この記事をまとめると
■スタートアップ企業・KGモーターズが開発した小型スマートモビリティ「mibot」に試乗
目指すは自動運転による免許がない人の近距離のアシ! KGモータースが小型EVモビリティ「mibot」をお披露目
■SDV対応のアップデート機能や自動運転を見据えた機能が特徴
■開発車両ながらも走りの完成度は高かった
いま大注目の国産小型EVモビリティ
2024年夏に発表され、わずか1カ月で1000台のオーダーを集めた小型モビリティ「mibot」を知っているだろうか。かなり多くのニュースで話題となったので、その前後シンメトリーのユニークなスタイルが記憶に残っているという人も少なくないだろう。
あらためて紹介すると、mibotを開発しているのは広島県に居を構えるスタートアップ企業「KGモーターズ」である。会社としては2022年7月設立となっているが、社名の由来が「くっすんガレージモーターズ」と聞けば、自動車好きであればピンとくるかもしれない。
そう、KGモーターズは『くっすんガレージ』というチャンネル名で20万人以上のチャンネル登録者を集める人気Youtuberが母体となって生まれているのだ。
KGモーターズ代表の楠一成さんは、もともと自動車のカスタマイズ業界で活躍していた人物。そして「なにか自動車業界で大きなことをやりたい、そのためには知名度が必要だ。有名なYouTubeチャンネルを運営すれば仲間も集まってきてくれるだろう」といった思いで、2018年に『くっすんガレージ』というチャンネルを開設している。
『くっすんガレージ』では、ママチャリを改造したソーラーカーでの日本縦断、ホンダ・モトコンポのEV化、手作りオート三輪といった「ものづくり」精神にあふれるコンテンツを発信している。どれかの動画を見たことがあれば、「くっすん」こと楠代表のクルマに対する熱量の高さは感じられたはずだ。
さて、「mibot」のコンセプトは、持続可能で、自由な移動を実現する小型モビリティロボットというもの。ご存じのとおり、地方を中心に公共交通が減便になったり廃止されたりして、住民の移動が困難になっている地域が増えている。
公共交通の衰退によって否応なくクルマに乗るしかない社会になっているともいえる。しかしながら、そうした地域における住民移動の7割は10km未満だという。自由な移動を実現するためのひとり乗り・短距離に特化したモビリティは社会に求められているのだ。公共交通の減退と同時にガソリンスタンド難民という言葉も目にすることが増えている。AC100Vの家庭用コンセントで充電できるEVであることも必須条件だろう。
そうした社会課題を解決すべく開発されているのが「mibot」である。現在は開発中のため、ボディサイズ以外の細かいスペックは公表されておらず、メカニズムについても最終仕様にはなっていないが、道路運送車両法でいうところの原付ミニカーとして開発されている点は確定している。
原付ミニカーであれば車検は不要であるし、場合によっては自動車任意保険のファミリーバイク特約で保険をつけることもできる。セカンドカー、サードカーといったニーズにはピッタリのカテゴリーともいえるだろう。なお、原付ミニカーを運転するには普通自動車免許が必要なので、その点は誤解なきよう。
原付ミニカーと聞くと、非常にプリミティブなモビリティであると感じるかもしれない。しかし、KGモーターズの「mibot」は、小型モビリティロボットと銘打たれている。
そのココロは、OTAアップデートに対応したSDV(ソフトウェア定義車両)を開発コンセプトに含んでいることにある。現時点では具体的なサービス内容は確定していないが、駆動モーターのセッティングを複数用意してユーザーの好みでダウンロードして利用してもらうといったアイディアもあるという。
また、OTAに対応するということは通信機能をもつということでもある。車両の走行データを収集することで将来的な自動運転(まさにモビリティロボットだ)の実現も目指しているというから注目だ。
さて、こうした小型モビリティは海外にある小型EVのOEM供給だと思うかもしれないが、そうではない。東広島市に量産工場「mibotコアファクトリー」を準備中の、れっきとしたメイドインジャパンなのだ。
「mibotコアファクトリー」での生産開始予定は2025年10月で、最初の8カ月で300台を生産する予定。その後は年間3000台を目指し、最終的には年間10万台の生産能力まで引き上げたいという壮大な目標をもっている。なお、取材時点での予約台数は1911台。今後も予約に応じて生産能力を整えていくというスタイルで、基本的に受注生産のようなかたちを取る予定ということだ。
冒頭、楠さんがYouTubeチャンネルを開設したのは仲間づくりのため、と記したが、実際「mibot」の開発にはヤマハ発動機でオフロード車を開発していた久保昌之さんやマツダでEV開発の経験を持つ上田貴之さんがジョインしている。
こうした背景を知れば、「mibot」が原付ミニカーカテゴリーでありながら、安全性に考慮したドアのあるボディで、空調システムを備えた快適性も備えたモビリティとして開発されていることも納得だ。
開発車両ながら乗り味も高い完成度
実車を見ると、前後シンメトリーの車体デザインや、塗装を省くことのできる色付き樹脂のボディカウルといったデザインはコストダウンのためだが、中身は本格的なモノコックフレームとなり、強度・剛性と軽さの両立を狙っている。さらにウインドウの一部をポリカーボネートにするなどして430kgという軽量なボディを目指しているという。
というわけで、現時点で量産仕様の「mibot」は存在しない。今回は、開発の第2ステージで試作されたT1車両に試乗するという貴重な機会を得たので、その印象を報告しよう。
試乗したのは自動車教習所の教習コース。多くのドライバーが教習時に苦労した記憶もあるだろうクランクや坂道発進といったシチュエーションも試したが、非常にコンパクトなボディもあって、初見でもキビキビと走ることができた。
ブレーキはブースターがないタイプだが、軽量なボディなので踏力が重いという感じはない。むしろ、回生ブレーキが強めのセッティングで、停止以外はワンペダルで運転できるのはEVらしい気もちよさにつながっている。ちなみに、フロントはディスクブレーキ、リヤはドラムブレーキとなっていた。
ステアリングもアシストなしのタイプ。タイヤが145/70R12というひと昔前の軽自動車サイズということもあり、据え切りでは重さを感じる場面もあったが、走り出してしまえばストレスを感じることはなかった。
初期のプロトタイプでの走行実験の結果を受け、T1は足まわりのジオメトリーを見直したことで旋回時の安定性を高めているというが、たしかに30km/hでのコーナリングでもロールが気になることもなく、狙ったとおりに走ることができる。
ボディの中央に座るシングルシーターというレイアウトも含めて、想像以上にスポーツドライビングも楽しめそうだ。置き場所がクリアできるのであれば、都市部のユーザーが趣味的モビリティとして愛用するのも面白いかもしれない。
楠さんによれば「mibotは基本を変えることなく10年20年と作るロングセラーにしたいと思っています。だからこそSDVとしてアップデートできることを考えているのです」という。
つまり、初期タイプを手に入れたからといって、あとから「後期型まで待てばよかった」と後悔することはないだろう。「mibot」が気になるなら、早めにオーダーするのが吉といえそうだ。
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みんなのコメント
・近所の地方銀行に営業外廻り用に置いてある原付一種、アレの代替えに良さそうね。
・高齢者宅への灯油の配達
集めたオーダーとやらは販売時にキャンセルされる予定の客寄せパンダでしょうな