発売間近のスバル 新型クロストレックの詳細が続々とわかってきたが、気になる点もかなりある。
まずは初代モデル以来10年ぶりのFFモデルをラインアップしたこと。それによってベースモデルのインプレッサは発売されないのでは? という点。
新型クロストレックにまさかのFF!? アイサイトXなんでないのよ!! 260万スタートで大人気XVを継承なるか
そしてスバルのお家芸ともいえるアイサイト、その進化系であるアイサイトXが装備されないことなどなど。なぜ? というポイントがかなりあるのだ。そこで今回は開発陣にその真相を直撃!
文/永田恵一、写真/平野学、SUBARU
■新型クロストレックに潜む謎を解明!! 責任者に直撃
2022年9月に公開された新型スバル クロストレック。今回のフルモデルチェンジから、車名がXVから世界共通名であるクロストレックに変更された
歴代インプレッサの最低地上高を上げるなどしたクロスオーバーという成り立ち。今回のフルモデルチェンジから日本でも車名がXVから世界共通のクロストレックに変更された。
近々先行受注も開始される新型クロストレックのプロトタイプ試乗記は別記事を参照していただくとして、新型クロストレックは現行レヴォーグ以降のスバル車との共通部分が多岐に渡る。
インパクトには欠けるものの正常進化を遂げ、全体的にフルモデルチェンジに対する期待を裏切ることのない堅実なモデルに仕上がっていた。
ただ、クロストレックは商品展開を中心に「なぜ?」と感じる部分が非常に多い。そこで新型クロストレックに感じた「なぜ?」を開発責任者の毛塚紹一郎プロダクトゼネラルマネージャーに伺ったレポートをお伝えする。
■クロストレックの比率が7割!! もしや新型インプレッサは存在しない?
新型スバル クロストレック開発責任者の毛塚紹一郎プロダクトゼネラルマネージャー
旧XV&クロストレックは2010年に初代モデルが、インプレッサが2007年登場の3代目モデルだった時代に追加されて以来、2代目。そして3代目モデルもインプレッサのフルモデルチェンジから半年から1年近く遅れてフルモデルチェンジされていた。
それに対し次期インプレッサシリーズではクロストレックがトップバッターとなった。
この点に関しては「クロストレックがトップバッターなのは世界的に見るとXV&クロストレックがインプレッサシリーズの約70%を、日本でも約60%とXV&クロストレック中心になっているから?」、「もしかしたら次期インプレッサシリーズはXVのみになるという布石なのか?」などとも感じる。
毛塚PGM曰く「特にXV&クロストレック比率の高さによることのためということはなく、昨今SUV&クロスオーバーはニーズの高まりにより競争の厳しいジャンルとなっています。
という背景もあり、フルモデルチェンジによる進化の必要性の高さによりクロストレックからフルモデルチェンジということになりました」と、納得の答え。
気になる次期インプレッサに関しては当然ながら詳細は聞けなかったが、いずれ登場すると思っていいようだ。
しかし、某スバル販社のWebにて「セダンのG4は現行モデルで終了」という告知があったこともあり、セダンボディが現行モデルで最後となるのは決定的な模様。そのためセダンボディのインプレッサが欲しい人は今ならオーダー可能なので、急いで動くべきだろう。
■4WD専売が足かせとなっていた!? FF追加の真相とは
先代は4WDのみという部分でユーザーの選択肢から外れていた部分もあった。今回FFをラインナップしたことで販売拡大につながるか?
スバル車は4WDのパイオニアであり、世界的にみると4WD比率が95%以上と非常に高い。そのためクロスオーバーの旧XVも初代モデルにFFがあっただけで、2代目と3代目モデルは4WDのみであった。
この点に関して筆者は「スバルの4WDは高性能なのに車重+約50kg、価格は+約20万円(その半分くらいは処分するときの査定で回収できるだろう)、燃費も約5%落ちと4WDによる失うものが少ないのに得るものが多いのだから、それも当然」と感じていた。しかし、クロストレックからはFFが追加されたのだ。
毛塚PGMは「ユーザー調査の中ではクロスオーバーの旧XVでも『4WDしかないという理由、つまり失うものは少ないとはいえマイナス面、無駄なところがあるから旧XVを選ばなかった』というお客様が少なからずいらっしゃいました。
FF車はそういった方に向け追加したもので、FF車の追加がクロストレックの拡販につながることを強く期待しています」とのことだった。
■コスパ最強だった1.6リッターが廃止!! ストロングハイブリッドが追加される?
リーズナブルさが魅力だった1.6リッターは今回の新型では廃止された。CAFEへの対策という面から比較的燃費の良いe-BOXERのみの設定となったという事情もあるようだ
3代目XVはモデルサイクル中盤以降比較的簡易なハイブリッドとなるe-BOXER中心だったのは事実である。そして1.6リッターのベーシックグレードは4WDなのに220万円と、リーズナブルさを牽引していたという面もある。
しかし、新型クロストレックから1.6リッターは廃止された。その理由を毛塚PGMに聞くと「CAFE(企業別平均燃費規制)をはじめとした燃費や環境に対する法規が厳しくなっているのもあり、現状では燃費がスバル社内最良となるe-BOXERのみのとしました」
ただ、スバルはCAFEの達成が芳しくなく、燃費に関してはかつてと意味合いは違うとしても、相対的に劣勢なのも事実だ。この点を考えると、FF車の追加にはCAFE対応という目的もあったのかもしれない。
また、本格的なハイブリッドなど燃費のいいパワートレーンがクロストレックを含めたインプレッサシリーズ、スバル車に早期に加わることも強く期待したい。
■アイサイトXの採用なし! 最大の理由は価格にあった
アイサイトの進化系であるアイサイトXは装備されないが、新世代アイサイトに加え広角単眼カメラを日本仕様として初採用した
新型クロストレックのアイサイトは周囲の情報を収集するハードウェアに、近距離で飛び出してきた自転車などの認識に優れる広角単眼カメラが追加され、最新のアイサイトに相応しい最高の基本性能を備える。
この点はもちろん大歓迎ながら、レヴォーグ、レガシィアウトバック、WRX S4に装備され、進路変更の際のアシストや自動車専用道路での渋滞中のハンズオフ機能。コーナーに合せた減速といった運転支援機能も備えるアイサイトXとは異なるモノが採用されている。
その理由を毛塚PGMに尋ねると「価格と車格との折り合いが大きな理由です。アイサイトXを構成するには3D高精度地図データやハンドルを持っていることをクルマが認識するためのタッチセンサー付ハンドルなどの付帯装備が必要となります。
それは当然価格に反映されますので(WRX S4やレヴォーグを見ると、このあたりだけでも20万円近いものに見える)、クロストレックでのアイサイトX搭載は見送りました」という。
もちろんアイサイトXがあればそれがベストには違いないが、クロストレックも渋滞中などの際には先行車が走る軌跡も認識して先行車を追従するツーリングアシストが付く。
そのため総合的な自動ブレーキ&運転支援機能の性能は車格などを考えれば十分な競争力があるだけに、これも妥当な判断と言えるのではないだろうか。
■新型クロストレックは260万円~か? フォレスターと価格差も縮まる!?
現状では価格と燃費が公表されていない新型クロストレック。値上がりしそうな要素が多数あるが、なるべくリーズナブルな設定をしてくれると喜ばしい
堅実によくまとまった新型クロストレックながら、現状では公表されていない燃費に加え、価格もちょっと不安だ。
というのも新型クロストレックは現行レヴォーグ以降のスバル車同様のフルインナーフレームボディや2ピニオン電動パワステ、電動ブレーキブースター。前述の広角単眼カメラが付いたアイサイトに加え、各部のグレードアップと値上がりしそうな要素が多数ある。
そこに原材料の高騰を考えると、クロストレックの価格は旧XVのe-BOXERを基準にするとFF車の標準グレードで260万円程度~。
標準グレードではメーカーオプションで欲しくなってしまうであろう11.6インチの大型モニターがナビ機能含め15万円高となる見込み。4WDなら+20万円、総合すると中心となるクロストレックは約300万円からとなるのだろうか。
となると登場時期の違いはあるにせよ、約300万円からとなるフォレスターとのバッティングという懸念が浮かぶこともあり、クロストレックの価格が筆者の予想をいい意味で裏切るリーズナブルなものだと嬉しい。
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