エリーゼS1のデザイナー自ら再構築
英国を拠点とするバッテリー技術企業ナイオボルト(Nyobolt)は、7月13日に開幕した英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023で、先進的な急速充電機能を備えたEVコンセプトカーを公開した。
【画像】6分でフル充電可能な先進EVスポーツ【ナイオボルトのEVコンセプトを写真で見る】 全20枚
ロータス・エキシージSのシャシーをベースに、高度なバッテリー・ハードウェアを搭載したコンセプトカーだが、将来的に販売が開始された場合、年間25台の限定生産になると予想されている。実証用のプロトタイプによるテストを経て、約1年後に市販化が決定される見込みだ。
重量はわずか1246kgで、最高出力475psと最大トルク50.9kg-mのパワートレインを搭載している。従来のエンジン搭載スポーツカー並みのパフォーマンスと、約250kmの航続距離を両立させるとしている。
今年11月より、英国において走行テストが開始される予定だ。コンセプトカーは、ロータス・エリーゼS1を現代的に再構築したデザインを特徴としている。
現在ゼネラル・モーターズに在籍し、主にエリーゼS1で知られるデザイナーのジュリアン・トムソン氏は、2021年にこのコンセプトカーのスケッチを描いた。その後、かつての上司で元JLRのデザイン責任者イアン・カラム氏が設立したカラム・デザイン・エージェンシーによって実車化へと至った。
英ケンブリッジに本拠を置く新興企業のナイオボルトは、コンセプトカーを技術デモンストレーションとして披露している。同社によると、タングステンアノードによって充電時間を「わずか数分」まで短縮できるという。
ナイオボルトは、特許を取得した急速充電技術が「バッテリー性能の可能性を解き放つ」ことを期待し、「今すぐ製造可能で拡張性があり、ガソリン車やディーゼル車への給油と同じくらい充電が便利になる」としている。
バッテリーの課題解消へ 先進技術投入
ナイオボルトのサイ・シバレディCEOによると、同社はこれまでに7000万ポンド(約1270億円)の資金を調達しており、開発したバッテリーはすでにロボット産業の産業用アプリケーションで使用されているという。
英国に素材製造拠点を開設する計画で、最終的には家電、エネルギー貯蔵、自動車などさまざまな用途向けに「数百万個」のユニットを生産したい考えだ。
ナイオボルトによると、同社のバッテリーは現在の市販EVで使用されているものよりも小型・軽量だが、リサイクル可能で低価格での生産が可能だという。既存のインフラを利用し、わずか6分でフル充電、4分で80%まで充電できるとのこと。
同社のバッテリーは「大幅な性能低下」を起こすことなく2000回以上の急速充電が可能で、アノードに負担をかけない技術によってバッテリーの寿命を延ばし、30万マイル(48万km)走行できるとしている。
こうした急速充電技術は、充電プロセスをシンプルにすることで実現したという。バッテリーをよりパワフルで効率的にするために、新しい材料、セル設計、ソフトウェア制御が開発された。
シバレディ氏は、同社は「待ったなし」の充電イノベーションを開発しようとしていると語った。英国をはじめ世界中でEVの普及が進む中、「充電時間を数時間から数分に短縮する」ソリューションが求められているという考えだ。
この技術はまた、充電時間の遅さ、バッテリー材料へのアクセス、バッテリーの劣化問題など、バッテリー開発における障壁を一部緩和することも視野に入れている。カラムのマネージング・ディレクターによれば、ナイオボルトの技術はこれらの問題に対する解決策を示すものだという。
ナイボルトとカラムは、同技術を使ったコンセプトカーをさらに共同開発する予定だが、それがどのような形になるのか、またいつ見られるのかはまだ明らかにしていない。
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