■北米で「右ハンドル日本車」が大人気、右ハンドル車の登録・走行は原則禁止なのに
アメリカやカナダなどの北米において、日本車が大人気であることは良く知られるところです。セダン系では日本でもおなじみのトヨタ「カムリ」「カローラ」、ホンダ「アコード」「シビック」など、日本車が常時販売台数ベスト5にランクインしています。また、SUVも同じくトヨタ「RAV4」、ホンダ「CR-V」や日産「ローグ」などが常に上位を占めています。
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しかし、これらの日本車はアメリカ市場向けに作られた左ハンドル車で、多くは米国内のメーカー工場で生産されています。乗っているユーザーの中にも「日本車に乗っている!」という強い意識を持つことなく乗っているケースも少なくありません。
それに対して、日本でしかも日本のユーザー向けに生産された右ハンドルの日本車が、なぜか大人気というのです。北米では右ハンドル車の登録・走行は原則禁止です。それでも「右ハンドルの日本車」が人気急上昇するのは、なぜなのでしょうか。
日本は左側通行の国ですが、左ハンドルの輸入車も日本車と同様に登録も使用も可能です。しかし、アメリカやカナダなどの北米では原則として一般ユーザー向けの車においては、右ハンドルの車は登録できません。にもかかわらず、近年は北米において右ハンドルの日本車人気が高まっているようです。
筆者(加藤久美子)もラスベガスにあるSEMA2018の会場やその周辺で、かなりの台数を見かけましたし、昨年より増えている印象です。右ハンドル車の走行は法律で禁止されているのになぜ、一部の日本車は右ハンドルのままで走行しているのでしょうか。
実はユニークな決まりによるものです。北米では製造から15/25年過ぎた車は右ハンドルでも登録可能となり、普通にナンバーを付けて公道を走ることができます。古い車への優遇措置の一つといえるかもしれません。
■右ハンドル車がOKとなるだけではない、米国の25年ルール
このルールは、右ハンドル車だけを対象にしたものではなく、たとえば左ハンドルの車で、古くてシートベルトがないようなクラシックカーでも、製造から25年以上経過していればアメリカ国内での登録がOKとなります。アメリカの保安基準や車両に関する規制でこれまではダメだったものが、25年を経ることで解禁になると思ってもらえばよいでしょう。右ハンドルであることもそのうちの一つです。
しかし、アメリカには日本と違って、国が定める25年ルール以外にも規制があり、州によっては排ガスの規制を課すところもあります。25年ルールで認可されているものであっても、州の規制に適合しないと登録や使用はできないという、アメリカらしい規則が優先されています。
■アメリカ人が右ハンドル車に魅力を感じる理由は?
2000年代以降、カナダやアメリカの車好きの若者の間では日本車ブームが急激に高まりました。いわゆるJDMブームです。JDMとは、Japan Domestic Marketのことで、「日本国内市場向けの仕様」を意味します。
基本は走りに振ったカスタム&チューニングになりますが、たとえばオレンジ色のウィンカー(アメリカで赤色)や小径ホイール、カーボン製のエンジンフードやエアロ系パーツがおなじみで、日本ブランドの高性能パーツに交換することもJDMに含まれます。
また、日本語のステッカーを貼ることも人気です。そんな北米のJDMファンにとって、究極のJDMが「右ハンドルの日本車」なのです。日本車を右ハンドルで乗る、長年日本で使われていた車をアメリカで乗ることは、最高のステイタスでもあるそうです。
日本人は走行距離が少なく(北米平均の約3分の1)、車を綺麗にして乗るのはもちろん、厳しい車検も定期的に行われるため、少々古くてもコンディションが良く、ボディのキズやへこみ、塗装はげなどもほとんどありません。究極のJDMであると同時に、大変高品質な中古車であることも魅力なのです。
■SEMA 2018で出会った究極のJDM、右ハンドルの日本車
●トヨタマークII
オーナーはかつて日本に住んでいたそう。25年ルールで解禁になるのを待って大好きなマークIIを日本から輸入しました。
●日産スカイラインR34 GT-R
R34GT-Rは1999年1月発売なので、アメリカでは早くても2024年に輸入解禁となるため、こちらのR34は15年ルール適用のカナダルートで入手したそうです。
●ホンダ アクティストリート
SEMAショーのブースで遭遇。日本の軽自動車が大好きなオーナーです。もう1台、ハイゼットワゴンも持っているそう。オーナーいわく「アクティもハイゼットもとても小さいのにたくさん荷物が積めるのが最高。シートがフラットになるのもいいよね。古い車だけどほとんど故障もないし、シンプルな構造だから修理も簡単で助かっているよ」
●トヨタ「センチュリー」
SEMAの会場前で遭遇。センチュリーはほとんど海外に出ていない車なので、ラスベガスの街を走る右ハンドル仕様のセンチュリーは激レアであることは間違いなし。(左ハンドル車はかつて、海外の日本大使館用に100台程度が製造されたことがあり?)
※ ※ ※
環境に悪影響を与えるという理由で、日本は自動車税その他の税額が高くなったり、車歴10年&走行距離10万km超になると急激に価値が下がったり…。日本は古い車が大切にされにくい国ですが、アメリカやカナダでは海外製であっても古い車を大切に扱ってくれているようです。
右ハンドルの日本車が輸入解禁となるのを待ちわびている北米プレオーナーのもとに、良質の日本車が届くと良いですね。きっと末永く大事に乗ってくれることでしょう。
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