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温故知新で楽しいスポーツカーを!! 86とBRZの協業から見えた「AE86」の背中

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温故知新で楽しいスポーツカーを!! 86とBRZの協業から見えた「AE86」の背中

 トヨタとスバルといえば最近は電気自動車の協業が話題だが、クルマ好きとしてはGR86とBRZのコラボに触れないワケにはいかないだろう。やみくもに速いだけのスポーツカーではなく、乗って楽しい、運転が上手くなるクルマを目指している。

 目指すは21世紀のAE86だったのだが、実は開発の陰には血と汗の結晶ともいうべき2社の協業体制があった。今回は2代目となる86&BRZの両車を一気乗りしてわかったコンセプト、そしてこの協業の今後に迫ります。

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文/鈴木直也、写真/池之平昌信

[gallink]

■意外!? 実はトヨタが主体で動き出したプロジェクト

2021年10月に販売を開始した86改めトヨタ GR86

 トヨタとスバルの共同開発プロジェクトから生まれたクルマが86とBRZ。クルマ好きなら誰でも知っている事実だ。

 ところが、では「どちらがイニシアチブをとって造ったの?」と問うと、「エンジンは水平対向だし、生産はスバルの工場だし、やっぱスバルでしょ?」と思ってる人が意外に多い。

 もちろん、クルマの走りはプラットフォームやパワートレーンに大きく影響を受けるから、86/BRZにスバルのテイストが色濃く反映しているのは事実。でも、このプロジェクトは「言い出しっぺ」がトヨタだったというコトを忘れちゃいけない。

 キッカケは、2002年に80スープラが生産終了となって、トヨタからスポーツカーが消滅したこと。それを憂いた豊田章男副社長(当時)の発案から、FRスポーツのコンセプトスタディが始まっている。

 トヨタがスバル(当時は富士重工)株式の20%を取得する資本提携を行ったのは2005年5月だが、小型FRスポーツを復活させる活動はそれ以前から動き始めていたのだ。

 だから、86/BRZに関してはデザインも走りの味付けもトヨタ側が主で、自社ブランド用にBRZという派生モデルを造るスバルが従という認識が正しい。つまり「はじめに86ありき」なのである。

GR86よりひと足早く、2021年7月に販売を開始したスバル BRZ

 トヨタにとっての86は、そのネーミングのとおりAE86へのオマージュだ。

 頭文字Dによって伝説の名車みたいな扱いになっているが、もともとのAE86は若者が気軽に楽しめる安価なFRスポーツだった。

 AE86のシャシー性能はデビュー時点ですでに時代遅れだったが、低い次元でリアが滑り出すおかげでコントロール性が抜群。マンガでは「下り最速」に描かれているが、事実は最速というより最楽。早くはないが楽しいクルマだったのだ。

 初代86のCEだった多田哲哉さんは、そんなAE86のテイストを現代に蘇らせるために工夫を凝らした。

 標準タイヤにプリウスと同じエコタイヤ(ミシュラン・プライマシー)を履かせたのもそのためだし、モータースポーツベース車「RC」をほぼ200万円で用意したのも同じ理由。手軽に、楽しくを、強く意識していたように思う。

■『現代に蘇るAE86』の狙いは成功したのか

前モデルでは86よりもスタビリティ重視に仕上げられていたBRZ。現モデルではどうか?

 ただし、初代86のその試みが成功したかというと、ぼくは微妙だと認識している。

 たとえエコタイヤを履いていても、そもそも86のシャシー性能は高水準。21世紀のスポーツカーはそんなに簡単にテールアウトの姿勢をとったりしない。

 しかも、馬力は200psと十分ながらNAエンジンゆえにトルクが不足気味。最大トルク205Nmでは後輪のグリップを自在にコントロールするにはパンチが足りない。

 結果として、普通に乗ってる分にはけっこう楽しめるのだが、タイヤの限界に近づくにつれてスイートスポットが狭くなり、コントロールが難しいクルマとなっていた。

 サーキットで試すと、クイックなステア操作からオーバーステア状態に持ち込むのは簡単なのだが、そこから綺麗にドリフトアングルを維持しようと思うと意外に手強い。AE86のテイストを現代に蘇らせるのは、そんなに簡単じゃなかったのだ。

 これに対し、BRZの方は最初からスバルの伝統にしたがってスタビリティ重視に仕上げられたのが幸いしている。

 もちろん、BRZでもテールを振り出すのは可能だが、そのためには速いステア操作によるフェイントモーションをきっかけに使うなど、意図的に「コジッてやる」必要がある。

 だから、BRZを「クルマなり」に走らせると、安定してスムーズなグリップ走行に収斂する。サーキットだと刺激はあんまり感じないのだが、楽チンで速いのがBRZのキャラクターなのだ。

■モデルチェンジで乗り味はどうなった?

トヨタ GR86。モデルチェンジした両車の走りは格段に向上した

 そんな86/BRZがモデルチェンジして第2世代となったわけだが、その進化は見た目の変化よりはるかに大きい。

 まず、両者共通の美点として評価したいのは、乗り心地を中心とした走りの“質感"が格段に向上していること。これはレヴォーグでの成果を応用したスバルのお手柄で、F30時代のBMWならほぼ同レベルに達したとさえ感じる。

 2.4Lに排気量を拡大したエンジンもハンドリングの向上に大きく貢献している。

 「エンジンがハンドリングに貢献?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、スポーツカーで重要なのはドライバーの意思に即応するレスポンスと、機動に必要なエネルギーを供給できる余剰トルクの大きさ。シャシーが同じでもエンジン次第で操縦安定性は大きな影響を受ける。

 先に「205Nmでは後輪のグリップを自在にコントロールするにはパンチが足りない」と書いたが、新型は250Nmに増加したトルクによってその問題をほぼ解消。

 新しいGR86/BRZが選んだタイヤは同じミシュランでもパイロットスポーツ4だが、よりグリップレベルの高いスポーツタイヤを履いているにも関わらず、限界付近のコントロール性が格段に向上しているのだ。

 おかげで、走りのテイストにおけるGR86とBRZの違いにも、興味深い変化が生じた。

排気量を2.4Lに拡大したエンジン。トルクが増加してパワフルになり、前モデルよりもテールのコントロールに余裕が生まれた

 以前は、例えばサーキットを走るなどしてスピードレンジが上がるほど、じょじょに両車のハンドリングのキャラクターが別れてゆくような傾向があった。具体的にいえば、低速域で面白いのは86だがサーキットでは逆に扱いがデリケートで、そういう領域ではBRZの方が乗りやすい。そんな違いがあった。

 新型は中速域までは以前と同じ。一般道や箱根ワインディングレベルではGR86の方が反応がビビッドで面白く、BRZの方がしなやかでトラクションのかかり方が頼もしい。どちらのキャラクターも甲乙つけ難くファン・トゥ・ドライブだといっていい。

 意外だったのは、この両車をサーキットで乗り比べると、限界付近ではどちらも似たような挙動に収斂してゆくこと。ドリフトしようと思えばどちらでも容易だし、グリップ走行に徹すればきちんとタイムを稼ぐような走り方に応えてくれる。

 全体として、サーキットでは従来型よりずっと乗りやすく、たぶんどんなドライバーが乗ってもタイムを出しやすくなっているはずだ。

 というわけだから、新型86とBRZはお好み次第でどちらを選んでもぜんぜんOK。ぼくは従来型ではBRZ派だったけど、新型はGR86の好感度がすごくアップ。ほぼ互角というのが現在の心境でございます。

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みんなのコメント

13件
  • 86と名付けられたこのクルマはテンロクのAE86とは何の関係もない、無理につなぎ合わせるならFRセリカ2000GTの後継車だろう
  • 日本は車に対する税金がネックだね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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