「品行方正」などとはまるで無縁、だがそこがいい。唸りを上げ、荒々しく道を駆け抜けてニッポンのクルマ好きたちを夢中にさせた“じゃじゃ馬たち”がいた。1960~2010年代に掛け、しのぎを削った国産“名”暴れん坊たちを振り返る!
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三菱の大黒柱 次期アウトランダーは偉大な初代の功績を越えることができるのか?
※本稿は2020年5月のものです/文:片岡英明/初出:『ベストカー』 2020年6月10日号
■1960年代’s Best…ダットサン フェアレディ2000(1967年)
●次点:マツダ ルーチェ ロータリークーペ(1969年)
暴れん坊グルマの代表が、1967年春に登場したフェアレディ2000だ。
ダットサン フェアレディ2000…Zの前身であるダットサンフェアレディ。1962年登場の1500、1965年登場の1600に追加されるかたちで1967年にデビューした2000。直4、2L SOHC、U20型エンジンは145psを発生した
「型式SR311」で呼ばれる日本初の本格派オープンスポーツで、スパルタンという言葉がよく似合う。
シャシーは基本的に初代ブルーバードと同じラダーフレーム、サスペンションはダブルウィッシュボーンとリーフスプリングの古典的なレイアウトである。
搭載するのはソレックスのツインキャブで武装した2LのU20型4気筒SOHCだ。
車重は910kgだから馬力あたり重量は6.3kgになる。軽量ボディにパワフルなエンジンの組み合わせ、しかも古典的な足回りだからジャジャ馬だ。
アクセルを強く踏み込むとすぐにグリップを失い、高速コーナリングではリアが流れてテールハッピーに。が、カウンターを当てて走るのが楽しいスポーツカーだった。
1969年秋に登場したマツダのルーチェロータリークーペはエレガントなフォルムの高級パーソナルクーペである。新開発の13A型ロータリーエンジンはパワフルだ。
マツダ ルーチェロータリークーペ…13A型ロータリーエンジンを搭載したFFスポーツクーペ。4輪独立サスペンションで126ps/17.5kgmを発生
しかも驚くほど滑らかなパワーフィールだし、静粛性も高かった。だが、ステアリングを握ってみると暴れん坊なのである。
セダンはFR車だが、クーペは提携していたNSU社のRo80を意識してか、当時としては珍しいFF方式を採用した。
アンダーステアが頑固で曲がらないし、初採用のパワステも手応えがない。優雅な外観とは裏腹に、乗りこなすのが大変なクルマだった。
■1970年代’s Best…トヨタ カローラレビン/スプリンタートレノ(1972年)
●次点 いすゞ ジェミニZZ(1979年)
カローラは1970年5月に2代目になり、スプリンターは兄弟車になった。その2年後の1972年3月、稲妻モデルが加えられている。それがカローラレビンとスプリンタートレノだ。
トヨタ カローラレビン/スプリンタートレノ…86のご先祖様にあたるTE27レビン/トレノ。2T-G型1.6L DOHCエンジンは115psを発生し、最高速190km/hを誇った。迫力のオーバーフェンダーに萌えた
わずか855kgの軽量コンパクトなクーペボディにぶち込んだのは、セリカとカリーナの1600GTに積んでいる1.6Lの2T-G型4気筒DOHCエンジン。
最高速度は190km/h、ゼロヨン加速も16.3秒の俊足だ。サスペンションはストラットとリーフスプリングによるリジッドアクスルだし、ホイールベースも短いから走りはジャジャ馬だった。
だが、暴れ馬の手綱を握り、御する楽しさは格別だ。
暴れん坊のもう1台は、今では乗用車部門から撤退したいすゞのジェミニZZ(ダブルズィー)である。
いすゞ ジェミニZZ…直4、1.8L DOHCエンジンを搭載したFRの硬派なスポーツセダン&クーペ。最高出力130psで5速MTを搭載し、ラリーシーンでも大活躍した
ジェミニはGMのグローバルカー構想から生まれたファミリーカーだが、ZZは117クーペに積んでいた1.8Lの4気筒DOHCエンジンを積み、痛快な走りを披露した。
エンジンもよかったが、それ以上に秀逸だったのが欧州直伝の足回りだ。だからラリーに出ても速い走りを見せつけている。
■1980年代’s Best 日産 スカイライン2000RSターボ(1983年)
●次点 スズキ アルトワークス(1987年)
6代目のR30型スカイラインに加えられたRSシリーズは、パワーウォーズの引き金を引いた1980年代の傑作だ。今も語り継がれているのが、1981年10月に登場した2000RSである。
日産 スカイライン2000RSターボ…直4、2LターボのFJ20ETエンジンを搭載したR30型RSターボ。前期型は190psだったが、インタークーラーを装着した後期型は最終的に205psまでアップ。独特のフロントマスクは「鉄仮面」と呼ばれた
新設計のFJ20E型4気筒DOHC4バルブエンジンは豪快なパワーフィールで、排ガス対策車とは思えないほど猛々しい。
足はストラットとセミトレーリングアームを受け継ぐ。だが、減衰力を切り換えられるようにして自慢のフットワークに磨きをかけた。
最初は14インチの70タイヤだったし、パワステもないので力でねじ伏せるようにしないと思うように走るのは難しい。
1983年にRSターボを加え、その最終型はインタークーラーターボで武装している。走りは鮮烈だ。スポーツモデルに乗り慣れていないと、恐怖を感じるほど速い走りを見せた。
7代目のR31スカイラインに乗ると、刺激の違いの大きさに驚かされる。
同じ時期に衝撃を受けたのがシティターボだ。後期モデルはゼロヨンを15秒台で走る実力を秘めているが、かなりジャジャ馬だった。トルクステアが強くて曲がらないし、背も高いから横風にあおられ直進安定性も悪かったのだ。
が、これ以上に強烈な印象を残したモンスターが、1987年に登場した初代アルトワークス。
スズキ アルトワークス…2代目アルトに設定されたワークスは軽ターボスポーツの元祖的存在。3気筒、4バルブDOHCターボは550ccで64psを発生。その後の馬力規制のきっかけとなったエンジンだった。FFと4WDがあった
心臓は3気筒DOHC4バルブターボだ。わずか550ccとは思えないほどパンチがあり、1万回転までシュンと回った。
軽商用車だから足回りはコストをかけていないが、シビれる走りを見せる。トレッドが狭いから頑張りすぎるとスリリングだが、走りはしたたかだった。
■1990年代’s Best…三菱 GTO(1990年)
●次点 トヨタ スープラ(1993年)
280psの自主規制が敷かれた1990年代のスポーツモデルは最大トルクを増強させることに力を注いでいた。なかでも強烈な印象を残したのが三菱GTOだ。
三菱 GTO…1990年から2001年まで販売していたご長寿スポーツ。V6、3Lツインターボはデビュー当初から280psを発揮し、40kgmを超えるトルクで迫力の加速を見せた。改良を重ね、走りの質が大幅に向上した
エンジンは3Lの6G72型V型6気筒DOHCで、リーダーはツインターボを装着する。最大トルクは国産最強の42.5kgm(後期型は43.5kgm)だった。
低回転からトルクがドバッと湧き出し、1.6tの軽くもないボディを苦もなくリミッターの世界へといざなう。その加速は暴力的だ。
オールホイールコントロールと呼ぶフルタイム4WDを採用しているから、安心してコーナーを楽しめる、なんて思っちゃいけない。
最初の試乗会はサーキットだったが、あまりの速さに制御不能に陥り、多くのジャーナリストがコースの外に飛び出したのだ。
三菱GTOは「直線番長」のジャジャ馬だったが、FRスポーツにも暴れ馬がいる。1993年に登場したA80型スープラだ。
トヨタ スープラ…直6、3LのNAとターボがあり、ターボの最大トルクは最終的に46.0kgmに達した。グレード名のRZ、SZ-R、SZは昨年復活した現行GRスープラにそのまま使われている
こちらも3Lだが、直列6気筒DOHCで、RZはツインターボで武装する。速さより操る楽しさを重視した味つけだったが、初期モデルはハンドリングがピーキーだ。
限界が探りにくく、これを超えると一気にリアが流れた。
後期モデルになると懐が深くなったが、体育会系スポーツモデルであることに変わりはない。最後に軽自動車でスリリングだったのは、ワークスのエンジンをミドシップにレイアウトしたマツダAZ-1。初心者にはとても扱いにくい。
■2000年代’s Best…日産 GT-R(2007年)
●次点 三菱 ランサーエボリューションX(2007年)
2002年夏、地球にやさしくないスポーツモデルは生産終了に追い込まれている。しばらく歯ごたえのあるスパルタンモデルは出てこないだろう、と思っていたが、2007年秋に異次元の速さを秘めた日産GT-Rが鮮烈なデビューを飾っている。
日産 GT-R…2007年に登場した国産最強スポーツ。V6、3.8Lツインターボは480psからスタートし、現在のNISMOは600psに達している。登場から13年が経っているものの、最強の座は譲らず
エンジンはVR38DETT型と名づけられた専用の3.8LのV型6気筒DOHCツインターボだ。
これにゲトラグ製のツインクラッチ6速DCTを組み合わせた。先代の2倍の馬力だから驚くほどパワフルで、高回転の伸びとパンチ力も文句なしである。
ハンドリングも4WDとは思えないほど軽やかだ。が、初期モデルは尖った性格で、乗り心地も荒々しかった。不用意にアクセルを開けると簡単にホイールスピンを起こしたし、操舵フィールも精緻さに欠ける領域がある。
同じ年に誕生したランサーエボリューションXも刺激的な4WDスポーツだ。
三菱 ランサーエボリューションX…2007年から2015年まで販売された「最後のランエボ」。今でも全日本ラリーで活躍しているのはさすがだ
エンジンは全域パワフルで、実用域のトルクも豊かだから扱いやすいと感じる。三菱独自のS-AWCも制御が絶妙だ。
が、性能を引き出しやすいので、限界を超えた時や路面のミューが変わった時はフロントの重さを感じさせ、動きがナーバスになる。こうなると修正するのが難しい。そんなクルマだった。
■2010年代’s Best…スバル WRX STI tS タイプRA(2013年)
●次点 ホンダ シビックタイプR(2015年)
3代目インプレッサWRX STIの最終モデルとして、2013年夏に300台が限定販売されたのがtS タイプRAだ。
スバル WRX STI tS タイプRA…2013年7月に300台限定で販売されたスペシャルモデル。WRカー譲りのクイックステアリングのほかスペシャルアイテム満載。価格は441万~508万2000円だった
熟成の域に達したEJ20型水平対向DOHCターボエンジンは308psを発生し、8000回転を超えてもパワーがほとばしる。
ハンドリングもキレのいいものだった。11:1のクイックなステアリングギア比を採用し、俊敏な走りを手に入れている。
また、ボディに補強パーツを組み込み、リアのリンクはピロボール構造とした。だから高速コーナーは得意で、気持ちよくクルマが向きを変える。
4輪のスタビリティ能力は驚くほど高い。ただし、パワフルだから調子になりすぎると痛い目に遭う。
2015年夏にベールを脱ぎ、限定発売された4代目のFK2型シビックタイプRは痛快なFFスポーツだ。
ホンダ シビックタイプR…2015年にニュルFF車最速を謳って、国内750台の限定で登場した4代目FK2。直4、2Lターボは310psを発揮した
ニュルブルクリンクの量産FF車最速を誇り、当時の2Lモデルで最強の310psを絞り出した。
エンジンは2LのK20C型4気筒DOHCスクロールターボで、レスポンスは鋭いし、高回転の伸びも素晴らしい。6速MTも小気味よく決まる。
トルクステアを上手に抑え込んだ意のままのハンドリングもみごとだ。が、限界レベルは驚異的に高いから、本気で攻めると疲労困ぱいになる。体力が要求される硬派だ。
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みんなのコメント
GT-Rとかとひとくくりで比較するのは止めれって、で、この記事書いた人は初代フェアレディとか乗ったことあんの!?