積算1万11km PHEVはどれくらいお得なのか
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
いま英国で手に入る、ディーゼルエンジンを搭載したPHEVとしては唯一のE 300de EQパワー。比較対象もないから、長所と短所を考えることも、さほど大変ではない。
普段使いのクルマとして、お伝えしたいことは少なくない。前回、自宅に充電器を設置した。将来的に使えるように、汎用性のある充電器を選んだ。おかげで自宅での充電コストを正確に把握できる。
自宅のあるエリアでは、10kWhの電気代がおよそ1.55ポンド(220円)。自宅付近を一般的なスピードで運転すれば、38kmほどを電気だけで走行できる。仮に同じ距離をディーゼルエンジンで走れば、2.2Lは消費する。地元のスタンドなら2.95ポンド(420円)はする。
地元付近を電気だけで走行するなら、燃料代は半分くらいになる計算だ。しかし、ハイブリッド・システムを積んだメルセデス・ベンツを得るには、同等のモデルより5000ポンド(71万円)の追加料金が必要。燃料代だけでモトを取るには、相当な距離を走らなければならない。
もちろん、ハイブリッドには税制面での優遇も用意されている。パフォーマンスの面で、歓迎すべきたくましさも得られる。
車重2140kgもあるエステートボディだが、0-100km/h加速に要する時間は6.0秒。ハイブリッドなしの同等モデルなら7.7秒を要するから、1ランク上の動力性能だといって良い。
無駄のない知的な回生ブレーキ
さらに、マニアックな部分で運転の面白さもある。このメルセデス・ベンツE 300de EQパワーは、エネルギーを回生する機会を逃すことがない、ということに気がついた。特に、通常用いているエコ・モードでの減速時。
実際にブレーキを踏んでいる間だけではなく、より賢い方法で行われている。クルマは、今どこを走行しているのかを理解しており、制限速度が低いエリアに近づいていることも事前に把握している。
そんな場面でアクセルペダルを離している状態なら、若干強めに減速が掛かり、エネルギーを回収してくれる。速めのスピードで近づいて物理的なブレーキを使わせずに、効果的に運動エネルギーを電気に変えてくれる。
急カーブやジャンクションが近い場面でも、若干減速が強くなる。常に走行状態を把握し、わずかな運動エネルギーも無駄にしない。そうでなければ、エネルギーは熱へと変わるだけ。
最初はおせっかいにも感じたが、今ではそんなことはない。モードを変更すれば、いつでも回生モードはキャンセルできる。それに急な坂を下るだけで充電量が増えていくから、ただでエネルギーを貰っているようなもの。
充電器でバッテリーに蓄えた電気だけでなく、道路からも電気を蓄えることができるということ。実際には、充電器での電気代以上の節約効果が得られる。
荷室に横たわる巨大なバッテリー
先週も約580kmの長距離をメルセデス・ベンツE 300de EQパワーで走行したが、燃費は21.2km/Lに達した。自宅で充電した電気だけでは、こんな優秀な燃費にはならないだろう。
反面、ラゲッジスペースを大きなバッテリーが占めている事実は無視できない。大面積というわけではないにしろ、荷室の床に巨大な塊があるのだから。エステートとして、利便性と荷室空間の両方を削っている。
また冬場、電気だけで走行した後にディーゼルエンジンが起動すると、冷えたままだからエンジンからは大きいノイズが聞こえてくる。始動直後は燃料も多めに燃やしているはず。
といっても、気になる部分はその程度。次回はハイブリッド以外の部分も見ていこう。
テストデータ
気に入っているトコロ
エネルギー効率:常にエネルギーを無駄にしないように努めてくれる。バッテリーの充電が空になったとしても。
気に入らないトコロ
荷室を奪うバッテリー:荷室の床に巨大な塊が鎮座する。家族の荷物など大きな物を載せる時は、積み方に頭を使う。
テスト車について
モデル名:メルセデス・ベンツE 300de EQパワー SEエステート(英国仕様)
新車価格:4万9700ポンド(710万円)
テスト車の価格:5万8115ポンド(831万円)
テストの記録
燃費:21.9km/L
故障:なし
出費:なし
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