日産自動車と三菱自動車から同時に発売された軽の電気自動車(EV)。その違いとは?
日産と三菱で大きく異なる方向性
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日産自動車(以下、日産)と三菱自動車(以下、三菱)から、軽の電気自動車(EV)が同時に発売された。日産版はサクラ、三菱版はeKクロスEVである。
日産が主導的な役割を果たしながら三菱と共同で開発し、岡山県の三菱自動車・水島工場で生産する。ガソリン・エンジンを積んだ軽自動車、デイズ(日産)/eKクロス(三菱)がベースだ。2019年に現行モデルに移行したデイズ/eKクロスは将来のEV化を見込んで設計されており、最小限の変更でEV化を果たしている。
その特徴がもっともよくあらわれているのが、駆動用バッテリーの搭載レイアウトだ。ガソリン・エンジン車はエンジン・ルームに排気量660ccのガソリン・エンジンとトランスミッション(CVT)を積む。エンジンを動かすのはガソリンで、27リッターの燃料が入るタンクを後席下に搭載する。ちなみに機内持ち込みキャリーケースの標準的な容量が30~40リッターだ。
サクラ/eKクロスEVは、エンジン・ルームならぬ“モーター・ルーム”にモーターと減速機を搭載する。モーターを動かすのは電気で、電気を蓄えるのはリチウムイオンバッテリーだ。WLTCモードで一充電走行距離180kmを走るに充分な容量を確保するには、機内持ち込みキャリーケースが3個か4個分のバッテリーが必要になる。これをたとえるなら、ビジネスホテルによくある小さな冷蔵庫に2.0リッターのペットボトルを入れるようなもの。つまり、小さな軽自動車に搭載するのはかなり難しいのだ。
サクラ/eKクロスEVはフロア下のセンタートンネル部に細長いバッテリーパックを搭載している。そのため、前席も後席も居住性は犠牲にしておらず、ベースとなったデイズ/eKクロスとおなじだ。バッテリーを積んでいるせいで床が高く、脚が窮屈ということはない。これには、日産が開発した、バッテリーの高さを自在に変えられるスタック構造が効いているし、エネルギー密度の高い最新セルの採用も効果的だ。
ガソリン仕様のデイズ/eKクロスをEVのサクラ/eKクロスEVにするにあたり、電動コンポーネントの配置を工夫することによって、ベース車と同等の居住性を確保した。あとは、新時代の“軽”のEVとして、どのようなキャラクターを与えるか?であるが、日産と三菱で方向性が大きく異なる。
小さなアリア
車名からもわかるように、日産は軽のEVに専用のネーミングを与えた。軽自動車は日本専用の規格なので、海外でも通用するネーミングにする必要はないのだろう。
サクラ(「サ」にアクセント)は社内募集によって選ばれた車名で、「桜」が由来である。「身近で親しまれるパートナーのような存在になってほしい」という想いを込めたという。
「サクラ」と聞けば、耳慣れない車名なので「新しいクルマだな」と、即座に想像がつくだろう。写真でも実車でもいいが、現物を目にするとベースとなったデイズではなく、クロスオーバーEVの「アリア」に近い雰囲気を漂わせていることに気づくはずだ。サクラは軽自動車のラインアップの頂点に位置するいっぽうで、EVのラインアップの底辺を受け持つ役割を担う。
底辺といってもプレミアムなムードを漂わせているのは、見ればわかる。いや、ひしひしと伝わってくる。エクステリアもインテリアも日産の最新のデザインコンセプトに基づいてまとめられており、先進的だ。インテリアもベースとなったデイズとは異なり、サクラ専用に設計された。「モノリス」と呼ぶ、大型のディスプレイを2つなげた統合型ディスプレイを配したところは、アリアと共通している。
サクラはいわば、小さなアリアだ。「アリアもいいけど、もっと小さいのがいいな」となったときの選択肢がサクラというわけだ。
となると、その中間も欲しくなるが、現状、大きなEVと小さなEVの間を埋めるのは「リーフ」である。欲を言えば、アリアやサクラのようなテイストのデザインと先進性でまとめられた中間的なEVが欲しい。
バリエーション追加の位置づけ
三菱のほうはどうか? eKクロスEVの車名から推察できるように、三菱の軽EVは既存モデルのバリエーション追加の位置づけだ。専用モデルを立ち上げた日産とは対照的である。ガソリン・エンジンを積むeKクロスのEV版がeKクロスEVというわけだ。
乗用車を選ぶとき、ガソリンエンジンがいいか、ディーゼルエンジンがいいか、はたまたハイブリッドがいいかと検討するのとおなじ感覚で、軽自動車でもEVを検討してほしいという思いが込められている。EVは特別な乗り物じゃない。だから、構えずに乗ってほしいということだ。
eKクロスEVのエクステリアは、ガソリンエンジンを積むeKクロスとほぼ共通だし、インテリアも同様。eKクロスの一員であるのが即座にわかる。というよりむしろ、「ダイナミックシールド」と呼ぶ個性的な三菱顔のほうが印象的で、三菱のクルマであることが一目瞭然だ。
運転をサポートする先進技術が充実しているのはサクラ/eKクロスEVに共通しており、後退、前進、縦列の駐車時にステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジ、パーキングブレーキのすべてを自動で制御する機能は軽自動車として初採用だ。日産は「プロパイロット・パーキング」と呼び、三菱は「マイパイロット・パーキング」と呼ぶ。
高速道路の単一車線で巡航している際にアクセル、ブレーキ、ステアリングをクルマがアシストする「プロパイロット」(日産)、「マイパイロット」(三菱)に、「緊急停止支援システム(SOSコール機能付き)」が軽自動車として初めて追加されたのもニュースである。走行機能系ではeKクロスEVが、雪道やぬかるんだ道など、滑りやすい路面での発進をサポートする「グリップコントロール」をウリのひとつとしているのが、オフロードでの強さを自負する三菱らしい(サクラも同種の機能を搭載するが)。
スマートなイメージを前面に打ち出すのが日産サクラなら、泥くさく攻めるのが三菱eKクロスEVだ。ひざ詰めで相談して攻め手を分けたのではなく、それぞれが自社の持ち味を生かそうとしたようだが、結果的には軽のEVを普及させるための効果的な両面作戦になっているような気がする。消費者の反応が楽しみだ。
文・世良耕太 写真・田村翔(日産サクラ)、安井宏充(三菱eKクロスEV)
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みんなのコメント
《NISSANサクラ》
ブロッサムピンクは一般的に女子受けするカラーです。NISSAN DAYZの特別車《ボレロ》とほとんど同じ感じが否めませんがまあ白黒ばかり好きな日本人の色彩感覚に綺麗なピンクで一喝。
そう言えばロンドン在住のサンダーバードのペネロープ号(車はロールスロイス)の雰囲気も醸し出しています。
一方ソルベブルーはソーダ水みたいで夏には涼しげ。でも兄貴分ARIYAのカッパーカラーのサクラもgood。