2024年8月1日~4日(現地時間)、世界ラリー選手権(WRC)第9戦ラリー・フィンランドがユバスキラを起点としたグラベル(未舗装)路で開催され、トヨタのセバスチャン・オジェが優勝。2位にはヒョンデのティエリー・ヌーヴィル、3位にはMスポーツ・フォードのアドリアン・フルモーが入った。勝田貴元(トヨタ)は金曜日にリア足回りを損傷させてデイリタイア、その後再出走したものの41位に終わった。
天候不順でアクシデント続発
スタート前から断続的に降る雨がWRC随一の高速グラベルロードのグリップを不安的なものに変え、ラリーは序盤からアクシデントが相次いだ。
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まず犠牲になったのはランキング2位のオイット・タナック(ヒョンデ)。SS2の序盤で姿勢を乱して大転倒し、クルーに怪我はなかったがコドライバーが念の為に病院で検査を受けることになったため、タナックはここでリタイアとなる。
SS5ではトヨタ1-2-3-4の一角を担っていた勝田が木にホイールをぶつけてデイリタイア。SS6ではエサカッペカ・ラッピ(ヒョンデ)も木にヒットしてやはりデイリタイアとなる。
波乱は土曜日も続く。SS12で2番手につけていたトヨタのエルフィン・エバンスがドライブシャフトを破損して大きくタイムロス。下位に沈んでしまったのだ。
ロバンペラも地元戦初勝利目前で涙
アクシデントが続くなか、スタートから危なげなく首位をキープしたのが初の地元ラリー勝利を狙うカッレ・ロバンペラ(トヨタ)だった。GRヤリスはチームのホームラリーということもあってヒョンデi20Nを圧倒、チームメイトのオジェがエバンスのデイリタイアで2番手に浮上し、トヨタの3戦連続1-2フィニッシュは確実かと思われた。
しかし最終日、トヨタにまさかの事態が待っていた。最終パワーステージ(SS20)を前にしたSS19。まずスタート直後に日曜日のポイント獲得を狙って再出走していたエバンスがコースアウトしてリタイア。痛恨の無得点に終わってしまう。そしてそのわずか数分後、今度は首位ロバンペラを悲劇が襲った。
「あとステージのフィニッシュまで5つか6つのコーナーを残すだけの地点。ペースとしては完全に“アンダーコントロール”だったんだけど、路面の上の大きな岩を避け切れなかった」(ロバンペラ)
岩にヒットしてコントロールを失ったGRヤリスはそのままアウト側にクラッシュ。ロバンペラは土壇場でまさかのリタイアとなってしまった。
SS19を前にオジェとの差は45秒以上あり、昨年までのポイントシステムなら日曜日はより“安全ペース”で良かったが、今年は日曜日単独のポイント獲得も重要。トヨタのマニュファクチャラーズ選手権のためにも、むやみにペースを落とせない状況下でのアクシデントだった。
トヨタ3連勝もチャンピオン争いは2冠とも厳しい状況に
ラリーはそのままチームメイトのオジェが優勝。トヨタとしてはこれで3連勝となったが、エバンス、ロバンペラが無得点に終わったことで選手権の様相は大きく動いた。
ドライバーズ選手権では、タナック、エバンスがともにリタイアに終わったことでランキング首位のヌーヴィルが2番手に浮上してきたオジエとの差を27点にまで拡大。一方、マニュファクチャラーズ選手権でも、首位ヒョンデに1点差に迫っていたトヨタが得点対象の2台を失ったことでその差を20点に広げられてしまった。
今年のポイントシステムではポイント差を一気に縮めることは難しく、残るラリーはわずか4戦。ラリーでは優勝したとはいえ、今回の“ホームラリー”はトヨタにとっては厳しい結果となってしまった。
次戦WRC第10戦アクロポリス・ラリーは、9月5日~8日、ラミアを起点としたグラベル(未舗装)路で開催される。ステージの路面はここ3戦のスムースでフラットなグラベルと異なり、大きな石が転がる山岳ステージは路面が荒れているところも多く、気温も高いため、クルマにもタイヤにも選手にも厳しい「ラフグラベル・ラリー」として知られている。(文:新村いつき)
2024年 WRC第9戦ラリー・フィンランド リザルト
2024年 WRC第9戦ラリー・フィンランド 結果
1位:S.オジェ(トヨタ GRヤリス ラリー1ハイブリッド)2h25m41.9s
2位:T.ヌーヴィル(ヒョンデ i20N ラリー1ハイブリッド))+40.1s
3位:A.フルモー(フォード・プーマ ラリー1ハイブリッド)+1m14.1s
4位:S.パエリ(トヨタ GRヤリス ラリー1ハイブリッド) +1m54.5s
5位:O.ソルベルグ(シュコダ ファビアRS ラリー2)+8m15.5s
6位:J.ラトラバ (トヨタ GRヤリス ラリー2)+8m54.5s
7位: L. ヨーナ(シュコダ ファビアRS ラリー2) +9m29.4s
8位:M.ヘイキーラ(トヨタ GRヤリス ラリー2) +9m32.0s
9位:N.グライジン(シトロエン C3 ラリー2) +9m51.2s
10位:G.リンナマエ (トヨタ GRヤリス ラリー2) +10m07.0s
────────
41位:勝田貴元 (トヨタ GRヤリス ラリー1 ハイブリッド)
2024年 WRCドライバーズランキング(第9戦終了時)
1位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ)168
2位 S.オジェ(トヨタ)141
3位 O.タナック(ヒョンデ)137
4位 E.エバンス(トヨタ)132
5位 A.フルモー(Mスポーツ・フォード)119
6位 K.ロバンペラ(トヨタ)86
7位 勝田貴元(トヨタ)76
2024年 WRCマニュファクチャラーズズランキング(第9戦終了時)
1位 ヒョンデ 395
2位 トヨタ 375
3位 Mスポーツ・フォード 207
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みんなのコメント
モータースポーツも「勝負は下駄を履くまで分からない」んですよね。