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日産が抱えるラインナップ問題! 日本を見捨てたマーチ、マーチを見捨てた日本人

掲載 更新 44
日産が抱えるラインナップ問題! 日本を見捨てたマーチ、マーチを見捨てた日本人

 日産『新型ノート』がe-POWER専売になったことで、ノートのガソリン車を購入したい人にディーラーからおススメされるのは『マーチ』だという。

 しかし、現在もマーチは売り上げが伸びておらず、SNSなどインターネット上の反応を見ても、「ノートの代わりをマーチが担うことは難しい」といった否定的な意見が多くを占めている。

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 マーチはなぜ売れないのか? 海外では『マイクラ』として売っていて、デザインがカッコいいと評判なのに、日本向けはいつまでも不評なデザインを引っ張るからなのか? それとも別の理由があるのか?

 今回は、かつてはコンパクトカーカテゴリーで人気を博したものの、急激に失速することになった『マーチ』が抱える問題について考察していく。

文/渡辺陽一郎
写真/NISSAN

【画像ギャラリー】日本人に愛された歴代『マーチ』と日産コンパクトカーの世界戦略車を写真でチェック!!

■ノートのガソリン仕様の代役は「マーチ」? 日産の思惑とは違う厳しい実情

 2020年11月に発表された日産『新型ノート』は、ハイブリッドのe-POWERのみを搭載して、ノーマルエンジン車の用意はない。理由を開発者に尋ねると、以下のように返答された。

 「先代ノートでは75%前後をe-POWERが占めた。また新型は内装の質を向上させており、同じインパネを低価格のノーマルエンジン車には採用できない。2種類を造り分ける必要も生じるから、新型ノートはe-POWERに限定した」

すべり出しは絶好調の『新型ノート』e-POWER。発売後約1カ月で月間販売目標の2.5倍となる2万台を突破した

 先代ノートは確かにe-POWER比率が高かったが、25%前後はノーマルエンジン車が売れていた。その売れ筋グレードの価格は150~160万円であった。一方、e-POWERのみを搭載する新型ノートの価格は、販売構成比が84%に達する「X」で218万6800円だ。ノーマルエンジンを搭載する先代ノートに比べて約60万円高い。

 しかも、運転支援機能のプロパイロットを含んだセットオプション(42万200円)、LEDヘッドランプを含んだセットオプション(9万9000円)を両方とも加えると、合計額は270万6000円に達する。

 ここまで新型ノートの価格が高まると、購入予算を200万円以内に抑えたいユーザーは困るだろう。特に法人の場合、社内規定で購入する車両の価格などが決められている場合も多い。どのように対応しているのか販売店に尋ねた。

 「日産のコンパクトカーには、ノートのほかに『マーチ』も選べる。以前のマーチはインテリジェントエマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)などが用意されず、購入しにくかったが、(2020年7月の)マイナーチェンジで安全装備を幅広く充実させた」

 マーチ以外の車種はどうか?

 「先代ノートから『デイズ』や『デイズルークス』に乗り替えるお客様も多い。軽自動車だが、天井の高いルークスの車内は、先代ノートよりも広い。安全装備は新型ノートと同様に先進的だ。価格はルークスの場合でも先代ノートと同程度だから、乗り替えにも適する」

2020年度の販売台数は2車種合わせて14万4000台に上る『デイズ』と『ルークス』。日産の総販売台数が46万8千台なのでその人気ぶりがわかる

 マーチが安全装備を充実させたのは2020年7月だから、改良がユーザーから評価されたなら、翌月以降は前年に比べて売れ行きを増やす。しかし実際は、マーチの売れ行きは伸び悩む。2020年10月以降の国内販売は、コロナ禍の影響を脱して対前年比が増加に転じたが、マーチの1カ月当たりの登録台数は400~800台だ。前年に比べると110~120%で若干増えたが、コンパクトカーとしては少ない。

 ちなみに2021年1月には、2020年末から納車を開始した新型ノートが約7500台、トヨタ『ヤリス』は『ヤリスクロス』の台数を除いても約9200台、ホンダ『フィット』も約5900台を登録した。マーチの売れ行きは、新型ノートやヤリスの10%前後だ。

■マーチはなぜ売れない!? すべてが後手に回った不振のワケ

 現行マーチが売れない一番の理由は商品力だ。発売直後から、外観や内装のデザインと質感、乗り心地、安定性、操舵感、エンジンノイズなどが不評だった。

 従って売れ行きも2010年の発売直後から伸び悩んだ。

現行4代目マーチは2010年7月に発売された。10年前の設計では古さを感じてしまう、趣向は違うが走りに特化したNISMOバーションであればまだまだ売れそうだが……

 2011年は東日本大震災が発生したので、2012年の登録台数を見ると、1カ月平均で約3300台だ。当時のトヨタ『パッソ』、マツダ『デミオ』、スズキ『スイフト』、日産『キューブ』などを下まわった。2015年になると1カ月平均の登録台数は約1300台に下がり、2019年は約780台、2020年は約480台と低迷した。

 必要な改良を施さなかったことも、売れ行きを落とした要因だ。特に衝突被害軽減ブレーキは、2012年頃から軽自動車にも採用が開始され、2016年頃には、低価格車を含めて大半の売れ筋車種が装着していた。先代ノートも、2013年には単眼カメラを使った歩行者を検知可能な衝突被害軽減ブレーキを採用している。

 ところが、マーチは衝突被害軽減ブレーキを採用せず、前述のとおり2020年7月のマイナーチェンジでようやく装着した。これでは売れ行きが伸びなくて当然だ。つまりマーチの販売低迷は今に始まった話ではなく、発売直後からその傾向が見られた。加えて衝突被害軽減ブレーキの不備などを放置したことで、毎年売れ行きを下げていった。

 先代ノートは前述のとおり2013年に衝突被害軽減ブレーキを採用して、2014年には1カ月平均で約9000台を登録する人気車になった。2016年にe-POWERを加えると売れ行きをさらに伸ばし、2017年には1カ月平均で約1万1600台、2018年には約1万1400台、2019年には約9900台と好調に売れた。2018年には小型/普通車の登録台数ナンバーワンになっている。マーチとはケタが違う。

 先代ノートがここまで好調に売れたのはe-POWERの効果だが、商品力が低く安全装備の充実しないマーチの顧客を引き寄せた結果でもあった。いい換えれば先代ノートの好調には、マーチの販売不振もプラスの効果を与えていた。

 直列3気筒1.2Lノーマルエンジンを搭載する先代ノートとマーチを並べられたら、大半のユーザーは先代ノートを選んだだろう。同程度の装備を採用したグレード同士で比べると、価格は先代ノートが15万円ほど高かったが、内装の造り、乗り心地、安定性、後席の足元空間などで勝っていたからだ。

 この実力の違いを考えると、新型ノートでノーマルエンジン搭載車を選べないから、ユーザーがマーチを買うことは考えにくい。販売店が指摘したとおり、先代ノートから乗り替えるならデイズやルークスだろう。

 マーチは2020年7月に衝突被害軽減ブレーキを追加したが、デイズやルークスでは、2台先を走る車両も検知して早期にドライバーへ警報を発する。つまり安全装備は今でもデイズやルークスが優れているから、マーチは進化したものの、依然として魅力が乏しい。

現行マーチに採用されたインテリジェント エマージェンシーブレーキ。クルマだけでなく、人との衝突回避もアシストする

 以上のように、もはやデザイン、車内の広さ、乗り心地といった限定的な話ではなく、さまざまな分野でマーチは新旧のノート、デイズ、ルークスに負けている。しかもマーチの粗い造りは、販売店の試乗車で街中を少し走った程度でも、スグにわかってしまう。いわば日常的な欠点だ。ユーザーが難色を示した時、セールスマンがデイズやルークスを推奨すれば、それを選ぶだろう。これらの軽自動車の販売は堅調だ。

■なぜマイクラの日本導入はない!? 海外市場も含めた日産に求められる変化

 ちなみに欧州で売られる日産『マイクラ』は、カッコよくてスポーティなコンパクトカーだ。全幅は1743mmと少し幅広いが、全長は3999mmに収まる。日本に導入しない理由を日産に尋ねると以下のように返答された。

実質的には5代目マーチとなる『マイクラ』。車格や性能からみてノートe-POWERのガソリン車の代替えには十分なり得る

 「魅力的なコンパクトカーだが、エンジンのタイプ(直列3気筒1Lターボ)などを含め、国内市場に合わない点も少なくない。対応させるにはコストが高まる」

 この理由は、『2代目ジューク』を日本で販売せず、『キックス』に変更した時と同じだ。日本で売るなら、開発段階から対応する必要がある。

 また日産のメキシコ法人は、2021年1月末に、3月から販売を開始するマーチのマイナーチェンジを発表した。

メキシコで現地生産されている『マーチ』。こちらは4代目マーチをベースに、ほぼ外観のみをマイナーチェンジしたメキシコ仕様

 Vモーショングリルを採用して、フロントマスクがキックスなどに似ている。ただしボディサイドは従来と同じく円弧を描く丸みのあるデザインだから、ボディ全体の造形バランスはよくない。今後も売り続けるためにフロントマスクを大幅に変える手法は理解できるが、人気を継続的に保つには、内外装の質、安定性、操舵感、乗り心地などを全般的に向上させる必要がある。

 あるいは、業務提携を結ぶルノー『トゥインゴ』のOEM車をマーチとして販売する方法もあるだろう。トゥインゴはすでに日本で売られ、全長が3645mm、全幅は1650mmだから、5ナンバーサイズの枠内に収まってマーチの位置付けにピッタリだ。視界の優れた可愛らしい外観もマーチのイメージに合う。粗さの目立つ現行型を細々と売り続けるより、ユーザーのメリットになりはしないだろうか。

  1992年に発売された2代目マーチは、当時としては上質な小型車で、抜群に優れた視界とバランスの取れた外観の見栄えを両立させていた。見事な工業デザインであった。マーチは多くのユーザーに愛されたクルマだから、優れた商品に生まれ変わって欲しい。

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みんなのコメント

44件
  • 敢えて言うなら「日本で売る気ないだろ!日産」。
    車内は、もちろん、エンジンなど20年前くらい、ガサツ。
  • 日本を見捨てた日産…だろ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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