トヨタが実践する「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」にとって最も重要なクルマの1台がWRCラリー・モンテカルロでデビューした。GRヤリスをベースにした競技車両GRヤリス ラリー2だ。GRヤリス ラリー2とはどんなクルマなのか? なぜ重要なのか? を解説していこう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、Red Bull、TOYOTA GAZOO Racing
ついにWRC走った!! ノウハウは市販モデルにフィードバック!? トヨタ「GRヤリスラリー2」の重要性
■WRCラリー・モンテカルロに4台参戦し、全車完走
WRCラリー・モンテカルロには4台のGRヤリスラリー2が出場。フィンランドの新鋭22歳のパヤリが最上位の12位でフィニッシュ
WRC2024シーズンの開幕戦ラリー・モンテカルロはヒョンデのi20 Nラリー1ハイブリッドに乗るヌービルが、トヨタのGRヤリス ラリー1ハイブリッドに乗るオジエを振り切って快勝した。
トップカテゴリーの熾烈な争いは多くの注目を集めたが、もう1台多くのファンの注目を集めたクルマがあった。GRヤリス ラリー2だ。
WRCにはラリー1からラリー5までのカテゴリーがある。ラリー1はいわゆるワークスチームで、現在はトヨタ、ヒョンデ、Mスポーツ・フォードの3チームがエントリーしている。
その下のラリー2は市販車をベースにした競技車両となり、車体とエンジンは2500台以上生産された市販車をベースにしなければならない。つまり、GRヤリス ラリー2はGRヤリスの直系モデルとなる。
エンジンは3気筒の1.6Lターボをレーシングエンジンにしたもので、サイズも全長3995mm、全幅1820mmとGRヤリスと大差ない。ただ、足回りはストロークが出る4輪ストラットになり、ミッションはシーケンシャルの5速だ。
意外と思われるかもしれないが、ラリー2車両の最高出力は300馬力ほどで思ったほどではないが、コーナーを限界まで攻め切るサスペンションやボディ剛性、そしてブレーキを持つモデルといえばわかりやすいかもしれない。
また、ラリー2ではラリー1同様、2022年からカーボンニュートラル燃料が使われ、環境にも配慮している点も覚えておきたい。
ラリー1に注目が集まるが、目の肥えたファンはラリー2車両が市販モデルと直結していることもあり、愛車目線で応援している。だからGRヤリス ラリー2のポテンシャルが注目されるというわけだ。
WRCラリー・モンテカルロには4台のGRヤリス ラリー2が出場し、見事4台とも完走した。最上位はサミ・パヤリの12位だった。サミ・パヤリはフィンランド人の22歳、今後ラリー1に昇格する可能性のあるドライバーだから覚えていてほしい。
ちなみにラリー2にはシュコダ・ファビア、シトロエンC3、ヒョンデi20 N、フォード・フィエスタなどが鎬を削っており、モンテカルロではシトロエンC3のヨアン・ロッセルが勝ち、総合でも8位と強さを見せた。
■ヤリス ラリー2はトヨタが本気でWRCに向き合うという証(あかし)
GRヤリスに比べるとフェンダーが大きく張り出しているように見えるが、15mmだけ大きく全幅は1820mmだ
トヨタはWRCでマニュファクチャラーズ、ドライバー、コ・ドライバーの3冠を3年連続で達成しているが、また景気が悪くなるとWRCを辞めてしまうのではないか? といった声がこれまであったことは事実。
しかし、GRヤリス ラリー2の登場は、トヨタがWRCと本気で向き合い、撤退などしないというメッセージになった。
というのもラリー2カテゴリーはチームに車両を販売し、部品なども供給していくビジネスでもある。ラリーを愛し、チャレンジしたいカスタマーは資金さえあれば購入できる。
トヨタはこのカスタマーたちの声に耳を傾け、サポート体制を強化していなければならない。ラリー2はお客さんと直接向き合うという点がラリー1との大きな違いだ。
トヨタがWRCに本気で向き合うというメッセージになるとは、単にトップカテゴリーで勝つだけでなく、「一緒にラリーを楽しみ文化を作っていきます」という意味として受け止められるからだ。
ちなみにラリー2の価格はどのくらいかというと、FIAによってラリー2車両の上限価格は決まっており、2023年12月時点で26万766ユーロ(約4188万円)となっている。
ラリー2カテゴリーで戦うチームはセミワークスというところもあるが、プライベーターも多い。ラリー2マシンを購入し、メンテし、世界各国で開催されるWRCを転戦する。走る道はトップカテゴリーのラリー1と同じだ。
ドライバーやコ・ドライバーにとってラリー2で強さを見せることは、ラリー1のワークスドライバーになるチャンスを手に入れることでもある。
■市販ベースのラリー2だからこそ、GRヤリスにフィードバックできる
ラリー2の車両開発とサポート全般を取り仕切る行木 宏プロジェクトリーダー
GRヤリス ラリー2の責任者、行木 宏Rally2プロジェクトリーダーに話を聞いてみた。
「車両はフィンランドのユバスキュラにあるTGR-WRT(トヨタ・ガズー・レーシング ワールド・ラリー・チーム)のファクトリーで生産しています。ラリー1も作っているので強いクルマを作るノウハウが生かされています。
またラリー2で重要なのはサポート体制です。例えばカスタマーにいかに早くパーツやサービスを提供できるか? という点が重要になります。ラリー2のパーツはオンラインでオーダーでき、空輸で届けるシステムにしました。
とにかく参戦1年目なので、いろいろなお客様の声を聞くことが重要だと思っています。ラリー・モンテカルロでは出場する4チームすべてのミーティングに出させてもらっています」。
行木さんによるとGRヤリス ラリー2の評判は上々で、年間40台ほどの生産を見込んでいるという。GRヤリスラリー2のサポート体制を充実し、ラリーファンに愛されるようになれば、GRヤリスの人気にもそのままつながっていく。
なお日本の第1号車の納車先は“普通のクルマ好きおじさん”のモリゾウさん。納車されたあと勝田範彦選手に貸し出し、全日本ラリーを走るという。
そのほかコバライネン選手、奴田原文雄選手もGRヤリス ラリー2で走るというから楽しみだ。
GRヤリス ラリー2がWRCや全日本ラリーに参戦し鍛えられることで、さまざまな技術や情報がフィードバックされ、GRヤリスが強くたくましく進化することになる。
市販車の開発に活かすこと、それがラリーという競技にメーカーが参戦する一番大きな狙いでもある。 WRCや全日本ラリーでのGRヤリス ラリー2の参戦がクルマと人をどんなふうに育てていくのか? 興味深い物語が始まった。
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みんなのコメント
ライバル会社の人か、下請けでイジメられている人なのかな?
つらいっすね。
WRC2という下位クラス向け。