「守るために変えていく」をキーワードに開発が進められた4代目NDロードスターは、原点回帰するべく、車両重量1000kgを切ることを公約し、最新の技術、デバイスを用いてそれを実現させた。
発表イベントを日本、北米、欧州で同時開催
ロードスター生誕25周年を迎えた2014年7月、マツダは4代目ロードスターを千葉県舞浜、アメリカ、ヨーロッパの3拠点で同時公開するという、かつてない規模のイベントを開催した。それまでニューモデルの発表はモーターショーで行うものだったが、NDロードスターは真っ先にユーザーに公開したのだ。
【くるま問答】アイドリングストップ機能はよいことばかりではない。OFFスイッチはいつ使う?
さらに2015年1月の東京オートサロンでNDを展示。そして3月に先行予約を開始するや否や、試乗もせずに契約書にハンコを押す人が続出した。その後は各地で行われたロードスターミーティングに新型ロードスターを展示するなど、マツダは常に「ロードスターはファンに支えられている」ということを大切にしてきた。
チーフデザイナーの中山雅氏は、各ミーティングで開発秘話を披露してきているが、一貫してNDのデザインは変更しないと豪語してきた。それを証拠に今日までエクステリアの変更は行われていない。「魂動(こどう)というテーマは、工業製品であるクルマに、野生動物のような躍動感を与える。わたしの実家はお寺なんですが、仏像ってどの位置からでも仏様に見られているようでしょ? 仏像の目の奥には、玉眼と言われる水晶体が入っているのです。NDの奥に見えるLEDも同様の効果があると思います。体を低くして(正面から)顔を見ると、笑っているようでしょ」と語っていた。
NDロードスターは、軽やかな乗り味と洗練されたスタイリングで、これまでロードスターに興味のなかったユーザーも魅了した。NDが初めてのロードスターというオーナーが、ミーティングに多数参加するようになっていた。それは走りやデザインだけではなく、ロードスターが持つ「人をつなぐ」魅力にはまった人々が続出したからだ。ロードスターにどっぷりはまることを、仲間うちでは「ロド沼」と呼んでいる。
NDロードスター、NCに続き日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞!
4代目ロードスターの主査は、ロータリーの開発でも知られる山本修弘氏。開発スタッフとともに切磋琢磨し、その過程の出来事を記した「巻物」には、びっしりと文字が並び「クルマそのものを進化させるだけでなく、人がクルマを楽しむ感覚を大幅に進化させた」と語っていた。初代カタログに記載してあった「誰もが、幸せになる」は、ずっと続いていたのだ。
2007年からスタートしたNDロードスターの開発は、SKYACTIVEを駆使した新プラットフォームを使い、さらに最新の衝突安全対応を盛り込みながら、初代ロードスターのように1tを切る車両重量とさらなる運転の楽しさを目指した。しかし、いざ開発が始まるとロードスターが一番売れる北米市場から「サイズアップとモアパワー」という要望がきた。これでは軽量化どころか、さらに重量が増してしまう。開発テーマの「原点回帰」に赤信号が灯り始めた……。
モアパワーを実現するには、やはり軽量化は避けられない。目標の車両重量1t切りを目指すためには、900kg台を目標にしたのでは到底は達成できないと感じ、800kg台を目指すことになった。そのためには、先代モデルNCの2Lエンジンを継承するのではなく、歴代最小排気量の1.5Lにすることで約100kgの軽量化が実現できると目論んでいた。しかし、NCの「2Lクラスのパワーとそれ以上のフィーリングはマスト」という難題がのしかかった。
これらを解決する手段のひとつとしてCAE解析を用いた。これにより、これまで見えなかったものを可視化できたことでいくつもの難題をクリアすることができた。結果的に北米市場には2Lエンジンも設定されたが、もしNDの開発当初から2Lエンジン搭載を前提にしていたら、ロードスターRFの車両重量は1.3tか1.4tまで増加し、ただの普通車になっていたという。
スポーツカーらしいエンジンの始動方法にも徹底的にこだわった
SKYACTIVEエンジンは始動性が良く、始動するとすぐにアイドリング状態になってしまう。しかし、これではスポーツカーとしての躍動感に欠けるということで、いったん1600rpmまで回転を上げ、すぐに燃料カットすることで一気にアイドリング回転まで落とす手法が用いられた。この演出が「さ~運転するぞ!」という気分を増幅させる。まさに常識に囚われない発想から生まれたアイデアだ。
その甲斐あって、「SKYACTIV技術」とデザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」を採用した4代目NDは、3代目NCに続いて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。さらに「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」もダブル受賞するなど世界がその存在を認めた。そして2016年4月にはロードスターの累計生産が100万台を達成し、今もギネス記録を更新し続けている。
2019年はロードスター30周年。1999年、2009年と同様、広島県三次にあるマツダの自動車試験場で、大々的なミーティングが開催された。会場にはNAからNDまで2000台を超える歴代モデルが集結。次の10年先も、ロードスターは愛され続けているはずだ!
[ アルバム : マツダ ロードスター秘話 はオリジナルサイトでご覧ください ]
マツダロードスター(ND型)主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1720×1245mm
●ホイールベース:2310mm
●ホイールベース:2310mm
●重量:990kg
●エンジン型式・種類:MP5-VP・直4 DOHC
●排気量:1496cc
●最高出力:131ps/7000rpm
●最高出力:131ps/7000rpm
●トランスミッション: 6速MT/6速AT
●タイヤサイズ:195/50R16・205/45R17
●価格:249万4800円~333万4100円(税込)
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みんなのコメント
いたずらにパワーやスピードを求めない、アスリートのように無駄をそぎ落とす姿勢のブレない部分が生き続ける要因だろう。
EV時代になっても、きっと生き延びていると思う。
重量級ハイパースポーツより10倍楽しい。