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【ヒットの法則277】ポルシェ 911タルガ、911ターボ、ケイマンはラインアップの中で重要な役割を担っていた

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【ヒットの法則277】ポルシェ 911タルガ、911ターボ、ケイマンはラインアップの中で重要な役割を担っていた

2006年、ポルシェは911ターボ、911 GT3を発表すると、さらに後半には、2.7Lエンジン搭載のケイマン、ボクスター/ボクスターSのパワーアップ、911タルガ、911 GT3 RS、新型カイエンをリリースする。Motor Magazine誌では、そんな進化し続けるポルシェの最新モデルに注目。2006年末に日本に上陸した911タルガ、911ターボ、ケイマンの試乗をとおして、新しいポルシェの進化の行方を追っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年2月号より)

911シリーズの中からタルガを選択する意味
「史上初めての4WDとの組み合わせであり、史上初めての2バリエーションの同時リリースでもある」、こんなフレーズとともに日本に上陸したのが、最新911=997型ベースのタルガ・シリーズだ。正式名称は911タルガ4と911タルガ4Sとなる。

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駆動系にはカレラ4シリーズ譲りの4WDシステムを採用。前者は911カレラ系と同様の3.6Lエンジンを搭載し、後者はカレラS系と同じ3.8Lユニットを搭載する。これらの内容が、1967年に初代モデルが登場して以来、911タルガ史上初めての出来事となるわけだ。

それにしても「手持ちのネタ」を巧みに組み合わせて自らのコンセプトに合致するプロダクツを生み出そうという動きには、現在のポルシェの数あるラインアップの中でも何やらかなり政策的な香りが強く漂う。というのも、タルガ4シリーズは911の中にあってちょっと特殊な存在なのだ。

ポルシェのセールスでトップシェアをマークするのは常にアメリカ市場なのだが、タルガだけは違う。オープンエアを楽しむならば、アメリカではカブリオレ以外には考えられない。つまりタルガのターゲットはアメリカではないのだ。4WDを「標準装備」としたのもそれが大きな理由と考えられる。

タルガ4シリーズが用いるルーフシステムは、スライド機構を備えるルーフトップ部分とハッチ開閉式のリアウインドウ部分を合わせた総面積が1.54m2に達するガラス製。インナースライド式のルーフトップはセンターコンソール上のスイッチ操作により、7秒という時間で0.45m2の開口部を作り出す。その開口面積はクーペのサンルーフの2倍。ルーフトップ部分に用いられる2層の特殊ティンテッドガラスは、従来型よりも1mm以上の薄肉化によって1.9kgの軽量化に成功し、「スポーツカーでは特に重要なロールモーメントを減少させ、運動性能の向上に寄与している」という。

新型タルガに乗り込むと、まずはその圧倒的なキャビンの明るさに驚かされる。左右のアーチ部分が残るが、頭上部分が全てガラスなのだから、たしかにサンルーフとは一線を画すものだ。

コンソール上のスイッチを軽くクリック位置までの操作にとどめると、ルーフトップ後端部に設けられたリトラクター内に収められた巻取り式のサンシェードを自由な位置まで引き出すことが可能。もっとも、このシェードはメッシュタイプなのでクローズ状態でもある程度の外光が透過する。そのあたりも含めて、やはり冬の気候が厳しい地域でのドライブを重視して開発されたという印象が強い。

オープン状態で100km/h程度の速度に達しても、空気の流れはルーフ上を通過するのみ。「外気に直接触れたいけど、髪を乱されるのはイヤ」といった贅沢な要望にも応えてくれるのがこのルーフでもある。さすがにそれ以上の速度域となると、開口部前端のディフレクターが跳ね上げる風の音が急増をするものの、日本での通常の走行であればオーディオのボリュームを増す必要もなさそう。かくして「上空」の空気の流れは感じつつもキャビン内の平和は少しも乱されない。

タルガ4の走りのテイストは「クーペに準じるものの、加速のフィーリングもハンドリングの感覚も、そのシャープさはわずかながらも確実にオブラートに包まれた」といったもの。

タルガ4Sの5速AT仕様の車両重量は1610kg。これはベースとなったカレラ4Sよりもちょうど50kg重く、0→100km/h加速タイムもコンマ1秒遅れの5.4秒と発表されている。ただし、実感としてはアクセル操作に対する加速の「ツキ」という点では、それよりはもう少し開きがある印象。また、比較的高い横Gを発しながらのコーナリング中にうねり路面に突入するといったシーンでは、やはり頭の部分が少々重いロールモーションが感じられたことも付け加えておきたい。

路面凹凸を拾って発生したボディの振動の減衰も、やはりクーペボディほどに優れたダンピング性能は備えていないように感じられた。つまり、走りのポテンシャルではさまざまな点でわずかずつではあるものの、やはり「クーペには敵わない」という印象が感じられる。

もちろん、今や数ある911のラインアップの中で、あえてこのモデルに食指を伸ばそうという人にとっては、このあたりは問題としないのだろう。純粋な「走り」をとれば、やはりベースとなったクーペボディの方が絶対的に優位であり、タルガの魅力を理解する人はそれを承知の上でオーナーになるということだ。

ポルシェへの期待や興味は尽きることがない
一方、ポルシェ車本来のいかにも質実剛健とした合理的な考え方から、走りのポテンシャルを究極まで追求したのが、やはり2006年にデビューとなった最新の911ターボだ。

左足ブレーキングでクルマの動きを抑えつつ、右足でアクセルペダルを踏み込んで、あらかじめブースト圧を立ち上げた「カタパルト発進」が可能であるためか、カタログ上ではATモデルはMT仕様よりも速いデータを示すが、それを久々にドライブしてみると、7カ月前にスペインのアンダルシア地方を駆け抜けたあの国際試乗会での記憶が鮮明に蘇ってきた。

このクルマの運動性能の凄まじさを表現するのに、どういう言葉を使えばいいのだろう。今や世の中に「速いクルマ」は数々存在するが、ATセレクターをDレンジに放り込み、アクセルペダルを踏み込むだけで「シートに背中が張り付く加速」が味わえるモデルは滅多にない。しかし、このクルマの加速感はまさにそうした表現が決して誇張ではなく使えるもの。「怒濤の速さ」「恐ろしいほどの加速力」という表現も、ことこのクルマの場合には全く誇張ではない。

さらに驚かされるのは、そんな加速力の源となる480ps/620Nmという凄まじい最高出力と最大トルクを、このクルマのボディ/シャシが平然と受け止めてしまう点にある。ポルシェ911というクルマのパフォーマンスに限界はないのか、と真剣に考えてしまう。基本となる骨格のポテンシャルがとてつもなく高いのだろう。

一方、同じく2006年に新着となったもう1台が、通称「素のケイマン」こと、2.7Lエンジン搭載の「ケイマン」だ。可変バルブタイミング&リフト機構のバリオカム・プラスを採用した2.7Lのフラット6エンジンは、ケイマンS用3.4Lユニットが発する最高出力に対して、ちょうど50ps小さい245psを発生。ただし、この数字を単位当たりの排気量で換算してみると、ケイマンSの87.1ps/Lに対してケイマンは91.2ps/Lと、実は明確に逆転を図っているのが、興味深いところだ。

ところで、ケイマンS用エンジンの298psという最高出力は、ポルシェ社が得意とする「数年先までのマーケティング戦略を踏まえた、巧みなシナリオライティングによる結果」と推測できるものだ。すなわち、スポーツカーにおける300ps以上という最高出力は「911シリーズにしか許していない」と考えることができる。

先日発表された2007年モデルのカイエンがついに直噴システム採用の新エンジンを搭載し、それが従来型に対して大幅な出力アップを実現させていることを考えると、水平対向エンジンにも直噴システムが採用されるのはそう遠くない将来と推測できる。となれば、まずはそうしたリファインによって911シリーズのエンジンの出力を引き上げた上で、ケイマン/ボクスターシリーズのエンジンも強化させるシナリオが成り立つ。その時こそ、911シリーズ以外のスポーツカーにもオーバー300psスペックのエンジン搭載が解禁されるのではないだろうか。

それはともかくとして、「わずか」245psの心臓を積んだケイマンの走りも、それはそれで十分にスポーツカー的なものであることは間違いない。17インチタイヤを標準とするものの、それでもオプション設定のPASMをチョイスしないと街乗りシーンでのコンフォート性がやや辛いことは知っておくべきだ。ここを踏まえておけば硬派なイメージの漂うケイマンSに対して、よりカジュアルに乗りこなせるケイマンの魅力も大きいだろう。

ただし、通常時は2速発進を行い、トルコンスリップの感覚も小さくないティプトロニックSの仕上がりはそろそろポルシェに相応しい最先端のものとは言えなくなってきた。ケイマン/ボクスターシリーズにとどまらず、ポルシェ車全般にそろそろ刷新を行って貰いたいのがそのATだ。ポルシェ車に対する次の大きな期待は、新型ATにかかっているという人は少なくないはずである。

残念ながら今回は試乗することができなかったが、2007年モデルのニューカマーとして、911GT3、GT3 RS、ボクスターのニューエンジンも興味深いところ。近いうちにそのインプレをお届けすることができはずだ。いや、ニューカイエンにも期待はふくらむ。どうやら、ポルシェへの興味が尽きることはなさそうだ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2007年2月号より)



ポルシェ 911タルガ 4S 主要諸元
●全長×全幅×全高:4425×1850×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1610kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3824cc
●最高出力:355ps/6600rpm
●最大トルク:400Nm/4600rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:280km/h
●0-100km/h加速:5.4秒
●車両価格:1589万円(2006年)

ポルシェ 911ターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4450×1850×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1620kg
●エンジン:対6DOHCターボ
●排気量:3600cc
●最高出力:480ps/6000rpm
●最大トルク:620Nm/1950-5000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:310km/h
●0-100km/h加速:3.9秒
●車両価格:1879万円(2006年)

ポルシェ ケイマン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1800×1305mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1390kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:2687cc
●最高出力:245ps/6500rpm
●最大トルク:273Nm/4600-6000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:MR
●最高速:253km/h
●0-100km/h加速:7.0秒
●車両価格:675万円(2006年)

[ アルバム : ポルシェ 911タルガ、911ターボ、ケイマン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

3件
  • 何故、過去形?
  • この頃のケイマンSは性能上げすぎると、本当に911越えてしまうからね。
    いまさらだけど、ケイマンのターボモデルが出なくて本当に良かった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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