ヤマハ発動機は、水上オートバイの「WaveRunner(ウェーブランナー)」シリーズの2025年モデルに、ヤマハ株式会社のオーディオシステムを搭載した。開発のきっかけは、エンジニアの素朴な疑問から生まれたものだったという。
このシステムは、水上を走行中に操縦者に迫力あるサウンド体験を提供する。開発を主導したのは、ヤマハ発動機の電装エンジニア・鈴木正吉氏。水上オートバイと音楽の親和性について尋ねると、「皆さんがドライブを楽しむ時の感覚と同じだと思います。気持ちよく走らせている時は、やはりアップテンポの音楽が欲しくなりますよね?」と話す。“ふたつのYAMAHA”による共同開発のはじまりも、「なぜヤマハ発動機の製品にヤマハ製のスピーカーが搭載されていないのか?」という鈴木氏自身の素朴な疑問から始まった。
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ヤマハ株式会社は三菱自動車などの車載用オーディオでも実績があり、国内外の自動車メーカーにサウンドシステムを供給している。一方で、自動車と水上オートバイでは使用環境がまったく異なる。「そもそも水に沈めてもいいスピーカーなんて世の中にほぼ存在しません(笑)」と鈴木氏。その開発はトライ&エラーの繰り返しだった。
開発チームが目指したのは、「もっと走り続けたい」という気持ちにさせる、真夏の野外音楽フェスティバルで味わうような高揚感だったという。アメリカを中心に行った開発テストのフィードバックを受けながら、ヤマハ株式会社のサウンドマイスターによってチューニングが進められた。その結果、「低音はしっかりと芯のある音としつつ、中高域では音に包まれて操縦しているような感覚や、ボーカルが目の前に定位しているような臨場感のある演出も加えられています」と鈴木氏は手応えを語る。
オープンエアで、かつ波や風の大きな影響を受ける製品ならではの課題もあった。高い次元で求められる耐水性、波やエンジンの回転が与える大小の振動からシステムを守る耐衝撃性などだ。これらを鍛え上げるため、試作~実験~対策といったプロセスが幾度となく繰り返された。
メイン市場であるアメリカのディーラーからはすでにポジティブな反響が寄せられているという。「もちろん走りながら聴くサウンドも心躍るのですが、時には止まって、青空を見上げながら聴く音楽も格別です。私もそうやってテストの合間に心を落ち着けたり、頭の整理をしたりしました」と鈴木氏は話す。
ヤマハの新型ウェーブランナーは、音楽体験を新たな次元へと引き上げるものとなりそうだ。
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