■スーパーカー「LFA」が市場投入された背景とは?
レクサス「LFA」は、日本車史上において最強級のスーパーカーです。発売開始は、いま(2020年)から約11年前の2009年10月1日。そこから約3か月半となる2010年1月13日で、日本での購入希望受付は終了しています。生産は2012年12月まで続きました。
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一方、トヨタ系のスーパースポーツモデルといえば、耐久レース用マシンと部品を共有する最高出力1000馬力級の「GRスーパースポーツ」の量産化が決まっています。すでに生産が終了したレクサスのスーパーカーと、これから発売されるGRスーパースポーツには、どのような関係があるのでしょうか。
LFAのボディサイズは、全長4505mm×全幅1895mm×全高1220mm、ホイールベースが2605mm。9000rpmまで一気に吹き上がる4.8リッターV型10気筒(V10)エンジンを搭載し、カーボンファイバーシャシに裏打ちされた、軽量で機敏な動きを持ちます。
生産台数は世界で500台限定。新車価格は、レクサス史上過去最高の3750万円でした。
現在、日本でのレクサス認定中古車には掲載車両はなく、中古車大手のサイトでは価格応談がほとんどです。LFA人気が高いアメリカでは、中古サイトで50万ドル(約5400万円)前後の値札がついています。
そもそも、LFAはどうして生まれたのでしょうか。背景のひとつとなったのは、2000年代前半から中盤にかけて加速した、欧州での新たなるスーパーカーブームです。
LFAの存在が明らかになったのは、2005年の北米国際自動車ショー(通称:デトロイトモーターショー)に出展されたコンセプトモデル「LF-A」(コンセプトではハイフンあり)でした。
筆者(桃田健史)は当時その現場で、レクサスやトヨタ関係者にLF-A量産の可能性について聞きました。
質問のなかで「やはり、最近の世界的なスーパーカーブームを捉えて…」という聞き方をした記憶があります。
スーパーカーブームといえば1960年代から1970年代、ベルトーネやピニンファリーナなどイタリアン・カロッツェリア(工業デザイン関連企業)と小規模生産メーカーが連携し、ランボルギーニ「ミウラ」「カウンタック」、フェラーリ「512BB」といったモデルが登場しました。
こうした第一次ブームとは違い、2000年代の第二次スーパーカーブームを主導したのは、世界の自動車産業をリードするドイツの大手メーカーでした。
ベンチマークになったのは、2004年に発売開始されたメルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン」です。F1での事業連携をベースに製造をマクラーレンがおこない、価格は5000万円台という、当時としては破格の値付けでした。
ポルシェも当時のル・マン24時間レースなどの耐久レースでV10レーシングエンジンを開発していた流れから「カレラGT」を、こちらも5000万円級で販売しました。
こうした大手の動きに触発されるように、、元祖スーパーカーメーカーは、より高出力、より高額なモデルを投入。ファラーリは、エンツォのレーシングバージョンとしてFXX(2億5000万円)、また量産車として初めて最高時速400km超えをカタログ値としたブガッティ「ヴェイロン」(2億円)にも世界の注目が集まりました。
こうした世界的なトレンドのなかで、レクサスによるスーパーカー投入は至極、自然な流れに感じました。
もちろん、開発者の「究極の逸品を造りたい」という情熱があってこその話。そのうえで、トヨタの経営陣が時代背景を十分に加味して、正式開発にGOをかけたのです。
だだし、コンセプトモデル登場から量産までの期間は、我々メディアが想像していた以上に長くなった印象があります。
■「LFA」復活の可能性は?
LFAの製品企画にGOがかかったもうひとつの背景は当然、トヨタF1の存在があります。
F1のエンジン規定が当時、V10だったことから、トヨタとレクサスでの最上級モデルとしてスーパーカーは、専用開発のV10搭載が必要条件になりました。開発には、往年のトヨタ「2000GT」搭載エンジンでも手を組んだヤマハと連携しています。
一方で、LFAの販売に大きな期待をかけていたアメリカからは、違う意見が出ていました。コンセプトモデルのLF-Aが登場した後、トヨタ北米営業本部の米国人幹部と意見交換した際、彼は次のように主張しました。
「現行V型8気筒のスーパーチャージャーモデルにするべきだ。そのうえで、価格を12万5000ドル以下に抑えることができれば、販売での勝算がある」
アメリカでは当時、12万5000ドル(現在のレートで約1370万円)が、ある程度の販売台数が見込める高級車と、限定販売のような超高級スーパーモデルとの価格境界線になるという考え方がありました。レクサスやトヨタに限ったことではなく、販売・マーケティング関係者やディーラー現場での常識でした。
ですが、このアメリカ案を受け入れてしまうと、LFAはスーパーカーではなく、単なる上級グレードスポーツカーの枠を超えません。開発工数がかかり、販売台数が限定されることを承知で、トヨタ・レクサス本部はV10案で押し切ったといえます。
LFAは、レクサスのハイパフォーマンスブランド「F」の頂点、という位置付けとしても重要な役割を果たしました。メルセデス・ベンツのAMGやBMWのMといった、欧州プレミアム系への対抗策です。
一方、現在トヨタには「GR」があります。トヨタのハイパフォーマンス系ブランドではTRD(トヨタ・レーシング・デベロップメント)がありましたが、今後はGRとして一元化されます。モータースポーツの実績をダイレクトに商品化する戦略です。
その筆頭が、WRCとの関わりが深い「GRヤリス」(396万円)であり、「GRスーパースポーツ」なのです。国内スーパーGTでも2020シリーズから、参戦モデルをレクサス「LC」から「GRスープラ」に変更しました。
LFAの時代と比べて、トヨタとレクサスにおける、モータースポーツと商品化との関係性が大きく変わったのです。
つまり、LFAの後継車がレクサスから登場する可能性は低いと見るべきでしょうか。いやいや、もしかすると、LCあたりでスーパーモデルが登場するかもしれません。
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