この記事をまとめると
■日本での新車の販売台数の約4割を占めるのが軽自動車
最近聞かれる「軽自動車で十分」という声! では「不十分」なケースとは
■軽に関しては「ナンバー1」の売り文句は販売への効果絶大
■それゆえディーラーが「届け出」だけする「未使用中古車」が多く存在する
自社届け出車が「未使用中古車」として中古車市場に流通
自販連(日本自動車販売協会連合会)や全軽自協(全国軽自動車協会連合会)統計によると、2022暦年(2022年1月~12月)での新車の総販売台数は443万3954台となり、そのうち軽自動車の割合は約36%となっている。
とくにその軽自動車の存在が大きいのが、届け出済み(軽自動車は届け出なので)未使用軽中古車の数である。届け出済み未使用軽中古車は新車販売における激しい新車販売台数競争の副産物といっていいだろう。軽自動車はその規格が厳しく、排気量や最高出力など、パフォーマンスという面ではライバル間でほぼ横並びといっていい状態であり、見た目のエクステリアやインテリアで差をつけるのがメインとなる。
また“薄利多売”が原則であり、常に工場稼働率を高く維持することも必要とされる。見た目勝負の軽自動車では、「販売ナンバー1」という言葉はおまじないのように販売促進には効果的となる。現行型ホンダN-BOXのカタログの表紙には「2023年上半期国内販売台数No1」と書かれている。軽自動車の購入検討をしている人の多くも、購入希望車種の絞り込みでは“ナンバー1”というフレーズに流されやすいので、商談でも「N-BOXは日本で一番売れている新車です」とセールススタッフもセールストークで活用してくるのである。
この“ナンバー1”は車名(通称名)別だけでなく、ブランド別でも効果を発揮する。スズキとダイハツが常にブランド別で激しく販売競争を展開しているのもその一例。とくにダイハツの“ブランド別ナンバー1”への執着のようなものは凄まじく、現状ではまだ新車の供給体制は戻りきっていないなかでも、ナンバー1への強いこだわりを見せているようである。
激しい販売競争に勝ち、全軽自協の車名別(通称名)やブランド別販売ランキングでトップを獲ろうとするために行うのが、「自社届け出」というもの。ナンバープレートのついていない新車に、ディーラー名義などでナンバープレートをつけて販売台数の上積みを行うのである。そしてこの自社届け出が届け出済み未使用軽中古車となって中古車市場に流通するのである。
届け出済み未使用軽中古車は、だいたいナンバープレートを付けてから半年ほど寝かせてから店頭に並べるのが一般的(減価償却を進める)。ナンバープレートはついているが新車同様に未使用であり、さらに新車として購入するよりも明らかに買い得感を持たせた値付けを設定するためである。
届け出済み未使用中古車のメリットのひとつが、一カ所の展示場で各メーカーの届け出済み未使用軽中古車を展示しているので比較検討できること。 「どこのメーカーのなんという名前のクルマ」というのを知らないままボディカラーやスタイルで、“あれがいいかな、これかな”といった感じで選んで購入している風景を見たときには新鮮な感じを受けた。
そして、届け出済み未使用軽中古車は現金で購入してこそメリットを最大限に発揮するので、前述したような買い方をする人は、200万円ほどの現金持参で届け出済み未使用軽中古車を選んでいるようである。
新車は残価設定ローンがお得だが未使用軽中古車は現金がお得
現金購入でのメリットは、届け出済み未使用軽中古車を扱う多くの中古車専売店における高い金利のマイカーローンを避けられることにある。販売する業者自身が「ウチは現金で買わないとメリットはあまりない」と話してくる。並んでいる車種もカスタム系モデルのような高額グレードよりも、手ごろな標準タイプが多いのも特徴。
販売台数の調節弁として自社届け出をするので、価格がそれほど高くない軽自動車だが、そのなかでも、普及仕様で価格もそれほど高くない標準仕様が自社届け出車両として選ばれる特性もあるようだ。ブランド別販売台数競争の調整では、よりコストの安い軽トラック(ノンエアコン、ノンパワステというのもあった)が数多く自社届け出されることもある。
軽トラックの届け出済み未使用軽中古車などは売れないのかと思いきや、「都市部でも意外なほどよく売れる」との話を聞いたことがある。
そして、届け出済み未使用軽中古車を扱う業者は、「ローンを組んで購入したいなら、新車ディーラーで新車として購入したほうがいいですよ」とアドバイスしてくるのである。
現金一括購入がほとんどともいえる届け出済み未使用軽中古車に対し、新車の販売現場では軽自動車でも残価設定ローンを組んで購入する割合が高まっている。届け出済み未使用軽中古車では少なめなカスタム系モデルは、オプション次第では支払総額で300万円近くになることも珍しくない。ちなみに標準タイプではそれほどオプションをつけなくとも、支払総額で200万円を超えることは珍しくない。そのため、ナンバープレートを付けて、少し寝かせて値落ちしている届け出済み未使用中古車は、現金一括購入でメリットが大きくなるのだ。
ただ、軽自動車で残価設定ローンというのは馴染まないのではないかと考える人もいるだろう。じつは軽自動車の再販価値はかなりよく、そして長期間その傾向が持続するのである。たとえば初回届け出から10年以上経過して走行距離が10万km近い車両でも需要が多いのである。軽自動車は各年式でそれぞれニーズがしっかりあるので再販価値はかなり高く、残価設定ローンに馴染みやすいのである。
たとえばスズキの残価設定ローンとなる「かえるプラン」では、ローンを利用するとメンテナンスパックが標準付帯される。軽自動車ユーザーは納車後の愛車のメンテナンスをディーラーではなく外部業者に任せるケースが目立つ。ただ、残価設定ローンを組んだ車両は、将来的に販売したディーラーか回収して再販することになるので、スズキではメンテナンスパックを標準付帯し、ディーラーでメンテナンスを行うことで状態管理も行うということらしい。また、スズキでは、スペーシア・ベースなど一部商用車向けのプラン(軽商用車の初回車検は初度届け出から2年後になるので)も用意している。
完全に棲み分けができているというわけではないが、現金一括なら届け出済み未使用軽中古車、ローンを組むなら新車ディーラーで新車として購入する、このような傾向が軽自動車の販売現場で起きているので、共存ができているともいえるのである。
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みんなのコメント
金利払うの勿体無いよね