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「気持ち」で買うクルマ フォルクスワーゲンID.バズ 長期テスト(最終) 今後のEVへ必要な個性と特徴

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「気持ち」で買うクルマ フォルクスワーゲンID.バズ 長期テスト(最終) 今後のEVへ必要な個性と特徴

積算1万2643km 復調の兆しを見せるワンボックス

従来のステーションワゴンと比較して、SUVは環境負荷が大きいかもしれない。走行性能には妥協があるかもしれない。しかし、支持されるのには理由がある。一般的なユーザーが、クルマへ求めるものを満たしているからだ。

【画像】栄光の「バス」が電動で復活! フォルクスワーゲンID.バズ ID.4と最新のID.7も 全133枚

荷室は広く、リアシートにも余裕がある。衝突時の安全性も確保しやすい。しかし、これだけ主流になると個性は薄れがち。新しいSUVへ乗り換えても、ご近所や友人の間で話題になる可能性は高くない。

近年の欧州では下火になっているが、MPVというカテゴリーが流行った時期があった。ルノー・エスパスやフィアット・ムルティプラ、クライスラー・グランドボイジャーといったワンボックスカーが、一般家庭の駐車場に停まっていた時代があった。

機能性や実用性を高めつつ、スタイリッシュさも考えられていた。それでも、子供部屋にポスターとして飾られることはなかったが。

最近、ワンボックスカーは復調の兆しを見せている。高級なレクサスLMは、予想を上回る受注を集めているとか。ボルボのEM90は、公式写真を見る限りカッコいい。アルファ・ロメオも、窓の大きいバンを検討しているという噂がある。

そんな変化の先端にあるのが、フォルクスワーゲンID.バズだ。クルマへ求めるものを満たすうえで、SUVである必要はないことが証明されている。しかも、従来以上に魅力的なワンボックスカーが作れることも示したといえる。

現実的な航続距離は334km 7シーターでも良い

間違いなく四角いフォルムのID.バズだが、走りは乗用車ライク。低速域では驚くほど機敏に身をこなし、安定感が高く、車線の中央を保ちやすい。退屈な通勤が楽しく思えるほど、加速は良い。都市部では気を使うボディサイズだとしても。

これまで、長期テストで6000kmほどを一緒に過ごしてきたが、電費は平均で4.3km/kWh。1度の充電で走れる現実的な距離は、334kmという結果になった。

カタログ値は410km。2割も下回った数字だが、高速道路を気にせず走らせた距離が長かった。まずまずの結果だと思う。

このサイズなら、7シーターを叶えられそうに思う。フォルクスワーゲンは、ロングホイールベース版で計画しているが、そちらを先に発売しても良かったのではないだろうか。キャンピングカー仕様も、発表が控えているそうだ。

内燃エンジンで走るフォルクスワーゲン・マルチバンのように、レールの上をスライドし、向きを変えられるアームチェアが載っていたら望ましかった。人間工学的な不満もある。それでも、個性的なステーションワゴン以上の魅力を備えていた。

象徴的なスタイリングへ強く惹かれている自分は、甘めに受け止めていることは否定できない。実のところ、クルマ好きの間で、自慢できるほどの技術的な強みはないだろう。

有料の急速充電器に接続しても、100kWを超えることはなし。気を使って右足を傾けても、無充電で400kmは走れなかった。デジタルなインターフェイスは、ちょっと使いにくかったことも事実だ。

今後のバッテリーEVへ求められる個性や特徴

それでも、ID.バズのステアリングホイールを1度握れば、笑顔にならずにいられなかった。いくつかの弱点を忘れさせるほど、自分を幸せな気持ちにしてくれた。

フォルクスワーゲンは、愛されるブランドに戻ろうと努めているそうだ。具体的なことは明らかになっていないが、ID.バズは、今のところ同社のバッテリーEVで最もそれを体現できていると思う。

筆者は1972年式のフォルクスワーゲン・ビートル、タイプIを所有していたが、今年になって諸事情で手放した。オレンジ色のビートルを、自分は愛していたのだと実感している。今後のバッテリーEVへ求められる、個性や特徴をしっかり宿していた。

ID.3やID.4は、頭で理解して買うフォルクスワーゲンだろう。だがID.バズは、気持ちで買うフォルクスワーゲンだと思う。とはいえ、市場に存在する多くのモデルとの間で、最終的には悩むことになる可能性は高い。

英国価格はお手頃といえず、この価格帯ならより航続距離の長いバッテリーEVが選べる。急速充電能力が高い例も、3列シートを選べる例もある。

しかしSUVである必要がなく、5シーターで充分で、1度に300km以上走ることが殆どない人にとって、そんな合理性を忘れさせる魅力がID.バズにはある。今回は実現しなかったが、ステレオのボリュームを上げて、いつか真夏の野外フェスを目指してみたい。

セカンドオピニオン

担当者だったペイジは、ヒッピーなイメージに浸っているようだが、スタイリングは好き嫌いがわかれそうだ。自分には、モアイ像の頭に見えてしまう。タッチセンサーやタッチモニターも、正直扱いにくい。

電費も褒められない。多くのバッテリーEVが、6.0km/kWh程度は走れる時代だ。ロードトリップをするとしても、航続距離が短すぎる。英国価格もお高い。代わりにBMW M340d ツーリングを買っても、かなりのお釣りが出るほど。 クリス・カルマー(Kris Culmer)

テストデータ

気に入っているトコロ

友達の輪が広がる:アストン マーティンDBX707などでは、ご近所との交流は生まれにくいだろう。
実用的な車内:フロアはフラットで、荷室は広大。大きく開くスライドドアとテールゲートで、買い物だけでなく、友人の引っ越しにも活躍した。
信じられる航続距離の予測:距離自体は短いものの、バッテリーの残量から正確に航続距離を算出してくれた。移動の計画を立てやすい。

気に入らないトコロ

タッチモニター:インフォテインメント・システムは遅く、グラフィックはベーシック。タッチモニターが嫌いになる人も出そうだ。
運転支援システム:車線維持支援や速度標識読取り機能などは、もう少し磨き込みが必要。運転の気が散ってしまう。

走行距離

テスト開始時積算距離:6298km
テスト終了時積算距離:1万2643km

価格

モデル名:フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)
英国価格:6万2844ポンド(約1219万円)
テスト車の英国価格:6万6394ポンド(約1328万円)

オプション装備

キャンディー・ホワイト+エナジェティック・オレンジ塗装:1800ポンド(約36万円)
インフォテインメント・パッケージプラス:1560ポンド(約31万2000円)
タイプ2充電ケーブル:190ポンド(約3万8000円)

電費&航続距離

カタログ航続距離:410km
駆動用バッテリー容量:77.0kWh(実容量)
平均電費:4.3km/kWh
最高電費:6.1km/kWh
最低電費:3.8km/kWh
実際の航続距離:334km

主要諸元

全長:4712mm
全幅:1985mm
全高:1937mm
最高速度:144km/h
0-100km/h加速:10.2秒
車両重量:2502kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:77.0kWh(実容量)
急速充電能力:170kW(DC)
最高出力:203ps
最大トルク:31.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
トランク容量:1121L
ホイールサイズ:20インチ
タイヤ:235/50 R20(フロント)+265/45 R20(リア)

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:896ポンド(17万9000円/1か月)
CO2 排出量:0g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
エネルギーコスト:467ポンド(9万3000円/電気)
エネルギー含めたランニングコスト:467ポンド(9万3000円/電気)
1マイル当りコスト:0.12ポンド(24円)

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みんなのコメント

1件
  • kus********
    新しいSUVへ乗り換えても、ご近所や友人の間で話題になる可能性は高くない。←こんなことで車を選ぶのか。哀れ。
    それにしても電費が悪いね。 電費では日産にアドバンテージがあるみたい。
    日本車に勝機があるとするなら、バッテリーの安全性と電費かも知れない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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