海外での人気やアニメの影響で価格が高騰する’80~’90年代車
近年、ヤングタイマーやネオ旧車といった“ぷち”ヴィンテージカーが注目を集めている。初年度登録から15~30年経つモデル、つまりクラシックカーの域までには達しない旧車のことだ。若い頃、それらのモデルに憧れを抱いていた50代以降が購買層の中心だが、アニメなどの影響により一部の若者からの支持も集めているという。
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ヤングタイマーの人気は国内のみならず海外にも及んでいのも注目ポイント。とくに80年代後半から90年代初頭にかけて販売された国産スポーツカーに人気が集まっている。日産R32型&R34型スカイラインGT-Rの中古車価格高騰が話題になったのは記憶に新しいが、価格に影響を与えたのは海外からの人気が大きな要因だ。
そんなヤングタイマーとクラシックカーについての境目をハッキリと区別することは難しい。ただ、入手・維持することがクラシックカーと比べ容易なのがヤングタイマーだとイメージする人は多いはず。安全面は別としても、現代の交通環境下で(かろうじてではあるが)問題なく使用できそうな印象もある。しかし、古いモデルであれば製造から30年経っているのがヤングタイマー。維持するのはそう簡単ではない。
例えば初代マツダ(ユーノス)ロードスター。いまでも国内に約2万台あまりが現存しているといわれ、ヤングタイマーの入門用車種としてはぴったりのモデルのようだが、実情はどうも違うらしい。
ひとつは程度の良い中古車が市場に現れなくなったこと。
「走行距離が10万~15万kmといった過走行の個体が、なんの保証のないまま販売されているケースが多いうえ、ひと昔前に比べ販売価格がぐっと上がりました。『ここまで高い値段なら、きっと整備済みのはず』と購入したのに、実は不具合がそのままで販売されているケースも少なくないと聞きます」。ロードスターを主に手がける専門店オーナーがこう嘆くように、いまやリーズナブルで程度の良い個体を見つけることは奇跡に近い状況だという。また、不具合を直そうとしても、必要なパーツがすでにない場合も珍しくないという。
初代ロードスターについては、マツダがレストアサービスを2017年から開始したことで、入手困難だったキャンパストップなどが復刻されパーツの入手が徐々に改善している。それでも対応できない箇所はある。
「とくに問題なのがAT車。トランスミッション周りのパーツは入手困難なうえ、壊れてしまうと修理することは不可能です。AT車が壊れた場合どうするかですって? お客さんにはトランスミッションをMTに載せ替えるよう提案するんですよ(苦笑)」(前出・専門店オーナー)。
一見、無茶な対応かと思えるが、現実的かつ確実に動かすことができる状態に復帰するためMTへ載せ替える初代ロードスターオーナーは少なくないという。このように、現存率が多い初代ロードスターでさえ整備については苦労がたえない。
ヤングタイマーを維持するための情報源となるオーナーコミュニティ
ロードスター以外でも程度が良いヤングタイマーを入手することは簡単ではないというが、そんな時、心強いのが現行&旧オーナーとの繋がりだ。ヤングタイマーのなかでも人気車種はオーナーなどによるコミュニティがあり、メンバー同士でパーツの入手状況や車両の売り買いなども行われるため各種情報が豊富。ヤングタイマーを購入する場合、貴重な情報を手に入れるため事前にコミュニティに参加するケースも多いのだ。
ただ、ヤングタイマーを所有するオーナーは大小あるもののクルマに対するこだわりは強く、購入時にそこがネックになるケースもあるようだ。
例えば、初代ホンダ・NSX。1990年に登場した初代・NSXは、初代ロードスターとくらべ販売台数が少なかったこともあり、そもそも入手しにくい。そのため、限られた専門店などで入手することが一般的だが、欲しくても買えない場合があるのだ。
「NSXを所有するとき『クルマ(NSX)の扱い方を知らない人は所有することができない』と考えているオーナーが多いのです。そんなオーナーたちは、例えば5年間という長いスパンで段階的にメンテナンスを行ない理想的な車両に仕上げている。この途中、なんらかの事情で車両を手放さないといけない場合、購入希望者にはこのまま継続してメンテナンスして欲しい、また、屋内保管だった場合は同じような保管方法を踏襲して欲しいなどの希望を理解してくれないと売りたくない、というオーナーは多いですね」。
これは、初代NSXの販売を数多く手がける中古車販売店のオーナーから聞いた話だが、同じようなケースが他のヤングタイマーでも大なり小なりあるという。
車種により事情は異なるとは思うが、ヤングタイマーは所有のみならず、購入する時でさえ一筋縄ではいかない現実があった。
(レポート:手束 毅)
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