どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】AMG GLC、ベンツGLC、ベンツGLB【ベンツ人気SUVを比べる】 全103枚
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)
Cクラスをベースに開発されたSUVで、AMGバリエーションのクーペ・モデル。車名のとおりのモデルである。
GLCクラスは、MB車のSUVラインナップではGLBクラスの上位に位置するが、全長/ホイールベースは多少の差であり、車体サイズなら同格に分類できる。
しかし、キャビンスペースはGLBクラスが一回り大きく、3列シートの採用を可能としている。
言い方を換えるならGLCクラスは実用性を売り物にするモデルではなく、FRのMB車のエントリーに位置するCクラスの“走りの継承”を訴求点とするSUVなのだ。
そのクーペ仕様なら、キャビン実用性はさらに低下して当然。
2名乗車基準の用途向けと勘違いされそうだが、カタログスペックでのヘッドルーム減は35mm。
天井の圧迫感は強くなるが、男性にも十分なスペースがある。
こう見えて使えるパッケージ
レッグルーム寸法は共通。視覚的な閉塞感は多少強いものの、4名乗車常用でも不足ない居住性。
外観の雰囲気で選ぶタイプのモデルにしては、実用性も良好である。
こういった実用性とスポーティな味わいを両立したGLCクーペの特徴は、AMGになっても変わらない。
むしろ走りにおける実用性(質)とスポーティ(絶対性能)の両立という点では、GLCクーペのコンセプトに最も忠実なモデルと言えよう。
AMG 43には3LのV6ツインターボが搭載される。
V8ツインターボのAMG 63には及ばないまでも、390ps/53.0kg-mのパワースペックは同車格SUVではトップレベルだ。
ただ、「あり余るパワー」とか「強烈な加速」と表するようなじゃじゃ馬感は皆無である。
最高出力の発生回転数は6100rpmだが、最大トルクは2500-5000rpm。3000rpmからのマニュアル変速全開加速では、体感的には加速度の変化はあまり感じられず、ほぼフラットに6000rpmに至る。
回転上昇とともに盛り上がる昂揚感のある加速感を求める向きには物足りないかもしれないが、回す心地よさがありながら高回転域でも荒ぶらないエンジンフィールもあって、極めて紳士的だ。
意外にもジェントル?
もっとも、コンフォートモード/Dレンジで走らせていれば、エンジン回転数は常に低く抑えられている。
巡航回転数は80km/hでも1200rpm程度。巡航ギア維持能力も高く、9速ATを利した1段ダウンシフトを巧みに用いて加速への移行も滑らか。
微妙なペダルコントロールへの追従性も良好。悠々としたドライブフィールが、ツーリング時のプレミアム感を高めてくれる。
駐車場や坂道発進などの細かな使い勝手もよく、苦手とする状況もない。際立つパワースペックながら常に上品に振る舞うのがとても印象的である。
素晴らしいとか見事と表すれば嘘臭くも聞こえるが、乗ってみればそれが決して誇大な表現でないことが理解できるはず。一般論としてハンドリングに求められる要件がすべて高水準でまとまっていた。
一昔の高性能オンロード志向のSUVなら、高い重心を硬いサスで抑え込むのが一般的。コーナリング時の横方向の負荷変動が大きくなり、横G変化も忙しく操縦性も神経質になりやすい。
AMG GLCは違っている。
足さばきも模範生
加減速Gや横Gの変動を、ストロークを使って穏やかに往なしてしまう。
ストローク量そのものは少ないのだが、動き出しから収束までの繋がりがいい。減衰力が滑らかに立ち上がりストロークとともに強くなるようなストローク感で、当然揺れ返しも抑えられている。
加わるGが大きくなるほど減衰の利きもよくなり、低負荷ではしなやかに、高負荷では強靱に制御され、負荷変化に対してストローク量の変動も少ない。
電子制御エアサスがあればこそだが、ここまで使いこなしているクルマはそうそうない。
このフットワークは、ハンドリングには下り勾配の高速コーナリングやコーナリング中の急制動などのコントロールを失いやすい状況でも、操舵に素直なラインコントロール性を実現。
小気味よさとか軽快感には欠くものの、圧倒的な信頼感を与えてくれる。
乗り心地では時として段差乗り越えで車軸まわりの振動を感じるが、角のある当たりはなく、20インチの(前)255/(後)285を履くにしては滑らかである。
走行モードでスポーツ+を選択すると低中速で硬さを意識させられるが、速度域が高くなるとコンフォートモードとの差は少なくなる。スポーツ+の乗り心地も意外と実用的である。
「買い」か?
AMG GLC 43 4マティック・クーペの日本導入は2017年。2019年10月にはMCが施され安全&運転支援機能のアップデートや「ハイ、メルセデス」でお馴染みの会話型ボイスコマンドを採用したMBUXが採用された。
デビューは4年前でも最新のMB車と変わらぬ安全&運転支援機能や車載ITを備え、良質な高性能共々カテゴリーをリードする実力なのは間違いない。
1006万円の車両本体価格では流石に買い得とは言えないが、GLCクーペのエントリーに位置するディーゼル搭載の「220 d 4マティック」の266万円高ならば投資効果はかなりのもの。
動力性能の質も量も大幅アップのパワートレイン、AMG専用電子制御エアサスやブレーキシステム、内装の設えもグレードアップ。
しかも、カタログスペックには表れない走りの質感の差もある。
AMGにはクルマ好きのための魅力を高めたブランドの印象もあるが、どちらかと言えばマニア限定とするには優等生すぎる。
ブランドへの信頼と安心からMB車を選択するユーザーも少なくないだろうが、その期待も裏切らない。
1000万円級のツーリング志向のSUVとしては中身の濃いモデルだ。
AMG GLC 43 4マティック・クーペ スペック
メルセデスAMG GLC 43 4マティック・クーペ
価格:1006万円(2021年1月~)
全長:4740mm
全幅:1930mm
全高:1590mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:9.6km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:1920kg
パワートレイン:V型6気筒2996ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:390ps/6100rpm
最大トルク:53.0kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック
乗車定員:5名
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みんなのコメント
最低Eクーペだな。