北海道札幌で2023年11月14日にジムニーからタイヤが脱落、そして幼稚園児に直撃するという痛ましい事故が起きた。報道を見る限りワイドスペーサーを使用した個体で、軽自動車ナンバーながらオーバーフェンダーが装着されているようだ。違法改造の有無はわからないが、今だからこそ「ハミタイ」は許さないという認識のもとこの記事を掲載します。
文/ベストカーWeb編集部、写真/AdobeStock(トップ画像=yo camon@AdobeStock)
※画像はすべてイメージです。この記事は2022年8月の記事の再掲載です
「ジムニー特権」なんてない!! タイヤはみ出し上等てマジ!? ジムニーの違法改造が黙認状態のなぜ
■ジムニーカスタムの魅力
世界的に見れば軽自動車のジムニーは日本市場限定のモデルであり貴重だ
まず最初に断っておきたいのがこの記事はカスタムを否定するものではないということ。ジムニーは車高を上げるリフトアップ、マフラーを変える、タイヤを変えるなど多くのカスタムが楽しめる「素材」でもある。
チューニングメーカーや4WDショップからは多くの車検対応カスタムパーツが販売されているし、アウトドアブームの追い風もありジムニー女子も多く誕生するなどカスタム業界にとっても追い風が吹いている。しかしジムニーならではの問題も出てきている。
それが車両からタイヤがはみ出す、いわゆる「ハミタイ」だ。ジムニーは軽自動車規格に合致する設計で、道路運送車両法によって長さ3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2mという規格に収まる設計となっている。当然ながらこの寸法からはみ出せば軽自動車規格に合致しない、つまり軽自動車にはならない。
しかし一部のジムニーオーナーは「ハミタイ上等」と言わんばかりに大幅にはみ出したタイヤを装着していたり、オーバーフェンダーなどを装着して公道を走行しているのだ。これは当然ながら道路運送車両法違反になる。
■ハミタイをしてしまうわけ
オフロードコースや林道などを走るユーザーには、ジムニーの純正タイヤサイズでは少し物足りなさを感じるのも事実(ako photography@AdobeStock)
ジムニーの純正タイヤサイズは175/80R16。簡単に言えば細くて外径の大きいタイヤだ。一般的な使用用途ではこのタイヤサイズで不満は出ないのだが、オフロードコースや林道などを走るユーザーにとっては不満も出てくる。
凸凹を乗り越えるために少しでも車高を上げたい。そんなユーザーのためにカスタムサイズのタイヤが多く発売されており、一般的には185/85R16などのタイヤを選ぶユーザーが多いはずだ。純正タイヤ比で外径約30mmアップ、幅は7mmほど広がる。これは基本的にはハミタイはしないし車検にも対応するタイヤだ。
しかしジムニーオーナーのなかにはジムニーの究極性能を試すためにもっと過酷なオフロードコースを走るユーザーもいる。その場合はトレッドの幅を広げる必要があり245幅(タイヤだけで片側75mmワイドになる)などのタイヤを選ぶケースも。さらにホイールスペーサーを噛ませることも。
ちなみに軽自動車については片側10mm(左右で2cm)以下のオーバーフェンダーは違法ではないが軽自動車規格からのはみ出しはNGとなる。また4ナンバーのJA11などはその適用外だ。
当然ながらオフロードコースなどまで積載車で移動する、もしくは普通車として登録してあればなんら問題ないのだが、公道を自走してしまうユーザーがいないわけではない。正確に言えばこれは今に始まったことではないのだが、SNSの発達でこのようなハミタイ状態での公道走行のシーンが見受けられるようになった。
ところが当事者たちはあまり気にしていないようで、違法行為を指摘するコメントには「ジムニーに無粋なこと言うな」「みんなやってる」「警察もそこまで見ていない」などの反論コメントがつくことも。もちろんジムニーだからOK、という法的根拠はない。
■それって脱税じゃ? 個人の責任と言えない状況になるかも
初代ジムニー(LJ10)のカタログには「軽の限界を追求した本格的オフロードマシン」という文字が躍る
繰り返しになるが軽自動車は車体寸法や排気量など軽自動車規格を遵守することをある種の「条件」として、税金が安くなり、通行料金の割引や諸手続きの簡素化など恩恵を受けている。「ひとり1台」の地域であれば、軽自動車が存在する恩恵は非常に大きい。
これはジムニーだって他人事ではなく、軽自動車での恩恵を享受するのであれば車体がその規格をオーバーすることは許されない。厳密にいえば税金逃れと受け止められる可能性だってある。
軽自動車検査協会の窓口でもジムニーというだけで検査も改造申請も厳しくなった印象がある。「フェンダーを付けたら大丈夫という誤解も未だにある。軽自動車規格からはみ出せば違反だし、車検なんて通せないよ」という検査員もいた。
もちろん違反切符を切られても構わないというオーナーもいるのかもしれないが、今後も違法行為を野放しにしていればどんどんジムニーに対する締め付けが厳しくなるのは当然のことだろう。
違法改造車を起因としてリフトアップなどの法的に許容されているチューニングまで批判されるケースも多々あり、カスタマイズの楽しみがどんどん狭くなっていく可能性も理解する必要がある。
最後にジムニーの歴史を振り返ってみたい。ジムニーはホープ自動車という自動車メーカーをルーツに持つクルマだ。同社の「ホープスター」という4WD車に目を付けたスズキの鈴木修氏が製造権を獲得。それがのちのジムニーになる。
ジムニーの祖先ともいうべき「ホープスター ON型」のカタログには「軽免許で乗れる不整地万能車」というキャッチコピーが輝いていた。ジムニーは軽自動車だからこそ意味がある4WDで、その意志をスズキは引き継いでいる。
せっかくの軽自動車規格なのだから、公道ではその恩恵をフルに生かしたジムニーライフを送るのが一番ではないだろうか。大きなタイヤならそれこそジムニーシエラも選べるのだし、一部の心ない人のせいでジムニーをカスタマイズするオーナー全体が悪とみられるのは、ジムニーオーナーとしてはあまりに悲しくはないでだろうか。
もちろんどんなクルマでも違法改造は言語道断だ。
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みんなのコメント
やはり、一部だろうけど、ジムニー愛用者の中にそういった考えの人 居るんですね。