あの頃のV10ワゴンが忘れられなくて
新型BMW M5ツーリングが発表され、14年ぶりに同社の高性能ステーションワゴンが復活した。そして、壮絶な三つ巴対決の舞台も整った。
【画像】「懐かしい」ドイツ御三家の高性能ステーションワゴン対決!【M5ツーリング、RS4アバント、E 63を直接比較】 全23枚
2007年、AUTOCARはV10エンジンを搭載したE61型M5ツーリングと、V8エンジンを搭載したドイツのライバル、アウディRS4アバントとメルセデスAMG E 63ステーションワゴンを対決させ、どれが最高のスーパーワゴンなのかを探った。
速さ、安定性、そして特に重要な実用性を試すべく、取材班は各車に350kgのバラストを詰め込んでサーキットを走らせた。
では、この3台のドイツ製高性能ステーションワゴンのうち、総合的に勝利したのはどれか? 今回は、2007年5月2日当時のレビュー記事を一部抜粋・再編集して紹介する。
(日本語版全文は2017年掲載の『ハイパフォーマンス・ワゴン対決 M5 vs RS4 vs E63 AMG』でお読みいただけます。)
「復活」のM5ツーリング
世の中のあらゆる高性能クラスを牛耳るか、それに近い支配力を持つ企業があるとすれば、それはBMWだろう。BMWはパフォーマンスを看板に掲げ、少なくとも参入するすべての市場で競争し、しばしば独占している。
スポーツセダン、キュートなロードスター、そして535dのエンジンを搭載したX3をどのような言葉で表現するのが適切かわからないが、「ハイパフォーマンス」もその1つであることは間違いない。バイエルン出身のクルマは「ハイパフォーマンス」を独自の方言、独自の言語としている。
それにしても、ステーションワゴンという重要なカテゴリーが、20年近くもBMWによって無視されてきたというのは何とも奇妙なことである。BMWが最後のM5ツーリングの生産を終了して以来、A4アバントやA6アバントに強力なターボエンジンを載せたアウディが猛威を振るってきた。メルセデス・ベンツもこのカテゴリーに積極的だ。 “スピード狂” 向けのCクラスやEクラスのステーションワゴンは何年も前から存在している。
しかし、BMWは違った。E39型5シリーズ・ツーリングのV8搭載バージョンを試作することはあっても、量産化には至っていない。BMWのM部門はE39型M5ツーリングを1台だけ製作したことがある。しかし、フル生産するほどの需要があるとは考えられなかった。
その間にアウディは、このBMWの空席をうまく利用した。アウディのフルタイム四輪駆動を有名にしたのはクワトロ・スポーツだが、アウディが高性能な乗用車を作れるメーカーだという認識が広く浸透したのは1994年のRS2アバントからだ。RS2アバントは実用的かつ頑丈で、使い勝手の良い高性能車であった。
BMWがライバルの成功をどう受け止めたのかはわからないが、少なくとも市場の欲求は大変強く、もう一度M5ツーリングを作るという決断に何らかの影響を与えたことは間違いない。
ドイツ御三家の高性能モデル
この3台は、ステーションワゴンであるからこそ、より魅力的に感じられる。筆者は性能を隠したマシンが好きなのだが、広々とした実用的なボディはそれに最適と言える。また、筆者は運転しながら他のクルマに興味を惹かれる「目移り症候群」にいつも悩まされてきた。だが、速いステーションワゴンならあらゆる可能性をカバーできる。家族との外出、ファストフードを買いに行く、スーパーカーと張り合う、などなど。
過去15年間で高性能車がどれほど進化したかは、ここにいる3台を見れば一目瞭然だ。その中でも注目は、最高出力420psのアウディRS4アバントだ。4.2L V8は8000rpmを超える回転数を誇り、膨張したショルダーと大型グリルは他の5ドア車を圧倒するだろう。ただし、今回は話が違う。
新型M5ツーリングはアウディと同じような出力特性を持つが(BMW、マセラティ、ランボルギーニ、アウディが同じモジュラー・エンジンを使っていて、その効率性と回転特性が似ている)、シリンダーが2本増えてV10となっている。その結果、最高出力は507ps/7750rpmとなり、スピードリミッターを解除すれば最高速度は320km/hに達する。
メルセデス・ベンツは、アウディやBMWが小銃を振り回すのを待ってから大砲を放つのが常だが、E 63もその流れに則っている。
RS4アバントに乗った直後に「メルセデスは94ps強力で似たようなクルマを作っている」と言われれば、大抵の人はうろたえるだろう。しかし、メルセデス・ベンツは最高出力514psのEクラス・ステーションワゴンに需要を見出しており、今のところCクラスに同じエンジンを積む気はないようだ。ひとまずは安心できるだろう……。
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