■今では絶滅したリトラクタブルヘッドライトを採用した3ドアハッチバッククーペ
スポーツカーと呼ばれるクルマは明確な定義はありませんが、一般的には見るからに速そうなクサビ型のフォルムに、高性能なエンジンを搭載したクルマが当てはまるのではないでしょうか。
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そうしたスポーツカーは2000年代初頭に、排出ガス規制の強化やニーズの変化から激減してしまいました。
また、かつてスポーツカーの必須アイテムだったといえるのがリトラクタブルヘッドライトで、もともとは欧州製スーパーカーから広まり、そのものズバリ「スーパーカーライト」や「隠しライト」とも呼ばれました。
しかし、衝突安全性の問題やコストや重量増を招くとして、現在、リトラクタブルヘッドライトのクルマは消滅。
そこで、隆盛を極めていた頃に誕生した、リトラクタブルヘッドライトの高性能3ドアハッチバッククーペを、5車種ピックアップして紹介します。
●日産4代目「シルビア」
前出のセリカが登場する以前、日産は1965年に国産スペシャリティカーの先駆け的存在である初代「シルビア」を発売。製造工程の多くがハンドメイドで高額かつ高級なモデルとなっていました。
一旦は生産を終えたシルビアですが、1975年に2代目が登場すると量産スペシャリティカーとなり、3代目からは高性能化が一気に進みます。
そして、1983年に登場した4代目は流行のリトラクタブルヘッドライトを採用。デザインもクサビ型を強調するウェッジシェイプで、見た目はよりシャープな印象です。
ボディは2ドアクーペと3ドアハッチバックが設定され、駆動方式は伝統のFRを踏襲。
エンジンラインナップは多彩で、トップグレードには「スカイラインRS」に搭載されていた2リッター直列4気筒DOHCの「FJ20E型」に加え、「スカイラインRS-X」と同じくターボを装着した最高出力190馬力(グロス)の「FJ20ET型」エンジン車を設定。
姉妹車「ガゼール」も3代目から継承し、基本的なスタイルは変わりませんがフロントグリルやテールライトのデザインなどが異なります。
なお、シルビアが空前の大ヒットとなったのは次世代の5代目ですが、この4代目のスタイルもかなり人気がありました。
●三菱「スタリオン」
三菱は旧態依然とした「ギャラン ラムダ」に対し、欧州でも通用する次世代のスポーツカーとして1982年に「スタリオン」を発売。
ボディはリトラクタブルヘッドライトを採用した3ドアハッチバッククーペで、シャープなウェッジシェイプのフォルムは王道のスポーツカーといえました。
トップグレードに搭載されたエンジンは2リッター直列4気筒SOHCターボで、145馬力(グロス)を発揮。1983年にはインタークーラーを装着して175馬力(グロス)に向上し、1984年には可変バルブシステムを採用して最高出力200馬力(グロス)にまでアップ。2リッターエンジン車ではトップクラスへと躍り出ました。
そして、1987年には2リッター車にブリスターフェンダーの輸出用ワイドボディを採用した限定車「GSR-VR」が登場し、さらに1988年にはワイドボディはそのままに2.6リッターエンジンを搭載した、カタログモデルのGSR-VRが発売されました。
2.6リッター車の最高出力は175馬力(ネット)ながらトルクが太くGTカー的な要素が強くなりましたが、そのスタイルは斬新かつ迫力のある唯一無二のスタイルといえます。
しかし、同世代に日産「Z32型 フェアレディZ」やトヨタ「A70型 スープラ」などが存在したことから時代遅れ感は否めず、1990年に後継車の「GTO」が発売されたことで生産を終えました。
●トヨタ5代目「セリカ」
1970年に誕生したトヨタ初代「セリカ」は、スペシャリティカーの普及拡大を狙って開発されたモデルです。当時は特別な存在だったDOHCエンジン車を設定し、内外装と装備のセミオーダーが可能な「フルチョイスシステム」を導入するなど、先進的な面もありました。
その後、セリカは代を重ね1985年にFF化された4代目がデビュー。さらに1986年にはハイパワーなターボエンジンにフルタイム4WDを組み合わせた「セリカ GT-FOUR」が登場し、高性能スポーツカーというイメージが定着します。
そして、1989年というバブル絶頂期に5代目が発売。基本的なコンセプトは4代目から踏襲されましたが、外観は丸みをおびた流麗かつボリューム感のあるフォルムへと変貌を遂げました。
ボディはリトラクタブルヘッドライトの3ドアハッチバックを基本として、オープンカーの「セリカ コンバーチブル」を設定し、北米市場では2ドアクーペもラインナップされました。
4代目と同じくトップグレードはGT-FOURで、最高出力225馬力を誇る2リッター直列4気筒DOHCターボ「3S-GTE型」エンジンを搭載した4WDモデルで、ラリーでも活躍。
また、限定モデルとして世界初の油空圧式のアクティブサスペンションを装備した「アクティブ スポーツ」や、ワイドボディの「GT-FOUR A」、競技用ホモロゲモデルの「GT-FOUR RC」などを展開し、スポーツカーとしての地位を不動のものとしました。
ちなみに当時の新車価格(消費税含まず)はGT-FOURが268万円、アクティブ スポーツが320万円と、やはりバブリーだったといえます。
■欧州ではライバル関係にあった2台のFRスポーツカーとは!?
●マツダ2代目「サバンナRX-7」
マツダを代表する高性能エンジンというと今はなきロータリーですが、その普及とイメージアップに大きく貢献したのが1978年に登場した初代「サバンナRX-7」といえます。
トヨタ「2000GT」以来となるリトラクタブルヘッドライトを装備し、空気を切り裂くようなフォルムはピュアスポーツカーに相応しいものでした。
そして、1985年には2代目サバンナRX-7(FC3S型)がデビュー。初代の古い設計だったシャシは大きく進化し、185馬力を発揮する654cc×2ローター・ロータリーターボエンジンを搭載。
外観はリトラクタブルヘッドライトを継承しつつ、均整のとれたスポーツカーとしての美しいフォルムへと変貌しました。
また、日本車では初となる対向4ピストン・アルミブレーキキャリパーの採用や、フロントのホイールハブまでアルミ化するなど、スポーツカーとしての素質も大きく進化。
1989年のマイナーチェンジでは最高出力205馬力まで向上し、2シーターで専用のサスペンションが与えられた限定車「∞(アンフィニ)」や、シリーズで唯一のオープンカー「カブリオレ」もラインナップされました。
2代目サバンナRX-7は欧米でも高い人気を誇り、後述の欧州製スポーツカーのライバルと評されました。
●ポルシェ「944」
ポルシェを代表するモデルは長い歴史のある「911」シリーズですが、これまで幾度となくより安価なエントリーモデルも輩出してきました。
そのなかの1台が1975年に誕生した「924」で、多くのコンポーネンツにフォルクスワーゲン(アウディ)の部品を使うことでコストダウンを図った、4シーターFRスポーツカーとして開発。
その後、ターボエンジンを搭載するなど高性能化を図り、1983年には次世代モデルの「944」が発売されました。
ボディは924をベースとしたリトラクタブルヘッドライトの3ドアハッチバックですが、よりワイドでボリューム感のあるフォルムに代わり、スポーツカーとして迫力も備わっています。
発売当初、搭載されたエンジンは自社開発した最高出力163馬力の2.5リッター直列4気筒SOHCを搭載。その後、220馬力を誇る「944ターボ」、DOHC化されたエンジンを搭載する「944S」、1989年には3リッターDOHCエンジンで211馬力を発揮し、ターボモデルに迫るパフォーマンスを実現した「944S2」が登場するなど、改良とバリエーションの拡充が続けられます。
また、トランスミッションは5速MTを基本に3速ATも設定。フロントにエンジン、リアにトランスミッションを配置するトランスアクスルを採用して、前後重量配分のバランスを最適化されていました。
前出のサバンナRX-7とは性能的にライバル関係にあり、人気も拮抗していたといえます。
944シリーズは1991年に生産を終え、次世代でキープコンセプトとした「968」にバトンタッチ。その968も1995年に消滅し、すべてを一新したミッドシップカーの「ボクスター」が新たなエントリーモデルとなりました。
※ ※ ※
国産車でリトラクタブルヘッドライトを初めて採用したのは前述のトヨタ2000GTですが、最後のモデルとなったのは「FD3S型 RX-7」です。
メリットだけでなくデメリットもあるリトラクタブルヘッドライトですが、やはりスポーツカーらしいフォルムには重要なアイテムでしょう。
いまは歩行者保護の観点から、フロントエンジンのモデルは低いボンネットを採用するのが困難なため、極端なウェッジシェイプのクルマは成立しませんが、リトラクタブルヘッドライトが一世を風靡していた1980年代のスポーツカーのスタイルは、今見てもワクワクしてしまいます。
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