■タイヤに刻印された「M+S」は何を示している?
近年急成長しているSUVカテゴリですが、トヨタ「ライズ」や「ヤリスクロス」、「ハリアー」といったSUVが2020年の登録車販売ランキングで上位になるなど、ますます人気のジャンルとなっています。
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そんな人気のSUVのなかには、「M+S」という表記のあるタイヤを新車装着するモデルが存在します。
M+Sの表示があるタイヤとはどんなタイヤなのでしょうか。
M+Sの”M”は泥やぬかるみを意味する「MUD(マッド)」、“S”は雪を意味する「SNOW(スノー)」を表しています。
M+S規格のタイヤは、泥が詰まりにくいようにタイヤの溝を太くして通常のタイヤよりも悪路に強い設計となっていると同時に、軽く降った程度の雪道(浅雪)も走れる設計が施されているのです。
トヨタ「ランドクルーザー」(全車)やトヨタ「RAV4」の「アドベンチャー」グレードなど、オフロード系のSUVがM+S規格のタイヤを採用。
M+Sと表記されているタイヤは通常のタイヤよりも荒れた路面や雪道に強く、路面を選ばないオールラウンダーとしての性能が高いといっていいでしょう。
特定の新車に採用される理由は、悪路などを走れるようにするという性能上の目的に加えて、そのクルマのキャラクターを明確にする狙いもあるのです。
※ ※ ※
一般的なスタッドレスタイヤもオールシーズンタイヤにも、このM+Sマークが付いています。
ちなみにこのM+Sマークは、ほかにもSUVや四駆用のオールテレーンタイヤ(A/T)やマッドテレーンタイヤ(M/T)に刻印されていることが多いです。
A/TやM/Tは、サマータイヤに比べるとスノー路面にも対応していますが、厳密にいうと冬用タイヤではありません。
一般的なM+Sタイヤの雪道走行性能は「夏タイヤに比べれば滑りにくい」といったレベル(高い雪道性能が認められた「スノーフレークマーク」がついたタイプを除く)。
スノーの表示があるとはいえ「少しの雪なら対応できる」程度で、雪道を走ることはオススメしません。また、凍った路面は苦手です。
■M+Sタイヤがほぼ全車に新車装着される地域とは?
そんなM+Sタイヤを新車装着する車種は日本では少数派ですが、ほぼすべての新車に装着される地域もあります。それはアメリカ合衆国です。
アメリカではSUVのみならずセダンやクーペ(一部の超高性能モデルを除く)でも新車装着タイヤやM+S規格のものが一般的。その理由は、基本的に冬でもスタッドレスなどのウインタータイヤに履き替えることなくクルマを使えるからです。
アメリカは日本よりも除雪が徹底される傾向にあり、タイヤに日本ほどの雪道性能は求められません。また、気候の違いから道路が凍結するケースも少ないのです。
だからスタッドレスタイヤは必要とせず、1年を通じて履きっぱなしにできるM+Sタイヤを多くの車種で新車装着しているのです。
アメリカでも山岳地域など降雪量が多く路面が凍結することもある地域ではスタッドレスタイヤなどに履き替える人がいるものの、そういった地域を除けば多くの人が冬でもM+Sで走っています。
ときどき大寒波などを伝えるアメリカのニュース映像で、クルマが路面凍結した坂道などをゆっくりと滑り落ちていくシーンを見ますが、あれは凍結路面ではほぼグリップしないM+Sタイヤゆえの現象といっていいでしょう。
日本では一部の仕様が悪路走破性を高めたり、キャラクターを強調するために選ぶM+Sタイヤですが、北米では多くの新車が標準装着するなど、地域によってそのポジションに違いがあるのが興味深いところです。
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