初代フォレスターは1997年にインプレッサをベースに車高を上げ、2リッター水平対向ターボエンジン+MTといったスポーティな仕様を設定するなど、オンロード性能の良さをうたったクロスオーバーSUVの先駆的存在だった。それから約20年。少しずつカタチを変えながら、フォレスターは世界でもっとも売れているスバル車となった。
新型でも車体骨格をインプレッサと共にする点は同じだ。現行インプレッサから採用したスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)は、剛性が大幅にアップしており、新型フォレスターにも良い効果があることは想像に難くない。
エンジンバリエーションは2種類の設定。2.5リッター水平対向4気筒の自然吸気と、もう一つが、かつてのXVハイブリッドの技術を活用した2リッター水平対向4気筒にモーターとバッテリーを組み合せた「e-BOXER」だ。
スバルファンのあいだでは物議を醸すかもしれないが、走行性能を重視したスバルお得意のターボ仕様は廃止となった。もちろん後に追加される可能性は否定できないが、北米を主戦場とするスバルにとって環境性能対策は喫緊の課題なのだ。従来は燃費の良いイメージのなかったフォレスターだが、「e-BOXER」によって劇的にとは言えないが、リッター18.6km(JC08モード燃費)にまで向上した。
まず184ps/239Nmを発揮する2.5リッター仕様に乗った。SGPによる車体剛性のアップによって明らかに静かで乗り心地がよくなった。パイロンスラロームのようなセクションも試してみたが、ロールはそれほど大きくなく、サスペンションはたっぷりとストローク感がある。背の高いSUVであることを忘れさせるくらいフラットに走る。
「e-BOXER」は、ターボのかわりにモーターでアシストすることを狙い、145psのガソリンエンジンに13.6ps/65Nmを発揮するモーターを加えた仕様だ。バッテリーはXVがニッケル水素だったのに対し、リチウムイオンに変更。走り出しはモーターのアシストもあってスムーズだが、ワインディング路での試乗だったためアクセル開度が高まるにつれ、高回転域ではエンジンのうなり音が少々耳につく。ハイブリッドにターボにかわるパワー感を期待していると少々物足りなく感じるだろう。「e-BOXER」はCVTのケース内にモーターを収めたコンパクトな設計であることがウリであり、低速からのトルク感を活かし高速道路などよりも日常域で使うほうがマッチしている。
多少ぬかるんだオフロードコースも試してみた。4WDモード「X-MODE」は、滑りやすい路面では「SNOW・DIRT」モードを、タイヤが埋まってしまうようなシーンでは、「DEEP SNOW・MUD」モードをと、ダイヤル設定がより現実に即し使いやすくなった。従来もぬかるみや深い雪にタイヤが埋まった状態から脱出するときに同等の性能は備えていたが、いったんVDCをオフにして、という操作にひと手間が必要だったため、あまり使われていなかったという。傾斜角30度を超える急坂路もなんなくクリアする。トルクの立ち上がりのいい「e-BOXER」のほうが、実は悪路向きだ。
また「e-BOXER」搭載モデルは、スバル初の乗員認識技術ドライバー・モニタリング・システム(DMS)を備える。これはアイサイトのカメラ技術を応用したもので、ダッシュボードに内蔵したカメラで5人までドライバーの顔認証登録が可能。運転席に座ると事前登録した情報に則って、シートポジションやドアミラー角度を再現するおもてなし機能を備えた。
また走行中に一定時間以上目を閉じていたり、顔の向きが前方から外れたりしているときには警報音や警告表示でドライバーの注意を喚起する。いったん登録しさえすれば、ドアを開いた瞬間からすぐに顔を認識して調整してくれる。家族で1台をシェアして使っているようなケースではとても便利だろう。将来は顔認証による盗難防止や、アイサイトとの連携による高度な運転支援などをおこうといった発展の可能性も高いだろう。
正直にいえば、フロントから見ると新旧見分けのつかないエクステリアデザインは、もう少しなんとかしても良かったのではないかと思った。実際のところ、フォレスターはグローバルの販売台数の約3割を占める稼ぎ頭だけに冒険できなかったというのが、実情のようだ。しかし、それ以外の点では、ハンドリングも乗り心地も静粛性も内装の質感も、後席の居住性も乗降性も、全方位で良くなっていた。そういう意味ではヒット作だった先代オーナーたちが欲しくなる、マジメなモデルチェンジというわけだ。
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