かつてクルマ好きの間で注目を集めた「中谷シフト」。これは、レーシングドライバーだった中谷明彦選手が、大人気ビデオコンテンツの「ベストモータリング」で見せつけた、ウルトラ超速ギアチェンジのことだ。2025年を迎えたイマ、中谷シフト誕生の背景と見どころを本人が語り尽くす!!
文:中谷明彦/写真:富士スピードウェイ、ベストカーWeb編集部
伝説のドラテク誕生の裏話!! 爆速シフトチェンジMTと現代ATはどっちが速いのか!?
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■クルマ好きが憧れた伝説のドラテク
高速シフトチェンジの光景に視聴者の目がしらも熱くなった
中谷シフトを知っていますか? 1990年代、ベスト・モータリングビデオによるインカー映像で、足元のペダルとシフト操作を写した動画がカーマニアの間に物議を醸した。アクセル全開で戻さないままクラッチを蹴るように踏み、電光石火の如き素早い操作でシフトレーバーの変速操作を行う。
当時ビデオ映像を編集していたスタッフの間で話題となり、実行者である僕の名前から「中谷シフト」と呼ばれた。あまりに操作が早いので「マシンガンシフト」とも呼ばれていた。それは巷でも話題となり、真似をしたらミッションを壊した、という意見も散見された。
中谷シフトはなぜ生まれ、実現が可能となったのか。ベスト・モータリングビデオは当時バトル形式の企画が大ヒット。競合するライバル車種をプロドライバーのキャスターが運転しサーキットで雌雄を決する。
その模様を前車にオンボードカメラを複数代搭載し、誤魔化用のない速さの証明として世界中にバトルファンを産み支持された。
そのバトルで勝つために、コンマ1秒でも速く走るために「中谷シフト」を実践したのだが、実はその操作を編み出したのはバトル中ではなかった。実は1988年に全日本F3覇者となり、1989年に全日本F3000選手権にステップアップした。
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■中谷シフト誕生のバッググラウンド
F3000のマシンをドライブする中谷選手
そこは完全なるプロフェッショナルの世界で、常にコンマ1秒以下のタイムが追求される。当時、富士スピードウェイの直線は約1.5kmあり、最終コーナーも時速200km以上の高速コーナーで駆け抜けるため、空気抵抗との戦いでもあった。
最終コーナーを4速全開で駆け抜け、車速が250km/hに達したあたりで4速が9000回転のリミットに達し5速へとシフトアップする。この時、初めは普通にアクセルを瞬間的に戻し、素早くクラッチを切ってシフト操作をして全開に戻す。コンマ2秒以下の操作時間だったが、その僅かな時間にも大きな空気抵抗が車体に加わっていて車速を鈍らせている。
空気抵抗は速度の二乗に比例して高まるので、高速域でも抵抗は無視できない。ほんの少しでもアクセルを戻し駆動力が下がってしまえば、車速の伸びを低下させることになる。
そこで少しでもアクセルを戻す時間を減らし、クラッチを蹴るような形でシフトしたらどうか。それを詰めていくうちにアクセルを戻さなくてもクラッチを瞬間的に切るだけでシフト操作できることに気がついた。
そもそもF3000マシンの無限製3L V8エンジンは、規則でレブリミットが9000回転と定められ、それ以上回らないようにレブリミッターが装着されていた。だから4速9000回転でシフトすればアクセルを戻さなくても過回転せず、駆動力が電気的に一瞬切れるだけで5速へ変速できたのだ。これを試すとデータロガー上で1~2km/hながら、車速の伸びが確認できたのだ。
それが使えると確信してからは他のサーキット、他のギア位置でも中谷シフトを多用する。ラップタイムで0.01秒でも早くなれば、特に予選アタックではメリットがある。
エンジンのデータロガー解析を担当していた無限のエンジニアに話すと、実は彼らはすでに認知していたという。
僕より先に日本一速い男と異名を取る星野一義選手がすでに実践していて、無限のエンジニアはそれを「ホシノシフト」と呼んでいたのだそうだ。「星野さんと中谷さんのデータロガーが完全一致で重なっていて笑った」と言われたのは褒め言葉だったのだろう。
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■中谷シフトだからこそ味わえる楽しみって?
中谷シフトが試せる市販車初のミッションとなったランサー・エボリューションV
ベスト・モータリングでは市販車がベースであり、中谷シフトが有効かデータで見ることはできない。しかし、バトルの結果で見ればマイナスに働くことはなかった。メインステージだった筑波サーキットの加速区間各所で、確実にライバルに勝る加速を引き出せていた。
ただ、市販車ならではの弱点もあった。F3000などのレーシングカーのトランスミッションはドグクラッチを使用しており、ギア比もクロス化されていて素早いシフトに耐えられる。しかし市販車はシンクロギアを備え、ギア比もワイドで、素早い操作に対して耐久性に問題があった。
サーキット走行では油温も上がり、潤滑不足も起こる。すべての市販車で中谷シフトが可能なわけではなかった。
ダブルやトリプルのシンクロコーンやクロスレシオが、ランサー・エボリューションVに設定され、中谷シフトを許容する市販車初のミッションとなった。それがオンボード画像で拡散され話題となったのである。
しかし、時代が進とエンジンの高出力化に伴いエンジンの制御がより細分化された。現代ではほとんどのエンジンが直噴化され、より燃焼制御が緻密に行われる。
スロットル信号やギアポジション、エンジンノックセンサーなど幾重にもセンシングされるので中谷シフトを行うと出力制御が介入してパワーを絞られてしまう。
今はデュアルクラッチや自動変速などコンマ1秒で自動変速するトランスミッションが登場しており、中谷シフトより早く変速できるようになったが、シフトフィーリングからトランスミッションの異常や油温の上昇などコンディション変化をドライバーが自ら感じられなくなっているのは、ドライバー自身のセンシングスキルを引き出せない。
いくら速くてもセンサー任せのドライビングでは面白みも醍醐味もないと感じるのは、中谷シフトに憧れた世代には共通しているのではないだろうか。
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みんなのコメント
普及型のオンボロATも同じく凄く速く走れるに違いないんだーい!と思っちゃうAT限定クンw
フェイクプレス記事出来るよな