この度は西日本を中心に、甚大なる水害被害を受けた皆様にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興お祈り申し上げます。
今回は自然災害とクルマについてお話ししようかと思います。実はかくいう筆者自身も、1991年と2000年の東海集中豪雨に被災し10年で二度も自宅が浸水するという経験をしています。
日本だけでなくドイツでも。1輪だけタイヤを浮かせたトラックの謎とは?
1991年の時は自宅の床上30cmほどが水につかり、当時買って半年ほどしか経っていない母のオートザムキャロルが廃車になってしまいました。水が引くと町のあちこちに水没したクルマが放置され、近所の自動車販売店は商品車が全滅という有り様でした。当時はまだ下水化されておらず、水洗トイレも浄化槽式でした。周囲は水田も多く水は昼間のうちに引いたのですがしばらくは汚水の臭いが残り、その後数年間は真夏になるとムワっとした汚水の臭いに悩まされたものでした。幸い、インフラに関しては電話と電気ガスと水道(水質の安全が確認できるまで飲用はしないでほしいという通達あり)すべて止まることが無く、父の通勤先が無事だったためもう一台の自家用車である父のスカイラインも事なきを得ました。
二度目の豪雨は…
ところが、2000年の豪雨では夕方からバケツをひっくり返したような雨が降り続け、当時の筆者の職場前の駐車場はまるで川のようになっていました。急いで帰宅しようにも愛車のスバル360のプラグがカブってしまい、結局エンジンが始動できず自分のクルマで帰宅するのは断念。同じ方角へ向かう方のクルマに乗せてもらい自宅の近くでおろしてもらったのですが、すでに自宅近くの道路は腰まで浸かるくらいまで冠水しているのに愕然としていたら、自分の後ろからやってきたタクシーが冠水に気づかず、そのまま水没してしまったのを今でも記憶しています。
腰までつかりながら自宅まで歩いていくと、すでに水は玄関の土間のあたりまで来ていました。母の話では10年前の経験で近所の人は皆、道路が冠水し始めた時点で自家用車を高台に避難させ、平屋の人は即避難したとのことでした。(ちなみに当時、避難勧告が出たころには完全に自宅周辺が水没、停電し、消防の広報車も近づけないという有り様でした)夜半になっても雨脚は弱まらず、できる事は夕食もそっちのけでとにかく移動できるものは2階に移動するのがやっと。とにかく家財道具は机の上に載せておけばしのげるだろうと思っていたのですが、浸水が止むことはなく結局1階は腰上くらいまで浸かり、録りためたビデオや自動車雑誌を始めとする趣味の雑誌のバックナンバー、クラシックカーイベントの写真等の大半を失うハメになりました。
浸水は結局丸一晩続き、電気、電話、水道、ガスすべてダウンしました。幸い筆者の自宅周辺は堤防が冠水に負けて外側から川側へ切れたため、翌日の午後には水が引いたのですが、自宅から5kmほど離れた町の枇杷島のあたりは数日間冠水したままでした。とりあえず通話可能な公衆電話から遠方の友人に無事を報告し、当時自分が運営していた個人HPの掲示板に無事であること代わりに書いてもらったりした記憶があります。職場に置いてきたスバル360は幸い駐車場周辺の標高が高かったため無事でしたが、むしろヘタにカブることなくエンジンがかかってそのまま乗って帰ろうとしたら途中で水没していたかもしれません。
クルマで移動中に水害に遭ってしまったときは?
実も蓋も無い話ですが「冠水路には近づかない事」です。少なくとも走りなれた場所であれば、下り坂の先や、水たまりのできやすい場所は要注意、ましてや河川敷の道路や高架のアンダーパスは厳禁です。極力標高の高い場所の道に迂回するようにしましょう。やむを得ず冠水路を走行するときは、エンジンの電装系やエアインテークに水がかからないように水しぶきを上げないでゆっくり侵入し、マフラーパイプに水が侵入し排ガスが逆流してエンストしないよう、低速ギアでエンジン回転数を上げ排圧を高めに保つといいと言います。
もし、エンストしてもう駄目だと思ったら、水圧でドアが開かなくならないうちに脱出するか、電装系が生きているうちにパワーウィンドーを開けて脱出してください、もしドアもあかない、パワーウィンドーも動かないという時は脱出用ハンマーでガラスを割って脱出します。最近ではハンマーが無くてもヘッドレストの足の部分をドアとガラスの間に差し込んでコジればガラスを割ることができるという方法が紹介されていました。
ドアも開かない、窓ガラスを開ける割る事も出来ないまま水没してしまった場合はどうするか。それでもまだ脱出できる可能性は残されています。車内に残っている空気でなんとか息を続けながら、車内が完全に水で満たされるのを待ちます。車内も水で満たされれば、ドアの内側からも水圧がかかり車外からの水圧は相殺され、人の力でもドアを開ける事ができるようになります。ほんのわずかでも助かる可能性を諦めてはいけません。また水没車から脱出した際は、元来た道を戻るのが安全な可能性が高いそうです。
また、水没車は燃焼室やオイルパンに水が入っているため、エンジントラブルを起こすばかりか、電気系統が水没しているため漏電やショートによる感電や火災を起こす可能性もあるので、不用意に動かしたりしてはいけません。バッテリーはマイナス端子を外しておき、電気自動車やハイブリッドカーはメーカーに相談してむやみに触らないと報じられたのを目にした方も多い事でしょう。でも、なぜクルマで避難しようとする人がいるのでしょうか?
翌日は物資不足と大渋滞
東日本大震災の後、ガソリンスタンドやスーパーマーケットに徹夜で行列して大渋滞を起こしたことがニュースになったことをご記憶の方もおられるのではないでしょうか。筆者の時は東日本ほどの規模ではありませんが、電気も止まって冷蔵庫が丸ごと水没して転倒してしまっていたため、2階に持ち運べた軽食やインスタント食品を除いて貯蔵していた食品はすべて廃棄、当然他の住人も同じ状態、徒歩圏内のスーパーもコンビニも全滅してしまい、一斉に隣町のコンビニやスーパーへ日用品や食料の買い出しに行くわけですから、自宅前の道まで渋滞が続き、自宅から数百m進むのに1時間以上かかったくらいでした。
そしてやっとの思いで営業しているコンビニやスーパーにたどり着いても、本当に棚から商品がごっそりなくなって入荷未定の張り紙というのもザラ、まるで子供の頃TVのニュース等で見た冷戦末期に物資不足に悩んでいたソ連のスーパーのような光景でした。幸い、筆者の時は半径1~2kmのエリアが、スポット的に水没するという感じだったので、市の中心部に向かって3~4km離れた場所はまったく被害を受けておらず、そこまでくるとコンビニやスーパーも混雑することなく普通に営業を続けていて、コンビニにお茶一本を買いに行くのにクルマで4~5km移動という生活をしばらく続けていました。もし自家用車がなければ食事の買い出しすらままならず、支給されるパンとペットボトル飲料だけでしのぐという不自由な生活を強いられたことでしょう。
よくクルマで避難してはいけないとか、緊急車両の通行を考えて被災後のクルマでの移動は控えるようにと言いますが、実際のところ被災者にとって「クルマこそが数少ないライフラインでありインフラ」となるため、命がけのリスクを背負ってでも自家用車も安全な場所に避難させる、徒歩圏内の商業施設が全滅になってしまった以上、買い物は自家用車を使わざるを得ない、という事情もあるのです。
簡易シェルターとしても機能する自家用車
また、空調やラジオがあり最近ではワンセグ・フルセグチューナーまでついていて、インバーターで100V電源を取り出すこともできるクルマはシェルターと自家発電装置として機能するとも言います。
熊本震災では何度も余震が続き、いつ本震が襲ってくるのかわからない中、建物内での避難に恐怖を感じた被災者が自家用車の中で寝泊まりしたというのも記憶に新しいのではないでしょうか。以前、キャンピングカーフェアを取材した際、あるキャンピングカー業者の方に「一体どんな方がキャンピングカーを買っていくのか?」と聞いたところ、「別にオートキャンプやアウトドアの趣味があるわけではないが、ニュースで大規模災害を見て、知人や親類で被災した人の話を聞いて、車内で就寝出来て、簡易キッチンや電源設備のあるワンボックス・ミニバンベース(いわゆる「バンコン型」)のキャンパーを避難生活に備えて購入していくお客さんが増えている」と聞いた事があります。
中古車市場が上がり、保険料が上がるかもしれない
当然、被災したクルマを代替えしなければいけないので、おそらくこの夏から秋にかけて中古車が品不足を起こすことが予想されます。中古車の市場もそれに合わせて高騰気味になるのではないでしょうか?
また、自動車の生産工場や部品工場も被災しているため、新車も思うように供給できない可能性もあります。また、筆者の行きつけの整備工場では、修理用の部品が災害で入ってこなくなったため、自動車整備の仕事もままならないとこぼしていました。クルマに限らず被災者は当然損害保険を利用するでしょうから、保険料率の改定で保険料が上がる、審査が厳しくなることも予想されます。
今後SUVが注目される?
つい最近、スズキジムニーが20年ぶりのフルモデルチェンジで話題となりましたが、頑なにラダーフレーム構造のリジットアクスルサスペンションを踏襲し、トランスファーレバーを復活させるなど、基本設計は旧態依然としているにもかかわらず、販売は好調どころか納車は1年待ちと聞きます。もちろん旧来からの熱心なオフロードマニアや、農林関係者など軍用車みたいなクロカン四駆の代替えが無い以上ジムニー以外に選択肢が無いというユーザーが多いとは思いますが、こうも毎年大規模な災害が続くと、いざという時の脱出能力と走破性の高さからセダンタイプやトールワゴンタイプの軽自動車からジムニーへの代替えを考えているユーザーも相当数いるのではないでしょうか?
ジムニーとまではいかなくても、オフロード走行は想定していないクロスオーバータイプのトールワゴンベースのSUV、最低地上高が高い4WDというだけでも、セダンやミニバンよりは走破能力が高く、車種によってはシートをフルフラットにできるという点でも、ますます市場ではSUVのニーズが高まると思われます。
日本に住んでいる以上自然災害から逃れることは出来ない
筆者の自宅周辺は2000年の東海集中豪雨以降「10年で2度の水害に遭った」とあって10年スパンで治水工事が進み、近所の河川も改修され(ちなみに筆者の自宅は堤防の真下にあります)近所の公園は10年以上かけて地下に貯水タンクを埋設するなどで、以前のままなら間違いなく河川が氾濫したであろう雨量でも水害に遭うことはなくなりました。しかし、今でも夜にあの異様な雨音を聞くと体がこわ張ります。また、暴風雨警報がでると高台に自家用車を移動させる人を目にします。こういった災害が発生するたびにさまざまな議論が起こるのですが、困った事に当事者か同じことを経験した人でないとあの恐怖と苦労と不便さを理解することは難しいようです。
しかし、火山列島で国土の7割が山林で、流れの急な河川も多く海に囲まれた日本に住んでいる以上、自然災害から逃れることは出来ないのが我々日本人の現実です。慢心せず明日は我が身であることを肝に銘じ、万が一の時に備えておくしかないのです。
[ライター/鈴木修一郎 画像/写真AC]
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