モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツweb。両者がコラボしてお届けするweb版『Racing on』がスタートしました。
web版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。第7回のテーマはJTCCのホンダ・シビックフェリオです。
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【忘れがたき銘車たち】“職人”が情熱を注いだ『つちやMR2』と土屋春雄さんからのお誘い/番外編
ホンダ・シビックといえば、近年では『タイプR』がニュルブルクリンク北コースでルノー・メガーヌR.S. トロフィーRとFF車最速タイムを競うなど、世界を向いたクルマとなり、それに伴ってボディサイズもかなり大きなクルマとなってしまったが、かつて、1980年代から1990年代は1.6リッタークラスのコンパクトスポーツの代名詞的なクルマだった。
そんな古き良き時代のシビックは、モータースポーツ界でも大活躍。特にグループA時代の全日本ツーリングカー選手権(JTC)では、1987年から1993年までメーカータイトル7連覇という偉業も成し遂げていた。
しかし、グループAが終了し、全日本ツーリングカー選手権が2.0リッターの主に4ドアセダンによるクラス2ツーリングカーレース(JTCC)になってからは一転、シビックは大苦戦を強いられることになる。
ホンダは1994年、新たにスタートを切ったJTCCにEG9型のシビックフェリオを導入して参戦した。当初は、アコードでの参戦も計画されていたが、マーケティング上の理由や他車種への流用といったことを考慮した結果、選択されたのがシビックフェリオだった。しかし、これが失敗の始まりであった。
JTCCは、サスペンションがベース車両の形式を引き継いでいれば、大幅な改造が認められていたことなど改造の範囲が広かった。そのため、改造の自由度の高い大きなサイズのボディを持つ車両が有利だったのだが、シビックフェリオは、まずボディサイズが小さかった。
ボディサイズが小さく、ホイールベースの短いシビックフェリオは、ボディの剛性を上げていっても、最終的にサスペンションとのバランスを取ることができず、クルマの“跳ね”を抑制することができなくなっていた。
しかも、シビックフェリオはダブルウイッシュボーン形式であったものの、ジオメトリーを最適化することが困難なレイアウトで、バランス調整も難しかったとされる。
また、エンジンもJTCCでは、なるべく搭載位置を後ろへと下げるために後方吸気/前方排気を逆転させて、前方吸気/後方排気とするリバースヘッドも流行り始めるのだが、それもエンジンルームが狭いシビックフェリオでは、難しかったのだ。
このようなさまざまな理由が重なり、シビックフェリオは開幕から負け続けてしまう。1994年は全18レースを戦って、未勝利/表彰台4回。1995年も全16レースで未勝利/表彰台3回と、2年間の34レースで一度も優勝することができなかったのだ。これは、ホンダのモータースポーツ史に残る大敗戦であった。
シビックフェリオの時代には「飛ばしシフトができるから有利だろう」とHパターンのギヤボックスを採用するなど、開発陣営が改造範囲の広いJTCCのマシン開発をグループA車両の延長で考えていたが、1996年に向けて方針を大きく転換することになる。
そして、最強のJTCCマシンであり、さまざまな物議を醸したアコードを生み出すことに繋がるのだ。シビックフェリオの“負け”は、最強マシン誕生前夜の意義のある“負け”であった。
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