません。

 前述のLS600hを皮切りに、ヘッドライトにもLEDが採用されることが多くなってきました。

 また、欧州では早い段階から事故防止などのために義務化され、2016年に日本国内でも規制緩和により採用される事例が増えた「デイタイムランニングライト」は、LEDの普及と大きく関係しています。

 しかし、保安基準上の制限が多いヘッドライトは、リアコンビネーションランプ以上にデザイン上の自由度が低くなってしまうというのが各メーカーの本音のようです。

 ヘッドライトの最大の目的は、前面を明るく照らすことです。当然のことながら、明るさについても各国で厳格な基準が設定されています。

 日本の場合、ハイビームは「前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有するものであること」、ロービームは「自動車の前方40mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有すること」などの規制があります。

 LEDランプは極めて小さい点光源の集合体であり、大きな光量を得るためには、多くのLEDを集積させ、かつ大きな電流を流す必要があります。

 そうすることでヘッドライトとして十分な光量を得ることは可能です。しかし、熱に弱いというLEDの特性を考慮すると、ヘッドライトに使用されるほどの大光量に耐えうるだけの耐熱・放熱設計を施す必要があります。

 比較的大きなコストをかけやすい高級車にLEDヘッドライトの採用が偏っているのはこうした理由があります。

 したがって、横一文字型のヘッドライトを実現するためには、十分な光量を得られるようLEDを集積させ、なおかつ十分な耐熱・放熱設計を施すことが必要不可欠ですが、コスト面なども含めて、まだまだ実用的ではないと考えられます。

 しかし、2021年4月に発表された韓国ヒュンダイの多目的ミニバン「スターリア」では、横一文字型のヘッドライトが採用されました。

 とくに、最上級モデルである「スターリア プレミアム」では、その近未来的なスタイリングが話題になっていますが、SFチックなこのヘッドライトがそうしたイメージづくりに一役買っているといえます。

 スターリアは日本市場に導入する見込みが低いため、日本国内の保安基準に適合するかどうかは不明ですが、韓国以外にも東南アジアなど複数の市場で展開されることを考えると、一定の基準は満たしていると考えられます。

 スターリアの動画を見ると、横一文字型のヘッドライトだけで前面を照射しているわけではなく、フロント下部の両サイドに設けられた大型の副照明と組み合わせることで十分な光量を確保しているようです。

 したがって、横一文字型の部分に過度にLEDを集積させる必要がなく、その分耐熱や放熱にかかるコストの抑えられているといえるでしょう。

 こうした工夫によって、横一文字型をはじめとするまったく新しい形状のヘッドライトが、日本国内でも今後見られるようになるかもしれません。

※ ※ ※

 ヘッドライトのデザインは、クルマの印象を決定づけるものというデザイン上の大きな役割を持っています。

 保安基準などの制約も多い部分ではありますが、技術の進歩とメーカーの創意工夫によって、新たなデザインのヘッドライトが登場することを期待しましょう。

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