今やソリオの下…プリウスの地盤沈下が急速に進んでいる!
欧州メーカーのフル電動化=電気自動車(BEV)シフトを筆頭に世界の自動車業界が電動化に向かう中、日本ではまだまだハイブリッドを軸とした電動化が中心です。
>>現行型プリウスのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる
その象徴的存在が、1997年に登場して世界を変えたハイブリッドカーの「トヨタ プリウス」でしょう。4代目となる現行モデルはスタイリングの悪評もありましたが、2018年末のマイナーチェンジでスタイルを刷新すると、2019年には登録車の年間販売トップになるなど、相変わらずの強さをみせていました。
しかし、翌2020年の年間販売ランキングでは12位に後退、2021年上半期の販売ランキングでは15位に甘んじるなど、存在感が薄れつつあります(※自販連調べによる登録車の通称名別販売ランキング)。ちなみに上半期の14位は「スズキ ソリオ」、16位は「トヨタ ノア」17位は「ホンダ ステップワゴン」となっていて、いまのプリウスがどのようなポジションにあるのか実感できるのではないでしょうか。
ランキングダウンにはプリウスの名を冠した(つまりプリウスの登録台数に足し合わされる)ヒンジドアミニバンの「プリウスα」が2021年3月で生産終了となったことも影響しているものの、プリウスがかつてほど市場から求められていないという印象が強くなっています。
ハイブリッド専用モデルの役割はすでに終わっている
そんなプリウスにフルモデルチェンジの噂が流れていますが、パワートレインやスタイリングに関する具体的な情報は聞こえてきません。絶対条件であるはずのハイブリッド専用モデルという構成についても疑問が湧いているほどです。
というのも、もはやハイブリッドは特別なものではなく、ハイブリッド専用モデルとしての「プリウス」の価値はすでに役割を終えているから。ハイブリッドが必要なら、「ヤリス」や「アルファード」や「ハリアー」のハイブリッドモデルがあるわけで、これだけハイブリッドの選択肢が増えた中で、専用車は必要あるかといえば微妙です。
さらには燃費性能で訴求できる時代も終わりに近づいています。発電時のCO2排出はさておき、電気自動車なら排ガスを出さず、燃費という概念もありません。この電気自動車と比べるとハイブリッドカーは古いという見方も出てきているわけです。ことグローバルでは、プリウスをハイブリッドカーとしてフルモデルチェンジする必然性に疑問が出てきているのが、現在の状況といえるでしょう。
次期型はトヨタの技術の意地を見せるショーケースになる!?
とはいえ、トヨタはCO2削減のベストソリューションとしてまだまだハイブリッドが有効であると主張しています。つまり、次期プリウスはトヨタが主張する環境性能を実現する技術のショーケースとしてフルモデルチェンジを果たす可能性もあります。
これまでプリウスのハイブリッドシステムは、プリウスから受け継ぐことはあっても他モデルから受け継いだことはありません。ですから、フルモデルチェンジするのであれば、完全新設計のエンジンとハイブリッドシステムを期待したいところでしょう。
レクサスUXに搭載された最新世代の2.0Lエンジンが現実路線か?
しかし、トヨタ自身も内燃機関が今後もずっと続くとは考えていないはずで、エンジンを完全新設計にするのは開発費の回収という点でリスクが大きいのではないでしょうか? そこで考えられるのが、「レクサス UX」のハイブリッド車に採用された2.0Lエンジン「M20A-FXE」を採用する案です。
最新世代のM20Aエンジンは、ハリアーなどのガソリン車仕様にも搭載されていますが、ハイブリッド用エンジンとしてはレクサスUXにしか採用されていません。これでは、あまりにリソースとしては無駄遣いですから、次期プリウスに載せるというのは既定路線と考えていいのではないでしょうか。
とはいえ、レクサスUXハイブリッドの燃費性能はWLTCモードで22.8km/Lで、この程度の数値ではプリウスの燃費性能として満足できるはずもないのは明らかです。空力やハイブリッドシステムによって燃費性能を大きく改善していないと、ユーザーとしては納得できないでしょう。
個人的には、プリウスの持つ環境イメージをブランドとして活用するのであれば、より身近な価格帯の燃料電池車として生まれ変わるくらいのインパクトを期待したいところですが、水素インフラを考えると燃料電池車が乗用車の主流になるのは難しいということは、トヨタも理解していることでしょう。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
※写真
1枚目:現行型トヨタ プリウス
2枚目:現行型レクサス UX
3、4枚目:レクサスUX ハイブリッドモデルのパワートレーン
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