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「全然、レベチ」な近くて遠いFIA F2とF1。松下信治に聞くF1デビュー3人の印象と日本との距離感

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「全然、レベチ」な近くて遠いFIA F2とF1。松下信治に聞くF1デビュー3人の印象と日本との距離感

 2024年のF1のドライバーラインアップは前年から大きな変化がなかったが、2025年に関してはすでに3名のルーキー(アンドレア・キミ・アントネッリ/メルセデス、ジャック・ドゥーハン/アルピーヌ、オリバー・ベアマン/ハース)のレギュラーデビューが決定しており、今年シーズン途中から参戦しているリアム・ローソン(RB)、フランコ・コラピント(ウイリアムズ)を加えると、5名のFIA F2経験ドライバーがF1にステップアップすることになった。

 この5名に共通しているのは、FIA F2でチャンピオンを獲ったドライバーではないということ。ドゥーハン(ランキング3位/2023年)、ローソン(ランキング3位/2022年)などは実績があるが、他の3名についてはそこまで目立った結果を残しているわけではない。特にアントネッリはFIA F2のルーキーであり、コラピントも2023年に2戦のスポット参戦がある、ほぼルーキーだ。

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 前身のGP2時代より、FIA F2はチームの格差やマシン、エンジンの個体差が大きく、ドライバーの実力とリザルトが一致しずらいという状況が見られていたが、その中でF1にステップアップするドライバーは、その実力をどのように見分けられているのか。DAZNのF1中継、FIA F2の解説者であり、スーパーGTに参戦中でGP2~FIA F2で累計5シーズンを戦った松下信治(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8)に話を聞いた。

⚫︎松下信治「アントネッリは今のF2で一番速いドライバー、コラピントは強いドライバーという印象」

 今季、FIA F2で実質ルーキーである2名(ベアマン、コラピント)がF1にデビューを果たして、いきなり好結果を残しているが、ふたりとも今季のFIA F2では目立った成績を残しているわけではない。その状況を松下はどのように見ているのか。

「僕はドライバーによって違うと思っていて、たとえばコラピントはF2のトップでもないないチーム(MPモータースポーツ)で、それなりに頑張っているのは見えていました。優勝とか目立ったリザルトはないですけど、速いドライバーだとは思っていましたね」

「ベアマン(プレマ・レーシング)に関しては一発の速さはあるのですけど正直、レース運びとかを見ていると僕はまだ完成されたドライバーとは言い難いかなと思います。フェラーリでいきなり乗ってポイントを稼いだレース(第2戦サウジアラビアGP)はたしかにすごかったですけど、来年のハースで(エステバン)オコンとペアになって、どうなるのか。オコンは一発も速くてレースも強いイメージがあるドライバー。僕としてはベアマンはF2のレースでクラッシュが多いイメージもあるので、本当に大丈夫かなという部分があります」

 松下はDAZNの中継でアントネッリのポテンシャルの高さを述べていたが、その印象は今も変わらないようだ。

「アントネッリに関してはF1で走行した時、モンツァの予選で最終セクターでクラッシュしてしまいましたが、その周のオンボード映像を見る限り、速いドライバーだなと思いました。優勝した時のレースも2番手以下をぶっちぎっていましたし、雨のセッションでも速いんですよね。雨で速いドライバーは本当にドライビングのセンスがあると思いますね。まだ18歳で荒削りな部分がありますけど、アントネッリが今のF2で一番速いドライバー、コラピントは強いドライバーという印象があります」と松下。

「でも、コラピントは来年、もうF1のシートは空いていないのかな。おそらくF1は今シーズンのみになっちゃいそうですけど、F2で埋もれていた才能が出てきたなという印象があります。F2ではタイヤをうまく保たせて、本当にいいレースをしていましたから。F2のチームの事情というのもありますけど(F1に行けるか行けないかは)ドライバーによると思いますね」

⚫︎松下が戦ったF1ドライバーたちとF1へのステップアップに必要なもの

 松下がGP2、FIA F2に参戦していた時の同期は、現在のF1ではそうそうたるメンツになる。

「ジョージ(ラッセル)、チャールズ(シャルル・ルクレール)、オコン、ランド(ノリス)、周(冠宇)、ピエール(ガスリー)、そしてアレックス(アルボン)はチームメイト。(ストフェル)バンドーンも(ニック)デ・フリース、ニコラス(ラティフィ)もF1にいましたけど、いなくなってしまいましたね」

 自身もF2からF1に上がれず悔しい思いを経験しているが、F2からF1に上がることのできるドライバー、できなかったドライバーの違いを松下はどのように感じているのか。

「F2のチーム力の差が大きいのは今に始まったことではないですけど、リカルド(リチャード)フェルシュフォー(トライデント)はマカオGP(2019年)でも優勝してまだ23~24歳ですけど、レッドブルの育成から外されてしまったんですよね。彼のように才能のある若いドライバーはたくさんいるんですけど、運とタイミングが合わないドライバーもたくさんいる。それを含めて、僕はドライバーの実力だと思っています」

「僕も実力が足りなかったですけど、チャンスに恵まれていないドライバーはたくさんいますよね。今のF1はメーカー系の育成システムに入らないと行けないですし。ただ、ひとつ言えることは、F1に行ったドライバーは全員、センスも運も実力もあるということ。その3拍子が揃っているドライバーが上に行く。逆にその3拍子が揃っているのに上に行けなかったドライバーは、ひとりもいないと思っています」

⚫︎「実力に疑いはない」宮田莉朋のFIA F2デビューイヤー、これまでの印象

 今年、FIA F2にデビューした宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ)がなかなか結果を残せていないが、松下の目にはどのように写っているのか。

「莉朋はSFでもGTでもタイトル獲って、本当に速かったですよね。F2ではもっと時間が掛かるのか、それともヨーロッパでの人間関係みたいなところは日本と比べても特殊なところがあるので、日本が特殊なのかな? わからないですけど、そういうところにまだ合っていないのかなと思いますね」

「日本のレースは文字どおり職人の戦いで、10年以上の経験があるドライバーが4~5つの同じサーキットでずっと戦いますけど、ヨーロッパでは新しいサーキットにパッと行って、路面がいつも変わって一定ではないところでいかに対応して、あとはチームのベースのパッケージの出来で勝負が決まる。日本とは違う領域のドライバーのテクニック、そしてチームとの関係とかの人間力が問われますよね」

「莉朋の実力に疑いはないので、同じサーキットで使う日本での職人技ではなくて、新たな技、F2で使える技をまた築き上げないと行けないと思います。そういった意味では(角田)裕毅とか(岩佐)歩夢もそこをうまくやって、素晴らしかったと思います」と松下。
 
 宮田の来季についての発表はまだだが、もし仮に2年目も参戦できるならば、その伸び代はやはり大きなものとなるのだろうか。

「F2で2年目で活躍するドライバーはだいたい1年目でその片鱗を見せている。どこかで勝ったり、ポールポジションやファステストラップを獲ったり、バトルが上手いとかレースペースがいいとか。もちろん、2年目でいきなり『ええ~っ!こんなに速かったんだ』と化けるドライバーもいますけどね(笑)。莉朋もまだ2戦残っていますので、そういったドライバーであってほしいなと思いますね」

⚫︎かつてのライバルたち、F1ドライバーの技術がますます伸びていく現状

 最後、当時のGP2、FIA F2で一緒に戦った現在のF1ドライバーたちを、松下はどのように見ているのだろう。そして、当時はどのような目で見ていたのか。

「F2で戦っていた時よりも、遥かにレベルアップしていますよね。やっぱりF1はレース数も多くて走る量がハンパなく多いですし、レースがない時でもシミュレーターで走っている。競い合っている相手のレベルも高いので、どんどんレベルアップできる環境だと思います」

「F1に行くと、F2とかスーパーフォーミュラを含めて、F1とそれ以外のカテゴリーの格差が大きすぎると思いますね。一発の速さはともかく、レース運びとかレースでのバトルという面ではF1は全然、レベチで違いますね」

「チャールズはもう、別格でしたね。いつでも別格で速かった。正直、ランドはそこまでだとは思っていなかったのですけど……あとはジョージも速かった。チャールズとジョージは僕の中で別格でしたね。ただたぶん、僕は(マックス)フェルスタッペンとは一緒に走っていないのですけど、フェルスタッペンはそのさらに上の別次元で別格なんでしょうね(笑)」

 実際に同じサーキットで何年も戦った松下の言葉だけに、気さくに話すその姿と内容の重みのギャップが大きい。FIA F2、そしてF1の世界と日本の距離は徐々に縮まっているとはいえ、その内情を知れば知るほど、世界はまだまだ広いようだ。






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みんなのコメント

1件
  • ボボブラジル
    凄く面白く、乗ってる人ならでは、な記事でした。やっぱ見る目が違いますね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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