シルバーメタリックに輝くKen Okuyama Carsの最新作が「kode 0(コード・ゼロ)」だ。このkode 0は2017年8月にモントレー・カーウィークのメインイベントであるザ・クエール・モータースポーツ・ギャザリングにおいて発表された奥山清行によるワンオフ・プロジェクト第2弾となる。
昨年発表されたショーモデル(といっても、問題なく走行可能な完成車だが)は、日本の道路状況において快適に楽しめるよう、1年をかけて各部が大幅にブラッシュアップされた。そして今年の夏、その第1号車のジャパン・プレミアと幸運な第1号車の顧客への納車式が行われた。
推定2億円超のドリームカー「kode57」|カーデザイナー奥山清行が語るワンオフの世界
kode 0とはどんなクルマなんであろうか? 奥山の言うところによればこういうことらしい。「1969年から70年に掛けて人類が夢にあふれていた時代。巨匠マルチェッロ・ガンディーニやカロッツェリアの名匠の手によるマスターピース、ランチア ストラトスゼロ、ランボルギーニ カウンタック、フェラーリモデューロ、……皆が夢見たこれらドリームカーを現代の技術で復活させる。それがkode 0のコンセプトです」
一昨年発表され、限定数が完売となったkode 57は豊かな曲線を活かしたグラマラスなボディを持っていた。奥山が長年腕を振るったピニンファリーナにおける彼の傑作、フェラーリ・エンツォやロッサ・コンセプトのアイデアを高次元でまとめ上げた、いかにも奥山と言うべき1台であった。
対照的にこのkode 0は直線基調のワンモーションとウェッジシェイプの組み合わせ。それはまさにマルチェッロ・ガンディーニが作り上げた、現代ランボルギーニのスタイリングコンセプトにつながるDNAを彷彿とさせるものである。では、なぜそれを現代に奥山が自分の仕事として完成させなければならなかったのであろうか。
「このkode 0は私自身が手元に置き、運転したくてしょうがないクルマを作りたい、とそんな、やむにやまれぬ気持ちから生まれました。Ken Okuyama Designを創業して以来、私は新幹線をはじめとしてすべてのモノつくりにおいてこういった考え方をもって進めてきました。奥山の個性だ、テーマだ、といったマーケティング的発想から生まれたクルマではありません。時代を超えた美しいドリームカーを再評価し、それを現代に自ら解釈で現代の技術を作りあげる。それが私のやりたかったことなのです」
そんな疑問に彼はこのように答えた。なるほど。奥山は現在のクルマ作りに失われてしまったロマンをこのkode 0で表現したかったということなのだろうか。リスクを伴うことを極力排除し、経済効率を第1に考えていけば、クルマはどんどん同じようなカタチとなり、無難なものとなっていく。今やフロントエンドをここまで低く構えるモデルは新車として存在しないし、それを実現する為、フロントのライトユニットを極限まで低く収めようとする試みもここまで真摯に手掛けないであろう。しかし、それらはkode 0を発注するような極く少数の顧客の置かれた環境だけを考えれば可能となる場合も多く存在する。何十万台も作られるクルマと違ったワンオフカーのモノつくりの正義というものも、また存在するのだ。
そして、そんなニッチな取り組みが、大量生産のクルマのトレンドを作ることもある。
彼が手掛けた先代マセラティ・クアトロポルテのフロントノーズを思い起こしていただきたい。大排気量4ドアサルーンであれほどノーズとヘッドライトを低く構えることなど誰も考えなかった。しかしそれは立派に生産モデルとなり、その取り組みがこのセグメントのスタイリングを大きく変えるトレンドとなった。
“カースタイリングの冒険”は、一般論で言えばどんどん規制が厳しくなり、コスト競争がし烈となる中でそう簡単なことではない。しかし、一方では劇的に進化する技術と設計・製造技術によってできることも大いに増えているはず。そこをトライするのがデザイナーの仕事の一つである、というのが奥山の主張だ。
鋭いウェッジを持つベルトラインに沿って設けられたドアに内蔵されたカーボンファイバー製エアインテークは、Kode 0のスタイリングの大きな特徴である。しかし、それは単に視覚的なインパクトを与えるギミックとは全く異なった成り立ちを持っている。
「私は現代のハイパフォーマンスカーが空力特性や放熱の為という大義名分で、スタイリングの統一感を台無しにするような空力パーツを付け加えたり、違和感の残るボディ細部の造形を行うことに辟易としています。このドアに内蔵されたインテークはゴテゴテした造形により前面投影面積を増やさなくても、Aピラーからリアへと抜ける自然な風の流れを生み出します。冷却面においてもメインラジエターへ十分以上の冷却風を送り込むことを可能にしているのです」と奥山は語る。
このkode 0は、現行のランボルギーニ・アヴェンタドールをベース車とし、Ken Okuyama Cars 山形ファクトリーにて生産され、カーボンファイバー・モノコック、ミッドマウントされたハイパワーV12 NAエンジンという魅力的なスペックを誇る。各所にカーボンファイバー製コンポーネンツを多用するし、そんな1550kgの軽量ボディと700psを発生するハイパフォーマンスエンジンとのコンビネーションはまぎれもなく世界トップレベルの動力性能を発揮する。それを手にすることのできる幸運なオーナーは奥山の明確なコンセプトに基づくクリーンなスタイリングの魅力にも十分な満足を得ることができるであろう。だが、彼のkode 57からkode 0に向かう取り組みには、クルマ作りの未来への提言という深い想いが隠されていることにも気付く。
今やクルマたるもの、何千台から何十万台もの同一モデルを世界の隅々まで届けることを前提に設計・製造されて初めて、そのビジネスが成り立つ。しかし、このkode 0は5台までしか作られないという。だとすれば、今までのクルマ作りの常識を覆すやり方によって、ビジネスを成立させることに彼は闘志を燃やしているともいえる。ごく少量生産のクルマは、少々高価なプライスタグを付けたとしても、そう簡単に初期投資を回収できるものではない。普通の経営者であれば、こう考えるだろう。kode 57を発表し、高い評価を得た。だから、それをベースにkode 58と名付けるに相応しいような発展的モデルを間髪入れず発表し投資を回収しよう、と。
しかし、奥山は普通の経営者ではない。次期モデルには”ゼロ”と名付け、ハイパフォーマンスカーの原点回避を世界に提案するために一から再び作業を始めた。全く新しいモデルであるkode 0が企画を立ち上げてから1年も経たずして、完成してしまったというわけだ。考えてみれば、こんな“普通でない”仕事の進め方こそ、今や絶滅状態となってしまったイタリアン・カロッツェリアの十八番であったのだ。そういう意味においてもこのkode 0は、まさに彼の原点回帰というべき渾身の1台である。
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