2020年11月19日にマツダ3が改良を受けた。マツダは日本メーカーの中では、年次改良を施して、クルマを進化させることに執心している。
年次改良と言えば安全装備の最新バージョンへのアップデート、燃費の向上などが常套手段だが、マツダ3はクリーンディーゼルとデリバリー開始後1年も経過していないスカイアクティブXのパワーアップとかなり大掛かりな変更だ。
電動化時代まであと9年 今安くて楽しいHVを買うならどのクルマ?
改良されるのはユーザーにとってありがたいことなのだが、既存のユーザーにとっては心穏やかでない面もあるハズだ。
マツダ3の早期変更に対する是非について、渡辺陽一郎氏が考察する。
文/渡辺陽一郎、写真/MAZDA、奥隅圭之、平野陽、ベストカー編集部
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納車開始から1年足らずでスカイアクティブXがスペックアップ
2020年11月19日に一部改良されたマツダ3。スカイアクティブXエンジンのソフトウェア改善がメインであり、内外装のデザインに変更はない
「早くもパワーアップを伴う大幅改良!?」と驚かされたのがマツダ3だ。
現行マツダ3の発売は2019年5月だが、この時に用意されたのは、1.5Lガソリンエンジンと1.8Lクリーンディーゼルターボのみであった。
2Lガソリンは発売時期が遅く、SPCCI(火花点火制御圧縮着火方式)を採用するスカイアクティブXは、納車を伴う発売が2019年12月5日まで遅延した。
発売時期が年末だったので、スカイアクティブXの納車が本格化したのは2020年に入ってからだ。
それなのにマツダ3は、2020年11月19日に改良を実施して、さまざまなエンジンやメカニズムを進化させた。
SPCCI(火花点火制御圧縮着火方式)の制御を最適化し、最高出力を従来型の180ps/22.8kgmから190ps/24.4kgmにアップさせた
特に注目されるのはスカイアクティブXだろう。SPCCIの制御を最適化して、幅広い回転域でトルクと出力を向上させた。最高出力は従来の180馬力から190馬力に、最大トルクは22.8kgmから24.4kgmに高められている。
サスペンションにも変更を加えて、前輪側はスプリング、ショックアブソーバー、バンプストッパー(足回りが縮んだ時に作用する緩衝装置)を改善した。
後輪側もショックアブソーバーの特性を変えて、走行安定性と乗り心地のバランスを向上させている。
マツダのやり方にユーザーが慣れてきた!?
マツダは、ECUの変更によって、従来モデルを購入したユーザーにも無償アップデートを提供すると表明
スカイアクティブXの納車が本格化したのは、前述のとおり2020年に入ってからなので、同じ年の11月にエンジンからサスペンションまで幅広く改良されると、すでに購入したユーザーの心境は複雑だろう。
「変更のタイミングが早すぎる」と感じることもあるのではないか。
マツダではSPCCI関連のソフトウェア変更について、すでに使われている車両のアップデートも検討しているようだが、サスペンションは無理だ。スカイアクティブXは、どの車両についても、走り関しては購入から1年以内に「旧型」になった。
スカイアクティブXは、発売から約1年で性能を高めたが、顧客の反応はどうか。また既に使われている車両のアップデートなど、いつ頃から開始するのか。
「スカイアクティブXは、ほとんど売れていないので、早々と改良しても不満の声はあまり聞かれません。ディーゼルやガソリンのお客様は、改良時期が早いね、といわれます。それでも今のマツダは頻繁に手を加えるので、このやり方に慣れてきたお客様も多いです。仕方ないね、という感じです」
ユーザーのニーズとマツダの販売戦略の乖離
2020年3月、2Lガソリンモデルに4WDが追加された
2019年5月に販売を開始して以降、ちょこちょこと改良が加えられてきたマツダ3
2019年5月に発売されたディーゼルも、実用回転域の駆動力を向上させて、最高出力を従来の116馬力から130馬力に引き上げた。
このほか運転支援機能のステアリングアシストも変更を受け、従来の上限速度は時速55kmだったが、改良後は高速域まで引き上げた。2020年11月の改良は多岐にわたる。
マツダ3は以前から、時間をあけながらグレードを追加してきた。
2019年5月に1.5Lガソリンエンジンとクリーンディーゼルターボを発売した後、同年後半には2Lガソリン、12月には前述のスカイアクティブX、2020年3月には2Lガソリンの4WD、同年5月にはセダンにも1.5Lガソリンを追加した。
マツダ3の1.5Lガソリンエンジンでは、充実した安全装備を比較的求めやすい価格で得られる。
そこで発売当初から注目され、セダンの1.5Lエンジンを求めるユーザーも少なくなかった。
それなのにセダンに1.5Lがない理由を開発者に尋ねると、「従来型のアクセラでは、65~70%をハッチバックが占めていた。そのために現行型の1.5Lエンジンも、ハッチバック(ファストバック)のみに搭載している」と説明された。
1.5Lのセダンが欲しいのに、ハッチバックを購入したユーザーもいたわけだ。
それが発売から約1年でセダンにも1.5Lガソリンが追加されると、「もっと早く教えてくれればいいのに」、「マツダのクルマはいつ買えばいいのかわからない」という話にもなるだろう。
マツダは改良時期を固定すべき
2020年11月の改良でe-スカイアクティブXと名称が変更された(写真上)。フェンダーには専用エンブレムが装着される(写真下)
このように今のマツダ車では、頻繁に改良を実施したり、なおかつ受注しながら燃費などのデータが未定になっていることも多い。購入時に疑問を感じるメーカーとなった。
今のマツダでは、ひとつの車種が新しいメカニズムや制御を採用すると、時間をあけず他車にも適用する。従ってCX-30のスカイアクティブXやディーゼルなども、近々同様の改良を実施するだろう。
このような開発姿勢は、エンジン、プラットフォーム、運転感覚などを大半の車種にわたって共通化した今のマツダの強みだ。
頻繁に改良を実施して、常に最良のマツダ車であり続ける。エンジンやプラットフォームの種類を限定した代わりに、密度の濃い開発を行えるわけだ。
多種多様の商品を揃えるトヨタとは違う、マツダならではの生き方でもあるだろう。常に最良のマツダ車を買えるのだから、ユーザーのメリットも大きい。
その努力(開発者は頻繁な改良を行うには大変な労力を要すると述べている)と、商品力を常に高く保てる効果を考えると、ユーザーから「いつ買えばいいのかわからない」と受け取られるのは残念な話だ。
ユーザーにとって最もわかりやすい方法は、マツダ車の改良をスケジュール化することだ。
マツダ3は3月、マツダ6は6月、マツダ2は12月…、という具合に時期を定める。その時期には、メカニズムの改良からボディカラーの追加まで内容はいろいろだが、何らかの手を加える。
そうなれば購入時に迷ったり、購入後に不愉快になることも避けられるだろう。
ちなみに昔の日本車は、4年ごとにフルモデルチェンジを行い、その間にマイナーチェンジを挟んでいた。この時代にも改良を頻繁に行ったが、スケジュールを決めていたから文句は出なかった。
MX-30の投入でマツダに変化が!!
2020年10月8日に発表、発売されたMX-30
MX-30の発売に際しては、最近のマツダでパターン化していた予約受注開始の大幅な前倒しを行わなかった。発表と発売は2020年10月8日で、受注開始は若干早めたが9月下旬だ。
今までのように注文してから納車まで長々と待たされる不満は解消され、10月11日の日曜日には、販売店で試乗も行えた。良心的な売り方であった。
MX-30はエンジンやグレードが少ないから可能だった事情もあるが、一時期はメーカー優先になっていたマツダの売り方が、顧客を重視する姿勢に変わりつつある。今後はモデルチェンジの時期も、わかりやすくしてほしい。
これからのマツダは、MX-30の築いた新しいデザイン路線に沿って、再び背の高いコンパクトカーなども手掛ける。
MX-30の開発者は、「今までマツダ車に関心を寄せなかったお客様を、MX-30で振り向かせたい」という。そのためには受注方法から改良を実施する時期まで、すべてを顧客重視で行う必要がある。
2012年に魂動デザインとスカイアクティブ技術で生まれ変わったマツダは、再び新たな発展の時期を迎えている。商品と併せて、売り方も共感を得られるものになってほしい。
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みんなのコメント
会社のビジョンが理解できない
マツダの車やめてトヨタの車に買え買えました。