◆ヤマハはエンジンを諦めない!
「ジャパンモビリティショー2025」のプレスカンファレンスが終わった直後、ヤマハ発動機の設楽元文社長はカーボンニュートラル達成のためには、「いろいろな取り組みをやっていて(単一の技術に依存せず)マルチパスウェイの方針を続けていく」と、報道陣のカコミ取材で答えた。
その取り組みの一例としてヤマハブースで世界初公開、および国内初公開されたのが3台の電動化モーターサイクル。そのうち、内燃機関、つまりエンジンとバイクの新たな可能性を提案するのが、電動モーターと内燃機関を効率的なパッケージング技術で統合したプラグインハイブリッドバイク『PROTO PHEV』とストロング・ハイブリッドスクーターの『PROTO HEV』だ。
バッテリーEVは航続距離や充電インフラに不安がある。ハイブリッドなら住宅街や近距離ではモーターで静かに走り、高速道路などではエンジンで長距離移動し、発電しながら走ることができる。
「静」と「動」、異なる2つの動力性能を自在に操ることで、市街地と郊外の移動をシームレスに、ストレスフリーで可能にした。
「PROTO PHEV」は『MT-09』譲りの並列3気筒エンジンを搭載した大型スポーツモデルであることが見てわかる。MT-09にはなかった大きなエアダクトが一体どんな役割を果たすのか!? ヤマハ発動機 パワートレインユニット パワートレイン先行企画開発統括部の増田貴裕氏に聞くと「主にバッテリーを冷やします」と教えてくれた。
バッテリーやモーターなどを追加しながら、車体重量の増加を極力抑えて軽快なハンドリングへの影響を抑えている。また、タンクカバー上面にはバッテリーらしきものが、姿の一部を見せているものの、燃料タンク容量をなるべく減らさないように設計されていることも明かしてくれた。
状況に応じて、電動からハイブリッドに自動で切り替えて走行できるモード機構を搭載しているとのことだが、気になることが一つある。
モーターで走行している途中からエンジンに切り替わる。四輪車ではなんともないことだが、二輪車の場合、エンジン始動時に車体への挙動として影響を及ぼさないのか? 旋回中など、ライダーは絶妙のバランスで車体を操っている。そんな時に、大きなクランクがいきなり回り出すのだ。
「初期の仕様では、テストライダーからびっくりしてしまうというコメントがありました。走行中に回転物が回り出せば、ジャイロ効果で車体が起き上がりますし、どの程度ならいいのか、せめぎ合いでした」と増田氏は話す。
こうしたところは、ヤマハですでに実績のある電子制御システム6軸IMUと合わせれば、車体姿勢とシステムを合致させていくこともできるだろう。可能性が無限大だ。
「PROTO PHEV」は参考出展としながらも、ナンバープレートホルダーや灯火器類などがすでに備わっている。発売も間近ではないかと、期待せずにはいられない。
◆ヤマハらしさ感じるハイブリッド版XMAX
同車格比で燃費を35%以上向上したという「PROTO HEV」は、ヤマハコミューターのMAXシリーズに加わるのか。車格は軽二輪250ccクラスの『XMAX』と同等で、「コミューターとして使うには最適なサイズ」と増田氏は言う。
モーターだけ、エンジンだけ、その両方でも走ることができ、動力性能でもXMAXを上回り、移動手段としてだけでなくファン領域で二輪車を提案し続けるヤマハらしさを存分に発揮している。
「PROTO PHEV」もそうだが、エンジンがかかって欲しいところと、なくていいところはライダーが自在に操れるようにした。
◆フルカーボンの「電動R1」か!?
最後の1台が「電動YZF-R」とも呼べる『PROTO BEV』で、今回のモビリティショーが世界初公開だ。なんと外装はドライカーボン。担当者に話を聞くと、今季限りで終了したMotoEクラスへの参戦などを考えたわけではなく、「あくまでも、こんなのがあったら楽しいよねという提案です」とのこと。
ヤマハ電動トライアルバイクを実戦投入しているが、条件が大きく異なるロードスポーツ(スーパースポーツ)の領域では、まだはっきりとした目標を掲げていない。
ただし、M字ダクトが大きく開いたフロントマスクなど、そのスタイリッシュな車体を目の当たりにすると、ヤマハYZF-Rシリーズは電動でもナンバー1の使命を背負うのか、ワクワクせずにはいられない。
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みんなのコメント
ハイブリッドならBEVよりは小型軽量なバッテリーには成るでしょうが、R1みたいなスポーツバイクが重量増加してしまったらダメでしょ。ゆったりのんびり走るクルーザータイプならまだしも。