この記事をまとめると
■地方ではタクシーや路線バスが数を減らしており、廃線となっている路線もある
ドライバー不足がゆえに稼げるタイミング! 元運転士が語る「儲かるタクシー」になるコツ
■自動運転のバスやタクシーの導入も検討が進んでいるもののコストが問題視されている
■海外ではBEVメーカーがタクシー会社を運営するケースも出てきている
路線バスやタクシーの廃線、減車が相次いでいる
過疎部、都市部を問わず公共交通、つまり鉄道のほかバス、タクシー業界の疲弊が話題となって久しい。路線バスでは、利用者減少の歯止めがきかないなか、都市部ですら新型コロナウイルス感染拡大以降、リモートワークの普及などにより、利用者の減少傾向が顕著となってきた。
バスに関しては、利用者減少というなかで減便が進んできたのだが、ここ最近は運転士不足も深刻となり、さらに減便が進むだけではなく、一部では路線廃止や日曜日全休といった動きも見えてきている。
円安傾向も続いており、燃料費の高騰も事態を深刻化させている。
ちなみにタクシーにおいても、新型コロナウイルスの感染拡大のひどかった一時期よりは需要が戻ってきているとはいうものの、コロナ禍前の9割弱ほどの稼働状況にしかなっていないとの報道もある。また、運転士も異業種から転職してきた若手が目立ってきているとはいっても、バス同様に運転士不足の改善はあまり進んでいないようにも見える。
さらに、燃料費高騰も影響しており、厳しいなかでの経営が続いているのだが、ここのところ全国的にタクシー料金の値上げが行われているので、なんとか持ちこたえているのが現状のようである。
都市部でも問題を抱えるバスやタクシーであるが、首都圏や近畿、東海圏などの大都市部よりはやはり地方都市、そして過疎地域のほうがより状況が深刻なのは間違いないだろう。
そのような問題を解決するためにさまざまなアイディアが出ており、それを実用化させようとする動きも出てきている。自動運転バスやタクシーの導入、タクシーについてはライドシェア解禁といったものを挙げることができる。
しかし、自動運転バスやタクシーの導入では、専用車両のほかにそれをオペレーションする機材など莫大な初期投資が必要となるので、地方の事業者にそのような余裕があるようには見えない。ライドシェアにおいても、専用アプリにより配車のやり取りを行うことになるが、現状で普及しているタクシー配車アプリサービスに加盟している事業者のタクシーでは、地図画面を表示するディスプレイがたいていふたつ装備されている。タクシー専用タイプのカーナビゲーションに加え、アプリ配車専用のディスプレイが搭載されているのである。
つまり、ライドシェアに参加するとしても、すでにタクシー配車アプリサービス傘下のための設備投資がなければ、相当の初期投資が必要となってくるのである。また、地方で数台程度保有して事業を展開しているタクシー事業者では、後継者不足もあってすでに次世代へ継承するつもりなく日々運行している事業者も多いと聞く。
そうなると、新たな動きへ対応するための投資よりは“廃業”を選ぶ事業者も少なくないと事情通は語ってくれた。これはタクシー事業者だけではなく、バス事業者とて状況は同じと考えていいだろう。
BEVメーカーがタクシーを運用する日が来る
そのなかですでに検討段階に入っているともいわれているのが、タクシーやバス事業を地方自治体が担うといった話である。つまり公営化である。
世界に目を向けると、自治体がバス運行事業を担っていることは珍しくない。日本でも大都市を中心に地方自治体や自治体に近い組織(第三セクターなど)でバスが運行されているケースはあるが、今後はそれがさらに広がりを見せるかもしれないというのである。
タクシーにおいても公営化というものが論議されている。
「路線バスの運行路線廃止などに伴い、沿線住民の移動手段確保のために、10人乗りのワンボックス車(トヨタ・ハイエース・コミューターなど)などを用いた乗合タクシーというものを地方自治体が運行することがあります。コミュニティバスは広く運行されていますが、そのコミュニティバスの入れないエリアをフォローするもので、バスのように時刻や乗降バス停が決まっているものもあれば、希望する場所で乗降できるタイプなど種類はいくつかあります。そして、この乗合タクシーの運行委託先は地元タクシー事業者となります。事業者としては自分たちが地域の公共交通を担っているといった責務から請け負うのですが、その委託費用はけっして十分ではありません。さらに、乗合タクシーの運行は、自分たちの本業であるタクシーの稼ぎを減らすことにもつながっており、ある意味自分たちの首を絞めるなか運行委託を受けていることに疑問の声も業界では出てきております。地方自治体ももう少し運行委託費用をアップして欲しいとの話も聞きます」(事情通)
燃料費の高騰も問題だが、そもそもタクシーの主要燃料となるLPガスを供給するガススタンドは全国的に閉鎖が続いており、減少に歯止めが効かず地方ではハイブリッド車やガソリン車がタクシー車両では多くなっているが、地域によってはガソリンスタンドが廃業し、一軒もないといったことも珍しくなくなっている。
そのため、路線バスも含め、地方の公共交通車両から日本のBEV(バッテリー電気自動車)普及は本格化するのではないかとされている。バスやタクシーだけではなく、ガソリンスタンドも廃業が相次いでいるので、過疎地域のマイカーすら給油に難儀している。
日産の軽規格BEVのサクラが大ヒットしているが、地方部で生活圏内の移動がメインの高齢世帯での普及もかなり目立っているとのことである。
ただし、バスやタクシーとなると、日系メーカーのBEVラインアップが少ないので、なかなか日本車でという選択が厳しいのも事実。そこであくまで筆者の私見となるが、外資ブランドBEVの地方での台頭である。中国や韓国などでは日本よりBEVが普及しているだけではなく、市街地ではBEV路線バスやBEVタクシーがすでに多数走っている。つまり、すでに営業運行実績があるのだ。そのノウハウだけではなく、タクシー車両向けに割安なフリート販売専用車両もラインアップしている。
2023年末に開催されたバンコクモーターエキスポ会場には、中国・広州汽車のセダンタイプのタクシーなどフリート販売専用のBEVが展示されていたが、ガソリンエンジンを搭載するトヨタ・カローラ・アルティス(セダン)とほぼ同じ車両価格であった。
日本では過疎地域とはいえ電気は広く行き渡っているので、電力供給網の整備さえ整えばBEVバスやタクシーが地方部から積極的に走り出すことは十分考えられる。前述したように、タクシー事業を公営化すれば地方自治体にアプローチするだけで一気にあるエリアのタクシーのBEV化が進むことになる。
路線バスでも、日系メーカーが2023年に開催されたジャパンモビリティショーへBEV路線バスのプロトタイプを出品したが、そのなかで中国BYD(比亜迪汽車)のBEV路線バスが、最近でも首都圏の大手バス事業者に試験的とはなるものの導入されるなど、外資ブランドのBEVバスの勢いは止まらない状況となっている。
また、情報ではベトナムのBEVメーカーはタクシー会社も運営しており、自社製タクシー専用BEVとタクシー事業をパッケージにして輸出しているとも聞いている。仮にこのメーカーが、日本の地方タクシー事業者を買収する形などで進出した際に、車両だけではなくベトナム人運転士までパッケージにして事業展開すれば、働き手不足も一気に解消することになるだろう。その面でも、タクシー事業が公営化されていれば“運行委託先”として指定するだけなので導入はさらに容易となるだろう。
日本の公共交通網の存続は、外資ブランドによって支えられていく可能性も十分に高いものと筆者は考えている。
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