■日本なら自動車税がお得になる意外な小排気量車を振り返る
エコカーの代表的なパワーユニットといえば、エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドが挙げられますが、これとは別のアプローチで開発されたのが「ダウンサイジングターボエンジン」です。
2000年代に欧州車から採用が始まり、いまでは日本車やアメリカ車にも搭載されるようになりました。
ダウンサイジングターボエンジンは排気量を小さくして気筒数を減らすことで小型軽量化をおこない、低下した出力をターボチャージャで補うというものです。
高負荷の領域ではターボエンジンならではの高トルクを実現し、低負荷の領域では小排気量エンジンによる燃費向上を狙い、小型軽量によるスペース効率の向上と車体の軽量化と合わせ、トータルで低燃費を実現するという思想のもと誕生しました。
近年、比較的大型のモデルのガソリン車でスタンダードなパワーユニットになりつつあり、とくに日本では排気量によって課税される自動車税の面で有利というメリットがあります。
そこで、見た目からは想像できないほど意外な小排気量車を、5車種ピックアップして紹介します。
●ジープ「レネゲード」
ジープのモデルというと「ラングラー」に代表される質実剛健なイメージがありますが、そこまでハードではないSUVとして「レネゲード」があります。
レネゲードは2015年に誕生し、同年には日本でも販売を開始。プラットフォームやパワーユニットなど主要なコンポーネンツは、同グループのフィアット「500X」と共有して開発されました。
現行のグレード構成は「Longitude(ロンジチュード)」「Limited(リミテッド)」「Trailhawk(トレイルホーク)」の3モデルのガソリン車と、プラグインハイブリッド車の「Limited 4xe」と「Trailhawk 4xe」の5タイプを展開。
ボディサイズは全長4255mm×全幅1805mm×全高1695mm(ロンジチュード)と、全長は短いものの見た目よりもワイドですが、日本の道路事情でも使い勝手を損なうほどではありません。
ガソリン車のエンジンはわずか1.3リッターの直列4気筒ターボを搭載。出力はグレードで異なり、ロンジチュードとリミテッドが151馬力、トレイルホークが179馬力と十分にパワフルです。
駆動方式はトレイルホークとプラグインハイブリッド車が4WDで、ほかはFFとなり、ジープのモデルのなかでも悪路走破性はあまり重要視されておらず、都会派のクロスオーバーSUVというコンセプトといえます。
●メルセデス・ベンツ「Eクラス」
世界的に高い人気を誇るプレミアムブランドのメルセデス・ベンツも、近年はダウンサイジングターボエンジンを積極的に採用しており、なかでも注目されるのが「Eクラス」です。
現行モデルのEクラスは2016年に発売された5代目で、ボディタイプは4ドアセダンを基本に、2ドアクーペと5ドアのステーションワゴンを設定。ステーションワゴンにはSUVテイストの「オールテレーン」もライナップされています。
グレード構成はパワーユニットと装備によって分けられ、セダンだけでも7グレードあり、これに高性能なAMGモデルが2種類とさまざまなニーズに対応。
ベーシックグレードの「E200 スポーツ」では1.5リッター直列4気筒ターボという小排気量エンジンを搭載しており、最高出力は184馬力を発揮。これに最大13.6馬力のスタータージェネレーターを装備したマイルドハイブリッドです。
ボディサイズは全長4940mm×全幅1850mm×全高1455mm(セダン E200 スポーツ)という堂々した体躯で、車重は1720kgもありますが、この車体をわずか1.5リッターエンジンで走らせることなど、ひと昔前では考えられませんでした。
●BMW「i8」
BMWは通常のラインナップとは異なるモデルとして、プラグインハイブリッド車とEVの「iシリーズ」を展開しています。
もっともコンパクトな「i3」から今後登場するピュアEVの「iX」まで全部で6モデルが発売予定ですが、既存のモデルのなかでもユニークなのが「i8」です。
i8はまさにスーパーカーと呼ぶべきロー&ワイドで未来的な外観デザインのウェッジシェイプで、最大の特徴は斜め上に開閉されるシザーズドアを採用していることです。
ボディはアルミ製のバックボーンシャシにCFRP製のキャビン(パッセンジャー・セル)を架装する構造の、2+2の4シーターで、プラグインハイブリッド車ながら1590kgという軽量な車体を実現。
サイズは全長4690mm×全幅1940mm×全高1300mmと、数字上でもロー&ワイドさがうかがえるでしょう。
そして、パワーユニットはミニに採用されているのと同型の1.5リッター直列3気筒ターボエンジンをミッドシップに搭載して発電とリアタイヤを駆動。フロントに142.8馬力のモーターを搭載する4WDで、システム出力は373.9馬力を誇ります。
走行状況によってモーターとエンジンを使い分けるように制御するのは通常のストロングハイブリッド車と変わりませんが、大容量バッテリーによって最大54.8kmのEV走行が可能で外部充電に対応。
なお、i8は1グレード展開ですが、オープンモデルの「i8 ロードスター」もラインナップしています。
見た目は完全にスーパーカーですが、わずか1.5リッターのエンジンを搭載しているギャップがBMWらしいのではないでしょうか。
■巨大なボディでも2リッターエンジンで十分?
●シボレー「カマロ」
GMが有するブランドのひとつシボレーのラインナップで、長い歴史があるスポーツカーといえば「コルベット」と「カマロ」です。
なかでもカマロは日本車でいうところのトヨタ「86」のようなポジションのモデルで、若者でも手が出せるように本国での価格は2万5000ドル(日本円換算で約272万円)から設定されています。
現行モデルは2015年に登場した6代目で日本でも展開されており、国内モデルのグレードは「LT RS」、オープンカーの「コンバーチブル」そしてトップグレードの「SS」の3タイプで、SSは伝統的な6.2リッターV型8気筒OHVエンジンを搭載し、最高出力は453馬力を発揮。
一方、LT RSとコンバーチブルには最高出力275馬力の2リッター直列4気筒DOHCターボを搭載しています。
ボディサイズは全長4785mm×全幅1900mm×全高1345mmとまさにアメリカンなビッグサイズですが、2リッター直列4気筒エンジンというのが、現代のマッスルカーといえるコンセプトではないでしょうか。
●ランドローバー「ディフェンダー」
プレミアムSUVに特化した英国のメーカーであるランドローバーの原点というべきクロスカントリー車が「ディフェンダー」です。
その前身は1948年に誕生した「ランドローバー」で、2020年4月に新型ディフェンダーが発売されました。
新型ディフェンダーのデザインは従来モデルをオマージュしながら、最新のデザインエッセンスを取り入れたボクシーなデザインを採用。
ボディタイプも従来モデルを踏襲するかたちでショートホイールベースの「90」と、ロングホイールベースで3列シートも設定する「110」をラインナップし、ボディサイズ(エアサス車)は、90が全長4510mm×全幅1995mm×全高1970mm、110が全長4945mm×全幅1995mm×全高1970mmとかなりのビッグサイズです。
シャシはアルミ製モノコックを採用。ランドローバー史上でもっとも頑丈なボディ構造といわれ、従来のラダーフレームに比べて3倍のねじり剛性を確保しつつ軽量化も実現し、クロスカントリー車としての性能を有しています。
搭載されるエンジンは2リッター直列4気筒ガソリンターボで、最高出力300馬力を発揮。110では3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンも設定されています。
ミドルクラスSUVとはいえこの巨体で車重は2280kg(110 3列シート)もありながら2リッターエンジンとは驚かされます。
※ ※ ※
今回、紹介したモデルはすべて輸入車ですが、日本車でもホンダ「ステップワゴン」が1.5リッターエンジンで、カローラが1.2リッターエンジンを搭載するなど、ダウンサイジングターボエンジンが広がりをみせています。
しかし、大型のモデルではダウンサイジングが普及していないのが現状で、これは日本の交通事情ではハイブリッド車の方が燃費的には有利なことが挙げられます。
いずれにしても世界中で電動化が進むなかではダウンサイジングターボエンジンはつなぎの技術といえ、今後の普及拡大は鈍化するとみられています。
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