私が次期型スープラのプロトタイプに試乗したのは2018年12月上旬、場所は冷たい雨がそぼ降る袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)だった。
この記事が公開される頃にはデトロイトショーでの正式なお披露目も済み、詳細なスペックが公表されているはずだ。ただし、試乗した時点で私たちに明かされていたのは、(1)3.0リッター直列6 気筒ターボエンジンを搭載(2)レイアウトはフロント・エンジンの後輪駆動(3)ギアボックスは8速AT、という3点のみ。しかも試乗車のエクステリアはスタイリングを紛らわすための擬装が施され、かつインテリアもメーターパネルやステアリングなどドライビングに必要な最低限の機能を除き、すべて黒い布で覆われている状態だった。ちなみに、撮影用に1台、擬装のないモデルがあったものの、こちらは試乗不可能だった。
“オジさんグルマ”とは言わせない──驚くほど走りがいい! トヨタ マークX“GRMN” 試乗記
「書いていいのは自分で感じ取ったことだけ」 私は、トヨタからそんな挑戦状を突きつけられたような印象を抱いた。
ピットロードに置かれた試乗車を観察すると、フロントに255/35R19、リアに275/35R19の「ミシュラン・パイロット・スポーツ」が装着されていた。しかも、BMWの認証を受けたタイヤを示す“☆”印もそのまま残っている。次期型スープラが先に発表されたBMWの新型「Z4」と多くの部分を共有するのは広く知られているが、タイヤひとつとってもその事実が裏付けられた格好だ。
軽い不安と胸の高鳴りを感じつつ、私はスープラのプロトタイプでヘビーウェットのサーキットを走り始めた。
トヨタらしかぬ電子制御の介入タイミング
いくら公道走行用のタイヤで、しかも限界特性を掴みやすいミシュラン・タイヤを履いているとはいえ、タイヤが温まるまでは油断できない。そんな心持ちで慎重に走り始めたつもりだったが、ピットロードを出て1コーナーを通過し、2コーナーを立ち上がったところで早くもリアタイヤが滑り始めた。このときのドライビングモードは「ノーマル」でスタビリティ・コントロールもトラクション・コントロールもオンの状態。
ちなみに、次期型スープラの電子制御系はBMWのロジックとおなじだ。スタビリティ・コントロールのスイッチを軽く押すとトラクション・コントロールが切れ、スタビリティ・コントロールはスポーツモードに入る。さらに長押しするとトラクション・コントロールもスタビリティ・コントロールもオフになる。
つまり、走り出しの際は電子制御系によって一分の隙もなく守られていたにもかかわらず、リアタイヤは横方向にスライドしたのである。
私は最小限のカウンターステアで態勢を立て直すとバックストレートを加速していったが、もうこの段階で顔がにやつくのを押さえきれなくなっていた。
86がデビューしたときもそうだったが、トヨタのスタビリティ・コントロールはたとえスポーティ・モデルでも介入のタイミングが早めで、リア・タイヤのほんのわずかなスライドも許さない設定にされているのが常だった。だからドリフトを楽しみたいと思えばスタビリティ・コントロールをオフにする以外になかったが、それはセーフティネットなしで綱渡りをするようなもの。つまり、テールスライドを引き出すにはドライバーがかなりのリスクを背負わなければいけなかった。
しかし、試乗したスープラ・プロトタイプはスタビリティ・コントロールがオンでも、オーバーステアを引き出せる。これはトヨタの量産車として驚天動地のセッティングといえるだろう。
驚いたのはスタビリティ・コントロールの設定だけではない。リアタイヤの滑り出す兆候がはっきりと伝わってくるため、ドライバーは余裕をもってテールスライドに対処できるのだ。
これは優れたボディ剛性(86の2.5倍もあり、かつカーボン・モノコックを与えられたレクサス LFAさえ凌ぐレベルという)、前後ロール剛性のバランス、ステアリング系の剛性感など、クルマの神経系を徹底的に磨き上げた恩恵だろう。
おかげでリアの微妙なロール感もドライバーに伝わり、「お、そろそろ滑り始めるな」と、危険信号を事前に察知できる。つまり、ドライバーはサスペンションやタイヤと会話しながらステアリングを操れるのだ。スポーツ・ドライビングの究極的な醍醐味といっても差し支えない体験が味わえるからすごい。
いくら極端に滑りやすいコンディションだったとはいえ、これだけ思いのままにオーバーステアを引き出せたのは、フロントの接地性ならびにリアのトラクション性能が優れている証明といえる。どうやら今回の試乗車には電子制御式のアクティブデフが装着されていたようであるが、その効果も大きかったはず。機械式リミテッドスリップデフと違って限界状態で神経質な挙動を示さない点にも強く惹かれた。
感銘を受けたのはシャシーまわりだけではない。BMWのDNAが色濃くすり込まれたと推測される直列6気筒エンジンはただスムーズなだけでなく、ターボエンジンとは思えないほどシャープなレスポンスを誇る。しかもボトムエンドから図太いトルクを生み出す特性で扱いやすく、今回のように滑りやすいコンディションでもバツグンのコントロール性を享受できた。
レッドゾーンの始まる6500rpmまでひとかけらのストレスも感じさせないスムーズさも身上だ。それでいて、ほとんどスロットルペダルを踏めないほど滑りやすい最終コーナーを立ち上がり、わずか400mしかないストレートを加速すると、1コーナー手前で164km/hにも到達するパフォーマンスを示した。スープラにとって理想的なパワーユニットといっていいだろう。
もっとも、スープラ・プロトタイプに弱点がなかったわけではない。今回はスタビリティ・コントロールをオンもしくはスポーツモードに設定して走行したが、どちらもリアのスリップアングルが一定値を越えるとシステムが急激に介入し、有無をいわさずにテールスライドが抑え込まれた。しかもその介入ポイントが掴みづらく、大きくまわり込むコーナーではスライド→システム介入→スライド→システム介入……が繰り返されてギクシャクした動作に陥りがちだった。
それでもシステムを作動させている限りスピンしないのだから立派であるが、介入するか・しないかの微妙なレベルで、もう少し漸進的な制御になれば、さらに理想のスポーツカーに近づくはずだ。
いずれにしても、今回試乗したのはあくまでもプロトタイプであって実際に販売される最終形ではない。しかも、試乗当日はどんなにリアタイヤをスライドさせてもトレッド面は冷え切ったままという特殊なコンディション。したがって断定的な評価は差し控えるが、販売までにソフトウェアまわりの一層の煮つめが実施されることを強く期待したい、と思うのであった。
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