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液体水素を使用するORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが2回目の24時間へ。航続距離大幅増

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液体水素を使用するORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが2回目の24時間へ。航続距離大幅増

 5月24~26日、静岡県の富士スピードウェイでENEOS スーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE第2戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』が開催される。そんな一戦に向け、今季もST-Qクラスに液体水素を使用するORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが参戦するが、2024年も大きな技術的な進歩を遂げてシリーズに臨む。

 TOYOTA GAZOO Racingは、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり、またモータースポーツの厳しい環境を通じてクルマと人を鍛え、カーボンニュートラルの実現に向けた活動を行うべく、ORC ROOKIE Racingとともにスーパー耐久に挑戦しており、2021年からは水素を燃料とするマシンをST-Qクラスに投入してきた。

スーパー耐久第7戦富士に登場の液体水素GRカローラはさらなる進化を遂げる。走行時にCO2を回収

 2022年までは気体水素で、2023年からは液体水素に切り替え参戦を続け、-253℃の超低温を保つ技術に立ち向かいながら大きなチャレンジを成し遂げてきた。気体水素の活用は続けながらも、液体水素に転換することで“給水素”時間の大幅な短縮、設備の小型化、さらに航続距離の大幅な延長など、スーパー耐久の舞台を活用しつつ、ブレイクスルーを果たしてきた。

 そんな水素エンジン搭載のORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、今季は第2戦富士SUPER TEC 24時間レースが初参戦。すでにレースは公式予選を終えたが、今季に向けた改良点が5月24日に説明された。

 2023年に登場したORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、“泣きどころ”でもあったのが液体水素をエンジンに送るためのポンプだ。水素エンジンは、燃料である水素をエンジン内に直接噴射して燃やすことで動力を得る。燃料タンクからエンジンに水素を送る際、車内で変換した気体をピストンの往復運動によって圧送するポンプを採用していたが、このポンプは発生させる圧力レンジが高いため、往復運動を回転運動に変えてモーターにトルクを伝えるクランクのベアリングやギヤに偏った負荷がかかり、摩耗や劣化が進みやすい状態となっていた。

 そのため、2023年の富士SUPER TEC 24時間レースでは、決勝中に計画的なガレージインを実施。1回目は約4時間、2回目は約3時間ストップし、2回のポンプ交換を行っていた。しかし、その後もポンプの改良は進められ、2023年も耐久性向上、軽量化が図られてきた。

 そんなORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptのポンプだが、2023年に最後の登場となった第7戦富士を終えた後からここまでの期間を使って改良が進められ、ポンプの耐久性向上のために『デュアルドライブ』と呼ばれるクランク機構を導入。これにより、クランクの両端からモータートルクを入力することが可能となり、バランス良く昇圧ピストンを動かすことが実現したことで耐久性が大幅に向上。今季はトラブルなく走ることができれば、ポンプ交換なしでのレースを予定している。

 また車体に搭載する液体水素のタンクの形状を、これまでの円筒形から異形(楕円形)へと改良した。液体水素を使用することで気体水素よりも低圧となり、タンクを異形化することが可能となったことから、楕円形に形状を変更。車内のスペースが有効に活用でき、タンクの容量は1.5倍に拡大。2022年の気体水素時に比べると、2倍以上の水素搭載量となった。またこのレイアウト変更にともない、今季のORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは新車を投入。燃料タンク自体の重量は増したが、バランス調整や車体の軽量化を行ったことで、ラップタイムは昨年同等、もしくは若干向上しているという。

 この変更にともない、2022年の気体水素時は約12周で1スティントだったものが、今回は目標値として約30周の航続距離を設定した。燃料を多く搭載することでピット作業時間は増えるとのことだが、これで通常燃料の車両ともさらに戦えるレースとなりそうだ。

 さらに、2023年第7戦富士からはカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、CO2を走行しながら回収していく装置が取り付けられたが、この装置も改良が行われ自動化が行われた。

 この技術は、内燃機関がもつ大気を大量に吸気する特徴と燃焼により発生する熱を活用し、CO2回収装置をエンジンルームに装着することで、大気中のCO2を回収するものだ。2023年には装置内でのCO2の吸着と脱離の工程をメカニックが手動で行っていたが、今回は走行中にCO2吸着フィルターをゆっくり回転させることで、吸着と脱離の工程切り替えを自動で繰り返す機構を採用した。水素エンジンはCO2を発しないが、現段階で微量な回収量とはいえ、逆に走ることでCO2を減らしていくことになる。

 今季のORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptにはモリゾウ/佐々木雅弘/小倉康宏/石浦宏明のおなじみのメンバーに加え、ヤリ-マティ・ラトバラ、そしてJRP会長でKONDO RACING代表でもある近藤真彦が自チームのカラーリングでニッサン/ニスモのロゴがついたスーツ、ヘルメットでドライブしている。メーカーの垣根を越えレースの盛り上がりを目指しているが、技術面でも大きな注目と言えそうだ。

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